英仏は親パレスチナ、独は親イスラエル

SNS 言語で温度差

米国では衝突開始後に親イスラエル・パレスチナ双方のデモが行われた=ロイター

2023年11月24日 17:35

イスラエルとイスラム組織ハマスの衝突を巡り、SNSでは言語ごとに意見に温度差が見られる。約190万件の投稿を分析すると、英語・フランス語圏では親パレスチナ、ドイツ語圏は親イスラエルの意見が多い傾向にあった。ネットに根付く意見の違いが各国・地域の世論形成に影響を与える可能性も無視できない。

欧米で異質のドイツ



衝突が始まった10月7日から11月8日までに、X(旧ツイッター)やインスタグラム、ユーチューブ、ブログなどでガザ衝突に言及した約190万件の投稿を分析した。対象となる言語は約130。言語解析に強みを持つ英DMRが機械学習を用い、言葉の使い方やハッシュタグ、絵文字などの情報から、投稿を親パレスチナ、親イスラエル、中立に分類。日本経済新聞が傾向を分析した。

言語別に見ると、110万投稿と最も多い英語では期間を通して38%が親パレスチナで、親イスラエル(20%)を上回った。主要言語ではフランス語の親パレスチナ投稿が24%、スペイン語も34%と親イスラエルに比べ多かった。日本語は、投稿件数が11月に入り減少しているが、総じてパレスチナ支持が多い傾向にある。イスラエルへの反発を強めるアラブ諸国では親パレスチナの投稿が多く、アラビア語で6割を超えた。



パレスチナの人々に寄り添う内容の英語で書かれたXへの投稿(一部画像処理しています)



欧米のSNSではパレスチナ支持が優勢だが、ドイツ語は親イスラエルが27%と親パレスチナ(11%)を大きく上回った。ユダヤ人を迫害した歴史から、第2次世界大戦後はイスラエル支持の立場を取ってきた。11月初旬に親パレスチナ団体の国内活動を禁止したと発表している。ショルツ首相は17日の会見で「(イスラエルとの連帯は)疑う余地のないものだ」と述べ、政府としての姿勢を強調する。



ドイツ語でハマスによる襲撃を非難するXの投稿(一部画像処理しています)



インド・パキスタンで違い鮮明





地域別でもSNS投稿の分析を進めた。世界で最も投稿数が多かったのはインドだった。7割超を英語での投稿が占め、親イスラエルと分類された投稿は24%とフランスや英国を大きく上回る。インドは人口の約8割をヒンズー教徒が占め、イスラム教徒は少数派。パレスチナ支持の投稿が相対的に低い結果となった。5番目に投稿数が多かった隣国のパキスタンはイスラム教国で、親パレスチナが6割弱と、インドとは対照的な結果となった。英語圏でも、政府がイスラエル寄りの立場を取る米国は、英国より親イスラエルの割合が10ポイント高かった。



インスタでは少ない中立





SNSのプラットフォームごとに投稿を比較すると、インスタグラムでは意見の違いが大きく出た。親パレスチナが48%、親イスラエルが31%で、中立的な投稿は22%と他のプラットフォームに比べ最も低かった。利用者に若年層が多く、衝突開始や病院などの爆発などを受け、意見の対立が鮮明となった。Xでは中立的投稿の割合が46%、ユーチューブなどの動画では8割だった。いずれのプラットフォームでも、親パレスチナが親イスラエルの投稿を5〜20ポイント上回っていた。


データ分析・記事
伊地知将史、桜木浩己、
データジャーナリスト 武田健太郎

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