採石/野田耕正

信頼で、生産効率は上がる。

ここは切羽(キリハ)と呼ばれる鳥形山の頂上。「天空の鉱山」の異名をもつ国内最大級の石灰石鉱山です。標高は1000mを超え、時おり切羽は雲よりも高くなります。遮るものがないので風はとても強く、冬には雪も積もります。だからといって、休めないのが()()の仕事です。

採石係の仕事のひとつは採石現場の監督。石灰石の岩盤は、「発破(はっぱ)」と呼ばれる方法で小さく砕いていきます。すり鉢状になっている切羽の一角を定め、等間隔で地面に穴を開けて火薬を流し込みます。一回の発破で使用する火薬の量は平均で6~7t。多い時で10tを超えることもあります。点火とともに、大きな爆発音が山中に響いて、石灰石の壁面が一気に崩れ落ちます。「今日の発破は美しかった」。そんな風に言われると、うまくいった証拠です。発破の技術力は、崩れ方や石の大きさによって判断されます。一日一回の発破、明日はもっと美しく成功させたいですね。

そして石灰石の生産管理も採石係の大切な仕事です。切羽をどう削って掘り下げていくか。どれだけの量をダンプで運ぶのか。一日の操業スケジュールを考え、生産量をコントロールしています。その計画は、毎朝行われる「番割」と呼ばれるミーティングで、現場のスタッフにも細かく伝えます。実際にダンプやシャベルを動かすのは現場の職人たちですから、その方たちの意見も汲み取るよう努力しています。僕が大事にしていることは、その人が何に重きをおいて働いているか。「安全」なのか、「効率」なのか、それとも「正確さ」なのか。一人ひとりの価値観を理解した上での、コミュニケーションを意識しています。熟練の職人さんたちに、早く信頼される人になりたい。先輩の仕事を見ていると、人間関係で生産効率まで変わってくるのがわかります。「お前のためなら、やってやるよ」なんて、僕も言われてみたいですね。