私が働く研究開発センターは、東京でありながら自然豊かな場所にあります。広大な山々に囲まれた地域で、研究所の目の前には平井川という美しい小川が流れています。散歩道やサイクリングロードもあるので、週末はジョギングやロードバイクに乗って体を動かすと気持ちがいいんです。
私はそんな環境で、様々な産業排水処理や下水処理に用いられている水処理剤の研究開発を行っています。皆さんは、生活排水を綺麗にするのにどれほど高額な費用がかかるか知っていますか?実は日本の産業廃棄物の約20%を下水処理で発生する汚泥が占めているんです。365日休むことなく日夜運転する下水処理場。それに欠かせない薬剤が、「ポリテツ」という日鉄鉱業が開発した商品です。下水処理を行う上でポイントとなるのが、いかに固体と液体を分離させるかということ。この「ポリテツ」は、固液分離の促進の他、重金属の除去、脱臭性能など、様々な効果があり、日本の下水処理場(約2,000カ所)の内、約500カ所以上で採用されており、約90%のシェアをもつ薬剤です。量にして約190,000 t/年を日鉄鉱業が供給。一時も休むことが許されないユーザーへの供給責任を果たすため、日鉄鉱業では全国10カ所で「ポリテツ」製造拠点を持っており、北は北海道、南は沖縄まで、全国に「ポリテツ」を届けています。研究開発部では、ユーザーへの安定供給のため、全国の製造拠点に対して技術支援・品質改善などのサポートも行っています。
今後は、日本だけではなく、ベトナムやタイなど東南アジア地区への、海外展開も考えているのですが、「ポリテツ」を広めたいのは、ただ水を綺麗にしたいという想いからだけではありません。当社の資源部門が自然からの恵みを糧として、人間社会へ資源を供給する使命をもつ一方で、環境部門である私たちが鉱山開発で得た技術を活かして、汚れた水を綺麗に再生し循環させる。それが自然を豊かにし、部門を超えたエコな鉱山業に繋がると信じているからです。そして、自然の恵みより成り立っている鉱山業であればこそ、環境部門が活躍することに大きな意味があると私は思っています。