孤高の魔王。俺はガッチャード!
ガッチャード✕レジェンド✕ウマ娘 中編前回までの仮面ライダーガッチャード!
一ノ瀬宝太郎の幼馴染・ヒシミラクルと黒鋼スパナの担当・シンボリクリスエスは、知らぬ間に異世界に来てしまっていた!そこに現れたのは、元の世界とは違うタニノギムレット。彼女の言う試練を通し、二人は絆を深める。その後突如発生したオーロラカーテンにより彼女達は前述の二人と合流、そして金色の仮面ライダーとの邂逅を果たしたのだった!
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肘掛けに肘をつき優雅にこちらを見る金色の仮面ライダー。緊張状態の沈黙を破ったのは一ノ瀬宝太郎だった。
「そもそもアンタ、何者だ!」
「それは私からご説明させていただきましょう」
「誰?!……か知ってる気が?」
「加治木じゃん!何でこんなところに?!」
突如自分たちの背後から現れた、宝太郎たちの同級生に似た執事は自分をバトラーと名乗った。
続けて、仕える主に手を示し恭しく言う。
「あのお姿の名称は『仮面ライダーレジェンド』。すべての仮面ライダーの頂点に立つ、名前に違わぬレジェンドの象徴。そしてその変身者は我が主、鳳桜・カグヤ・クォーツ様にございます!」
「「ほうおう……」」
「「カグヤ……」」
「クォーツ。我ながら素晴らしい名前だと思っているよ」
レジェンドの姿が灰色になり、重なっていたものが離れるように霧散する。青く輝く服に金髪が映える青年が中から現れた。
「改めてようこそ、俺の世界へ。歓迎するよ」
「歓迎はいらない。早く俺達をここから出せ」
「そうだそうだ!」
「彼女達、つまり『ヒロイン』が来るまでの時間稼ぎ用だからね、その檻は。すぐ解放してあげよう」
檻と呼ばれた箱が開くやいなや、黒鋼スパナはシンボリクリスエスからヴァルバラッシャーを取り上げ、カグヤのいる方向へ突き進む。
「斬られたくなければすぐ俺達を元の場所に戻せ」
「斬る?」
忠告を聞かないカグヤに目掛けヴァルバラッシャーが振り下ろされる。しかしそれがカグヤの体に届くことはなかった。
カグヤが手で掲げたドライバーから飛び出た数本の金色棒がその軌道を阻害したからであった。
すかさず体勢を整えもう一度剣を振ろうとするスパナをクリスエスが止めた。
「───Avantgerde。乱暴が過ぎないか?」
「君には関係ない」
「俺を倒すことも元の世界に帰ることと関係ないよ。"あること"をしてくれれば、こっちも君達をすぐに帰らせたい」
「"あること"……ってなんです?」
当然の疑問を投げかけるヒシミラクル。今は情報を得るべきか、とスパナはファイティングポーズを解いた。やっとか、とでも言うようなリアクションを取った後、カグヤは口を開く。
「これから君達には『ゴージャス』を見つけてもらう!」
「ご、ごーじゃす……?」
そもそも英単語としての意味をわかっていないのか、首を傾げる宝太郎。
「えーと、言葉じゃ表現しづらいんだけど……私達はすでに見つけて、ましたよね?ギムレットさん」
「あぁ。だから今度は『ヒーロー』達の番だ」
「『ゴージャス』を言葉で表現、だなんて無粋さ。オリジン、美学、執念!何もかもが『ゴージャス』たりうる!」
「なんでもいいって言うなら……俺の場合は『ガッチャ』だ!」
「美学なら持っている」
「薄ッぺらァい!」
カグヤの一喝が屋敷を揺らす!
