半導体産業への教訓とは?顧客、市場を視野に入れた戦略が必要

今、日本は産業の頭脳と言われる半導体に大規模投資をしている。政府はTSMCに4760億円もの補助をする。JOLEDの公的支援は1300億なので、全然額が違う。最先端の新しいロジック半導体企業、ラピダスにも支援していく。

――半導体になると支援額が桁違いになる。同じような失敗を繰り返さないために何が必要なのか。

明星大学経営学部 細川昌彦教授:
できるだけ多くの産業を支援するのが望ましいと思いますが、日本の経済安全保障にとっての戦略産業、今回も法律で11業種リストアップした中の一つが半導体なのですが、そういう産業については今回のような支援をしながら継続的に支えていくということがものすごく大事なポイントだと思います。もう一つ大事なのは日本だけでやろうとしてもうまくいかないということだと思います。その反省に立って半導体もアメリカと組んだりあるいは台湾企業を誘致したり。日本だけでという日の丸半導体となったらダメだと思います。それからもう一つ言えば顧客、市場もデジタル産業をこれから支えるうえで大切です。

――TSMCはソニーやデンソー、ラピダスはトヨタやNTTといった企業も出資している。一応反省を生かした展開にはなってきている。

明星大学経営学部 細川昌彦教授:
反省を生かした仕掛けには今なっている。その仕掛けに中身が本当に伴っていけるかどうか、これから本当の勝負です。

――経済安全保障の中で世界の分断が進み、我々は中国というマーケットを失う可能性もある。一方でそれをチャンスに活かす努力が必要だという話がある。

明星大学経営学部 細川昌彦教授:
半導体で見ると、供給網が大きく組み替えられています。実はこの製造をやっているのは韓国のサムスンであり台湾のTSMC。今、中国とアメリカが大規模に補助金をかけて誘致をしようとしている。そういう中でアメリカは中国にそういう技術は行かないようにと韓国、台湾に投資を規制している。日本はと言うと、装置、材料が強いので、それが中国にどこまで渡るかということでコントロールしていこうという流れです。これから先は中国の供給網のグループとアメリカを中心にしたチップ4、韓国、台湾、日本を中心にした形で供給も大きく変化していこうとしているわけです。

――日本が得意な装置や部材が他国に流出するようなことになるのが一番まずい。

明星大学経営学部 細川昌彦教授:
強みがあるうちに韓国、台湾、特に台湾のTSMC誘致やアメリカと一緒になって国内にラピダスを作る。国内で作るということもやっていかないとこの強みを生かせないのではないかということだと思います。

――地政学的なリスクによる経済安全保障の考え方がいいか悪いか、好ましいか好ましくないかという議論はあると思うが、現実にそれが進行している以上、それを何とかチャンスにして日本への投資を引き込んで成長力、競争力を高めていくことにどうつなげるかということだ。

明星大学経営学部 細川昌彦教授:
大国の中国とアメリカがそういう動きをしているということが私たちの環境になっているわけですから、いい悪いではなくて、その現実の中で日本企業は成長することを考えなければいけない。そうすると、中国に問題ないところはどんどん売っていっていいと。ただし、問題あるところは抑えて、先端部分はアメリカのチップ4の中でどう対応していくかという両面をうまく使ってビジネスを展開していくということが必要でしょう。

(BS-TBS『Bizスクエア』 4月1日放送より)