天皇賞秋2023
[GⅠ天皇賞・秋=2023年10月29日(日曜)3歳上、東京競馬場・芝2000メートル]
この後のジャパンCを占う上でも大きな意味を持つ天皇賞・秋。なんといっても「ロンジンワールドベストレースホースランキング」1位のイクイノックスが登場します。頭数は少し寂しいですが、ライバルも多士済々。迫力満点で内容の濃い、魅力いっぱいのレースになることでしょう。ワールドクラスの馬たちの馬体を診断するとなれば、おのずと力も入ります。
【イクイノックス】
我が日本の馬が世界ランク1位になるなんて、ちょっと前までは考えられなかったことです。2年前の新潟の衝撃的なデビュー戦、パンサラッサの大逃げを上がり32秒台の強烈な脚で捕らえた昨年の当レース、そして今年のドバイシーマクラシックでの鮮烈な逃げ切り…。そのすべてが今でも脳裏に焼き付いています。前走の宝塚記念は力の違いで他馬をねじ伏せましたが、馬体のつくりからは決して100%の仕上がりには見えませんでした。
それがどうでしょう。今回は非の打ちどころがないくらいよくできていて、まるで額縁から出てきたような“美”があります。毛ヅヤ、馬体の張り、ボディーラインは絵に描いたよう。どこにも欠点は見当たりません。調教の動き、タイムも素晴らしく、まさに仕上がりは上々です。
首の頸鋸筋、頸僧帽筋、鎖骨筋は力強く、肩の三角筋、上腕三頭筋はすごい盛り上がり。腰は殿筋、大腿二頭筋、半腱様筋などがしっかりしています。背中には伸縮性のある闊背筋。これらの筋肉の強さで、あの素晴らしい大きなフットワークをつくり出しています。そのフットワークという点では5大要素(柔らかさ、軽やかさ、ストライドの大きさ、力強さ、ピッチ)をすべて兼ね備えていて、レースでは鞍上との呼吸もピタリ一致。まさに隙がありません。
今週は多くの競馬ファンが、府中の杜で世界ナンバーワンの走りを、その目に焼き付けることになるでしょう。
【ドウデュース】
ドバイターフ出走取り消し明け。それでも中間の追い切りでは本来の柔らかくダイナミックで、ピッチの速い動きを披露しています。馬体は少し余裕がありそうですが、仕上げには定評のある友道厩舎。レース当日には完全に出来上がった状態でパドックに出てくるとみていいでしょう。
昨年のダービー制覇時の馬体と比べれば、1年たった現在は大きく成長しています。背丈も体長も伸び、脂肪がそぎ落とされ、筋肉がハッキリ浮き出てきて、馬体が完成されてきたのです。全身の柔らかい筋肉(特に背中)と関節(主に肩関節と股関節)の回転の滑らかさと速さは今も健在。前後のつなぎ、ヒザ、飛節などのクッションも他馬にはない素晴らしい柔らかさがあります。
レースでは折り合いがつき、鞍上のゴーサインとともに一気に加速。馬というよりは、まるでレーシングカーのようです。これは最良の“地点”で馬に呼吸を合わせる武豊騎手の騎乗技術のなせる業でもありましょう。
イクイノックスと3度目の対戦となる今回。日本ダービー馬の実力を誇示してほしいと願っています。