ジャニー喜多川氏「奇跡の5時間インタビュー」を全文公開する
彼はどう生き、何を考えたのか高校受験の一時期、レッスンを控えていた少年隊の錦織や東山のような場合もある。
「初日のレッスンが終わったら、ジャニーさんが来て『YOUは天才!』って。今考えたら、あの言葉に騙されたんですね。とにかく行ったら、楽しい気持ちにさせてくれるんです。そのうちショウビジネスの世界は楽しいんだよという風に教えてくれる人なんです。この世界でやっていく欲を叩き込むのじゃなくて、引き出してくれるんです」と錦織。
「走るのは彼らでしかないわけですよ。僕はレールを敷いてあげるだけで、機関車にはなれない」
理想論としか聞こえないジャニーの言葉も、有名になったタレントたちの話が実証している。
「最初はたまにしか行かないから、レッスンも後ろの方でちょこちょこと踊っていただけです。先生も見えないから、踊りもうまくならないし。でも、真面目に行きだしてから、ときどきジャニーさんが『今度、水泳大会があるから、行きなさい』と声をかけられるようになったんです。
水泳大会といっても、スターの後ろでタンバリンを叩いているだけですけどね。だけど、それで5000円もらえたから、バイトのつもりで喜んでやってましたよ。ジャニーさんはジュニアのことを見ていないようで、見ているんですよ」
中居がSMAPの前身であるスケートボーイズに選ばれたときも、不自然なほど自然である。レッスンの休憩中にジャニーは「君と君と君と……」と、中居のほか全部で12人の少年に声をかけ、「今度、光GENJIの後ろでスケートボードに乗る仕事があるから来なさい」とだけいった。この時点ではジャニーはなぜ中居たちを選んだのかも、どんなコンセプトのグループかもまったく説明しない。選ばれたジュニアたちは小さな仕事をこなしながら、各自がその意味を考えていくしかない。
「ジュニアといっても、すでの先輩たちのステージに出たり、ドラマやCMに出ている子が多いんです。そうすると、皆から見られるから、自然と顔も変わるし、生活も変わるはずなんです。でも、そうしたことは教えられることはないので、自覚するしかありません」とジャニー。
ジャニーズ事務所のスター育成システムはシステムと呼ぶことさえためらわれるほど緩やかなものだ。しかし、その裏には厳しい競争原理が働いていることも見逃してはならない。誰からもジュニアたちはレッスンを強制されない。しかし、上手くなければ、前の方で踊ることも許されない。輝いていなければ、ジャニーから仕事の声もかからない。それは、アメリカのブロードウェイシステムにどこか似ている。走るか、留まるか、去るか――。少年たちの自覚と努力にすべてがかかっている。