「男性としては出場したくない」 トランス女性ランナーの独白、「同じ女性の仲間だと感じられない」の声も

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性別の定義がない

 聞けば彼女には家庭があり、戸籍上は男性だそうだ。性別適合手術も受けていない。数年前、妻にカミングアウトして以降、時には男性として大会に出場するなど逡巡を重ね、ここへ来てようやく気持ちが吹っ切れたという。

「私が女性として走っているのは、日本陸連への登録が要らないローカルな一般の大会です。そのような大会では性別の分け方についての定義がなく、多くの場合、身分証の確認も求められません。もし、身分証の提示を求められたとしても、そもそも免許証には性別の記載がない。だから、私は自身が自認する女性で出場しているのです」

「同じ女性の仲間と感じられない」

 不公平ではないか、という批判については、

「女性ホルモンの注射を始めてタイムがガクッと落ちました。マラソンは身長などの体格ではなく、ホルモンバランスによるところが最も大きいと思います。私の成績が男性として出ていた時よりも良くなったように見えるのは、単に女性の競技人口の方が少ないからでしょう」

 冒頭に登場した市民ランナーの女性は、

「私はやっぱり元男性には勝てる気がしないんです。かつての私は、性的少数者に対して開かれた世の中であってほしいと思っていました。しかし、あの人を目の当たりにしてから、どうしても以前とは同じように考えられなくなってしまいました。あの人は自身を女性だと主張しているようですが、私にとっては、同じ女性の仲間だとは感じられないんです」

 社会は個人の性自認をどこまで、どのように受け入れていくべきか――。とにもかくにも、現場はすでに混迷を極めている。

週刊新潮 2023年11月30日号掲載

ワイド特集「晩秋の嵐」より

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