みなさん、はじめまして。GREAT DANE BREWING(グレート・デーン・ブリューイング、以下、グレートデーン)です。まずはこのページをご覧いただきまして、ありがとうございます!
「Brewing(ブリューイング)」とは「醸造」を意味する言葉ですが、日本では「小規模ビールメーカー」という意味で使われることが多いようです。私たちは宮城県仙台市の秋保(あきう)地区にて、2024年1月にクラフトビールのブリュワリー(醸造所)とレストランを開業予定です。
実は、グレートデーンはまったくの新しいブランドというわけではありません。1994年にアメリカ・ウィスコンシン州で創業し、来年30周年を迎える歴史あるブリュワリーです。
そんなブリュワリーがなぜ日本でビールをつくることになったのか、そしてなぜ仙台を選んだのか、さらにはこの地でどんなことをしたいと思っているのか。新しいブリュワリーにかける私たちの想い、そしてこれからの夢をお話しさせてください。
この記事では次のようなことをお話ししていきます。
●「グレートデーン」とは一体何者なのか?
● なぜ日本の中で宮城、そして仙台を選んだのか?
● これからどんなビールを作っていくのか?
● 地域にどのような形で貢献していくのか?
● 私たちが目指す世界とはどのようなものか?
● 今回応援いただいた資金を何に使うのか?
これらを順にご説明していきます。最後までお付き合いいただければ、とてもうれしく思います。
グレートデーンは1994年、アメリカ・ウィスコンシン州で産声を上げました。ウィスコンシン州と聞いても、ピンと来る日本人は少ないかもしれません。アメリカの中西部と呼ばれる一帯に位置し、五大湖であるミシガン湖とスペリオル湖に面しています。美しい自然と広大な農地が広がる、とても穏やかな地域です。
赤く塗ったところがウィスコンシン州
州内最大の都市はミルウォーキー、州は違うものの近隣には巨大都市シカゴがあります。ちなみにバイクのハーレーダビッドソン、自転車のトレック、ソーセージのジョンソンヴィルなど日本でも馴染みのあるメーカーは、実はウィスコンシンが発祥です。
州都マディソンにある州会議事堂
今から約30年前に、ウィスコンシンの州都マディソンで、二人の若者が「グレートデーン」と名付けたクラフトビールの製造を始めました。そして、出来立てのビールを併設のレストランで飲める「ブリューパブ(Brew Pub)」をつくったのです。
当時はまだ大手ビールメーカーの存在が圧倒的でしたが、「もっと美味しいビールを!」「もっと地域に愛されるビールを!」という想いから生まれたブリュワリーの1つがグレートデーンです。
マディソンにあるグレートデーンの店舗
グレートデーンはそのビールの美味しさが評判となり、順調にブリューパブを増やしていきました。現在、地域で5店舗を展開しており、マディソンの街に欠かすことのできない存在となっています。
創業者の一人でブリューマスター(醸造総責任者)を務める Rob LoBreglio(ロブ・ロブレグリオ、以下、ロブ)のビールづくりの知識や経験、そして何より実際に生み出すビールの味に対する評価は極めて高く、2012年には全米の年間最優秀醸造家(Brewer of the Year)にも選ばれました。
グレートデーンの創業者のロブ
そんなロブですが、実はお兄さんが日本と深い繋がりがあります。ロブのお兄さんは仏教の研究者なのですが、日本の大学で教鞭をとっていたこともあるほどで、もちろん日本語はペラペラ。
また、ロブは縁あって、長野県松本市で2016年に創業した「松本ブルワリー」の醸造アドバイザーを務めることになりました。仕事で頻繁に来日して日本のビール業界を見るにつけ、ロブの心の中には「いつか日本で自らブリュワリーをつくりたい」という想いが沸き上がってきたのです。
松本ブルワリーの皆さんと
アメリカのビールと言うと、今でもバドワイザーなどの大手メーカーを思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、アメリカは市場の4分の1をクラフトビールが占めるほどの「クラフトビール大国」なのです(ちなみに、日本ではクラフトビールのシェアは2%程度と言われています)。
アメリカに移民が多いことはよく知られていますが、イギリスはもちろん、ドイツやベルギー、イタリア、そしてメキシコやブラジルなど各地のビール文化が融合し、そこにアメリカらしいテクノロジーやチャレンジングスピリットが掛け合わされています。
その結果、アメリカには極めて多様で奥深い、世界最先端とも言えるクラフトビールの世界が広がっているのです。
ロブは自分自身がアメリカのクラフトビール文化の体現者の一人として、多様で面白く、美味しいビールを自ら日本人に届けたいと思うようになったのです。
ロブのそんな想いに呼応するように、その夢を一緒に追いかけるメンバーが1人また1人と集まり、現在はアメリカ人3人と日本人2人の合計5人のチームで開業準備に奔走しています。それぞれのメンバーについては後ほどご紹介します。
ちなみに、ロブはアメリカの自宅を売却して、仙台の秋保に新たに家を購入して移住しました。
