「アルゼンチンのトランプ」ハビエル・ミレイ次期大統領の“過激すぎる主張”から日本が学ぶべきことは何か

朝香 豊 プロフィール

先進国から発展途上国に転落した理由

アルゼンチンでは、何度もデフォルトを繰り返している今でも、公立病院であれば医療費は無料、公立学校であれば大学であっても授業料は無料だ。

このあり方は必然的に大きな政府を求めることになった。そしてそれは様々な利権を生み出し、腐敗を生み、経済効率性を引き下げた。

補助金頼みの企業が増え、企業の効率化もなかなか進んでいない。こうした中でアルゼンチンは世の中の進歩についていけなくなり、経済的にはどんどんと落ちぶれていった。

20世紀初頭には世界第5位と評価されたこともある経済大国で、第二次世界大戦が終わる頃までは先進国として知られていたアルゼンチンが、ペロン主義に染まってから、たちまち転落していったのだ。

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ノーベル経済学賞を受賞したことでも知られる偉大な経済学者のサイモン・クズネッツ氏は、「世界には4種類の国がある。先進国と発展途上国、そして日本とアルゼンチンである」と述べている。

世界は先進国と発展途上国に固定的に2分されるが、戦後の焼け野原から奇跡的な復興を遂げて先進国入りした日本と、ペロン主義に染まって先進国から発展途上国に転落していったアルゼンチンは例外だということを述べたものだ。

 

クズネッツ氏は1985年に亡くなっていることから、おそらく1970年から1985年の間にこの発言をしているものと思われる。つまり、ペロン主義を採用して25年から40年の間に、かつてのアルゼンチンの豊かな姿はすっかり消え失せていたということになる。

「弱者を救え」という路線を優先し、経済効率性をないがしろにする動きが続くと、国力は徐々に毀損され、30年から40年で見るも無惨な姿になるということを、私たちは頭に入れておくべきだろう。

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