「取ってつけたような言葉は求めていない。俺が知りたいのは君達の本質に近いものさ!」
咳払いをし、バトラーから喉を潤すドリンクをもらい、調子を整え言う。
「これから君達は別の世界の仮面ライダーと戦ってもらう」
「俺達の他にも仮面ライダーがいるの?!」
「一緒くたにするな。ヴァルバラドはガッチャードと違って俺が作り上げたスーツだからな」
「そうなの?!」
「話を戻そう。そのライダーとの戦いの中で君達自身の『ゴージャス』を見つける、これが元の世界へ帰るための条件だ」
突如として、カグヤと4人を分け隔てるようにオーロラカーテンが現れる。
「説明はした。さぁ、行ってらっしゃい」
オーロラに包まれた4人はどこかへと消えたのだった。
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「……あれ、ここ、どこ……?」
ヒシミラクルが伏せていた目を周りに向けると、そこは辺りを包む暗闇と転々と光る窓があるだけであった。窓の外にはどこかのお店の内装が映っている。
「あそこにいるの……宝太郎?!おーい!」
「無駄だ。ここからじゃ、あっちに声は聞こえない」
振り向くとそこに一人のウマ娘が立っていた。柄の入ったシャツに長ズボンを履いた彼女は言う。
「ここはあくまで観客席だ。私達にできんのは、会話と観戦だけ」
「はぁ……」
「お前はヒシミラクル、だったな?」
「そうですけど、あなたは?」
「常磐シリュウ。今はその名で通してる」
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気付けば、やたらと時計が多く置かれた空間の中にいた宝太郎。静寂の中、時計が時を刻む音だけが聞こえる。
「あの~。誰かいませんか〜?」
「いらっしゃい」
「わっ?!」
沈黙を耐えられなくなりつい出してしまった声に反応されびっくりする。声の主は部屋と部屋をつなぐ出入り口に立っていたが、ブラインドで顔が見えなかった。
「君が、仮面ライダーガッチャード?」
「そういうあなたは……別世界の仮面ライダー?!」
「そういうことになるね。俺は、最高最善の王」
そう名乗った彼は右手に持つ時計型のなにかのボタンを押す。
『オーマジオウ』
瞬間、彼が腰に巻いていた白いベルトが金色へ変わる。驚いたのもつかの間、周囲は黒い布に包まれ、気付けば二人はどこか知らない広場にいた。
『祝福の刻!最高!最善!最大!最強王!』
王への賛美歌と共に禍々しい衝撃波が宝太郎を襲う。生身で受ければまずい、そう判断した直感が手を動かしていた。
『ホッパー1!スチームライナー!ガッチャーンコ!』
『スチームホッパー!』
強化された肉体であるライダケミドールでなんとか耐えようとするも、抑えきれず尻餅をつく。
チカチカする脳裏の元、なんとか捉えた視線の先には、黒と金の悪趣味な魔王が立っていた。
『オーマジオウ!』
「これが……同じ仮面ライダーの力?」
「さぁ、まずは……余裕をなくしていこうか」
空中に一つの時計が生み出され、それをオーマジオウが握り、上部に付いたボタンを押す。
『サイクロンジョーカーエクストリーム!』
途端に宝太郎に強烈な向かい風が吹き始めた。いくら足に力を込めても、ズリズリと後ろに下がってしまう。
「だったら……おっきくて……重い姿になればいい!」
ホルダーから2枚のカードを取り出しガッチャードライバーにセットする。
『スパイクル!ジャンボエール!ガッチャーンコ!』
『スパイクルホエール!』
風の猛攻をなんとか凌いだ宝太郎。しかしすでにオーマジオウは新たな一手を打とうとしていた。
『オーズプトティラコンボ!』
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「アレ、ナニモノなんですか?!」
「仮面ライダーオーマジオウ。世界しか救えなかった哀れな魔王だ」
黒と白の空間の中、シリュウが語る。
「『王になる』という夢を持った常磐ソウゴは、高校3年の夏に奇妙な力と使命を託された。使命ってのは、過去の仮面ライダーの歴史を受け継ぐ、というもの。それは、力の継承であり、黒幕が企んだ『平成の一掃』の片棒を担ぐ行為だった」
「何で急に平成が出てくるんです?」
「曰く、『平成ライダーは凸凹だらけの道』であり『舗装対象』なんだと。すべてのライダーの力を継承したその日、平成に生まれたもの全てがゲートに吸い込まれた。平成があった痕跡の消滅を阻止するため、ソウゴはオーマジオウになる道を選んだ。だがその後に残ったのは……中途半端に生き残っただけの世界だった」
暗闇の一部から風景が浮かび上がる。荒廃した土地で、多くの人間がオーマジオウに立ち向かっている。放たれた銃弾が届く前に消える。巨大なロボが音を立て朽ちていく。人が、老若男女問わず倒れていく。
「黒幕のいた組織が、全ての元凶をオーマジオウとし、人類の生き残りに発破をかけた」