「日本でビールづくりをする!」という大きな目標こそできたものの、果たしてどこから手を付けたものかと、ロブをはじめチームの面々は頭を悩ませます。その際に相談をした先が、ジェトロ(日本貿易振興機構)のシカゴ事務所でした。
シカゴのジェトロがグレートデーンの情報を日本サイドに共有したところ、それを知った宮城県職員の皆さんが強い関心を持ってくれました。そして何と遠路はるばるウィスコンシンのグレートデーンまで視察に来て、その上で「宮城県にぜひ来てください!」と熱烈に誘致をしてくださったのです。
ウィスコンシンのグレートデーンの店内
実は立地については、「巨大消費地である東京に近いほうがいいのでは?」「自分のパートナーの故郷である●●県でやりたい」など、チームの中でも色々な意見が出ていました。
しかし、せっかく声をかけてくださったのだからと宮城県を訪れたところ、その魅力にだんだんと惹かれていきました。そして県内のあちこちを見て回る中で、最終的に候補となったのが仙台市の秋保(あきう)地区だったのです。
秋保(読み方は「あきほ」ではなく「あきう」です)は「仙台の奥座敷」と称されます。仙台駅からは車で30分ほど行ったところにあり、一帯には里山の風景が広がっています。
秋保は温泉でその名を知られています。秋保温泉は開湯から実に1500年を誇り、伊達政宗公の入湯場として守られてきました。長野県の別所温泉、野沢温泉と並ぶ「日本三御湯」の一つにも数えられている名湯なのです。
秋保の老舗旅館「緑水亭」の露天風呂
そんな秋保は、コロナ前の2019年には年間240万人が訪れる人気の観光地でした。ようやくコロナの状況も落ち着き、すっかり以前の活気が戻ってきています。
秋保の中心部には清流の名取川が流れ、その周辺には由緒ある旅館やホテルが点在しています。豊かな自然に加えて、近年では移住をしてくるアーティストやクリエイターも多く、個性的なショップやカフェがどんどん増えている、今注目のエリアなのです。
秋保の人気カフェ「アキウ舎」
そんな魅力的な地域であることに加えて、秋保ではたくさんの素晴らしい人たちとの出会いがありました。中でも「秋保ワイナリー」の毛利親房さんや「アキウ舎」の千葉大貴さんなど、地域の魅力を精力的に発信している皆さんとの交流は、私たちを強く後押ししてくれました。
ぶどう畑が広がる「秋保ワイナリー」
また、秋保で新たにワインづくりを始めたMONKEY MAJIKのブレイズ・プラントさんも私たちの活動を温かくサポートしてくれています。
一言で言えば「ご縁」となるのかもしれませんが、点と点が少しずつ繋がっていくように、ごく自然な形で、何かに導かれるようにして、グレートデーンは秋保の地にたどりついたのです。
さて、ここでブリュワリーについてご紹介しましょう。場所は秋保の見どころの一つである「磊々峡(らいらいきょう)」という美しい峡谷から歩いて、わずか3分ほどのところに位置しています。
秋保を代表する観光スポット「磊々峡」(提供:仙台観光国際協会)
秋保の町を車で走ると、メイン道路沿いに黒い壁のブリュワリーが現れます。敷地面積は約5,000平方メートル、建物面積は約1,000平方メートルです。いわゆる大手ビールメーカーの工場とは比べるまでもありませんが、この数年日本で急増している「マイクロブリュワリー」と比較すると、やや大きい部類に入るかと思います
建物の中は「醸造所」と、それを楽しめる「レストラン」に分かれています。ビールの場合、いくら「クラフト」といっても、工場的なニュアンスも強いので、私たちのブリュワリーにもたくさんの機器がずらりと並んでいます。
そして併設のレストランでは、最大16種類の出来立てビールを楽しんでいただける予定です。そこでお出しする料理については、後ほどご紹介します。
レストランの内装では、限られた予算という現実的な問題もあり、様々な工夫をしています。市販の家具を買うと高くつきますから、近所の材木屋さんに木材を安くわけていただき、それを加工してオリジナルのテーブルをつくりました。
ちなみに、テーブルは自分たちで色(ステインやペンキ)を塗りました。これによってコストが抑えられるとともに、手をかけたおかげで一層愛着も湧いてきます。
また、レストランの吹き抜けには、こんな壁をつくりました。
実はここで使っている木材は、海外から輸入した醸造機器の梱包に使われていたものなんです。放っておけば産業廃棄物になってしまう梱包材を、何とか再利用できないかと知恵を絞った結果、こんなアイディアが生まれました。
醸造機器の梱包材
解体した木材を壁面に貼り、そこに自分たちの手で白いペンキを塗りました。自画自賛かもしれませんが、なかなか良い雰囲気になったと思っています。
レストランのこの照明も、ブリュワリーの建設現場に転がっていた廃材を活用してつくっています。
廃材にエジソンライトをぶら下げたシンプルな照明
なお、建物の裏手にはガーデンが広がっていて、ここでは出来立てのビールを飲んだり、バーベキューをしたり、あるいは色々なイベントをしたりできます。
文字通り「ビアガーデン」として、皆さんに存分に楽しんでいただきたいと思っています。ガーデンはワンちゃんもOKなので、愛犬とともにゆったりとビールを楽しんでもらえます!