早稲田大学国際教養学部の女性助教が執筆した博士学位論文について、改ざんなどの不正行為があったことが8日、関係者への取材で分かった。早大の学術研究倫理委員会が不正を認定しており、今後対応を検討する。

 読売新聞が入手した内部資料などによると、女性助教は早大大学院在学中の2019年に中東の女性の教育や社会進出に関する博士学位論文を執筆し、20年に博士号(教育学)を授与された。論文では、中東6か国の1439人を分析したとするデータ表を掲載したが、根拠となるアンケート調査の回答を調べたところ、実際のデータは1291人分しかなく、男性56人と対象外の国の女性93人が含まれていた。引用された対象者の発言も、複数回のやり取りを一度に発言したように記載したり、原文と文脈が異なったりしており、改ざんと認定された。

 別の論文2本にも、改ざんや自己盗用があったと認められた。同委員会は「基本的な注意を払っていれば起こりえない」と指摘。一方、執筆当時は大学院生であり、指導教員や学位の審査体制について「(女性助教より)責任が重いと言わざるを得ない」と付言した。

 昨年6月に文部科学省などに研究不正の通報があり、早大が調査していた。早大は19年、イスラム地域の理解を深めるカタール大との共同事業(10年間)を始め、650万ドル(約9億3000万円)相当の役務と施設などを提供している。カタール大の教員2人と、この女性助教が主要メンバーとなっている。

 早大広報課は取材に対し「現在調査中であり、回答は差し控える」としている。