やれやれ、とでも言うように、暗くなっていく景色の中でシリュウはため息を付く。
「世界を救った魔王は、世界から拒絶されたのさ」
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『ドライブタイプトライドロン!』『マッドパイレーツ!』
『ゴーストムゲン魂!』『バクオンテレヴィ!』
『エグゼイドムテキゲーマー!』『ドクターヘビー!』
『ビルドジーニアス!』『エナジーマル!』
一つの脅威を乗り越えたと思えば、休む暇なく新たな脅威が襲ってくる。常に最善の策を取るためフルに回転させた頭に、限界が近づいていた。
体にあったエネルギーが抜けるように、両膝をつくガッチャード。それを見たオーマジオウは顎に指をかけこんな事を言った。
「キミの夢、聞いていい?」
「……夢?」
「有名になりたい、とか、1位を取りたい、とか。何でもいいよ」
夢は……何だったっけか。疲労で埋め尽くされた頭の中でそれを考えるのは不可能に近かった。なんとか酸素を取り込んでいると、声がかかった。
「俺は、王様になりたかった。どんな人間も平等に助ける、最高最善の王様。皆から無理だって言われた。自分からもね」
「自分、から……?」
「そう、未来の俺。最低最悪の魔王。……ヘコんだよね。どうあがいても、未来で俺はああなるって叩きつけられたんだから」
「でも、俺はなれたんだよ。夢を叶えられた」
「それは一人だけの力じゃない。ゲイツ、ツクヨミ、ウォズ、おじさん、シリウス……それと、未来の俺。皆が俺を助けてくれた。俺の夢は、皆と力を合わせて叶えるものだったんだ」
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「解説ください!」
「さっきまでの話は未来にいたソウゴの話。今ここにいるソウゴはその未来から力を継承して、最低最悪の魔王とは違う形で世界を救ったのさ」
「すっごい壮大な話ですね……」
夢を説く魔王を、シリュウは慈愛を込め鼻で笑う。
「子供の頃から荒唐無稽な夢を、ソウゴは掲げてた。そんなアイツに会って私は、夢を見ちまった。アイツならこんな私さえも救ってくれる、ってな」
「……この夢は捨てた。夢を叶えるやつってのは、自分から動けるやつだってアイツを見て知ったから」
「結論から言えば……私は私を救えた。バ鹿な話だ!今までのことは全てムダだった」
「そんなムダも、今じゃ立派な宝物さ。ソウゴも同じだろうな」
空間に、太陽の陽が射し込む。彼女は2人のライダーに目を向けたまま言う。
「寄り道さえも王道にして、忘れないよう記憶に飾る」
「それって、『ゴージャス』じゃねぇか」
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「さ、聞かせてよ。キミの夢は?」
「俺の……夢は……」
足に力を込める。足りない分は腕の力で補う。ガクついても、どうにか立ち上がる。
自分の夢は、とっくにわかっている。足りなかったのは、それを背負う覚悟。しかしそれは、自分一人で背負う必要はないのだとわかった。
先生がいる。先輩がいる。気に食わないライバルがいる。そして、ヒシミラクルがいる。
「俺は、ケミーの皆と友達になりたい!ケミーと皆が笑って暮らせる世界にしたい!」
今まで受けた傷が、丸い光となって浮かぶ。
「その夢を、皆で叶えたい!」
浮かび上がった光が一点に集中する。光は一枚のカードになり、宝太郎はそれを掴んだ。
『ヘイセイライダー!セカンド!』
「いいんじゃない!」
満足のいく答えを聞けたオーマジオウはドライバーの前で手を交差させる。
『終焉の刻!』
黄金のオーラを纏い、高く飛び上がったオーマジオウの後ろで、時計の針が一回転する。
宝太郎は、ガッチャートルネードについさっき手に入れたカードをスキャンし応戦の構えを取る。
両者に迷いは、ない。
『逢魔時王必殺撃!』
『ケミースラッシュ!』
ぶつかり合う二つの力が周りさえも破壊する。
爆炎が一帯に広がる。
晴れた景色の中立っていたのは、最低最悪の魔王。
そして今まさに、仮面ライダーガッチャードが空を飛んでいた!
『スチームホッパー!』
新たなケミーカード、『ヘイセイライダーセカンド』には仮面ライダーWを始めとした10人のライダーの力が内蔵されている。
宝太郎が使用した能力は仮面ライダービルド・ジーニアスフォームの中和の力。オーマジオウのエネルギー源を無力化し反撃の機会を得るための最適解。中和するためのサンプルは直接オーマジオウから取らずとも、10人目のライダーである仮面ライダージオウの力が手元にある。
無事必殺技を受けきった宝太郎は使用しなかった他のライダーの力を纏いながら己の必殺技を使う。
オーマジオウはそれに対し、両腕を広げこう言った。
「……ナイスゴージャス!」
『フィーバー!』
決着が、ここにてついた。