「アルゼンチンのトランプ」ハビエル・ミレイ次期大統領の“過激すぎる主張”から日本が学ぶべきことは何か

朝香 豊 プロフィール

今の壊滅的な経済状況を救うためには

こうした経済的苦境を救うために、もはや中央銀行など廃止してしまえばいい、つまりアルゼンチン・ペソをなくして、通貨は全部米ドルにしてしまえばいい、という過激な主張をミレイ氏は行っている。

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しかし、この主張には多くの批判がある。これを受け入れれば、アルゼンチンは国内の状況に合わせた金融政策ができなくなるからだ。

例えば、アメリカがインフレ抑制のために高金利で動いている時に、仮にアルゼンチンが深刻な不況であっても、不況をさらに深刻化する金融引き締めを受け入れざるをえないことになる。それは不合理だというわけだ。

さらに、アルゼンチン・ペソを廃止するには、国内のペソを買い取ってドルと交換しなければならなくなるため、ざっと400億ドル程度のドルが必要になるとの試算がある。ただし、アルゼンチン・ペソの最近の暴落ぶりからすると、400億ドルでは全く足りないかもしれない。

当然、そんな多額のドルはアルゼンチン政府にはないので、IMFなどから借りてくることが必要になる。それはそのままアルゼンチン経済を苦しませることになる。

 

中央銀行を廃止し、アルゼンチン・ペソを廃止することが、どれだけ経済的にマイナスになるのかについて、経済学者であるミレイ氏が理解できていないはずはない。ミレイ氏はしかし、それを理解した上でも、今の経済状況を救うためには、尋常ではない手段に出るしかないと考えているわけだ。

ミレイ氏が主張しているのは、中央銀行の廃止だけではない。大胆な民営化を推し進める方針で、例えば公立学校まで全て民営化すると主張している。

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