2023.11.28

外国人労働者に選んでもらわないと立ち行かないのに、ますます日本が「選ばれない国」に…優柔不断でピンボケの政策判断しかできない岸田政権の「大罪」

現代の奴隷制度

「現代の奴隷制度」との酷評もあった「外国人技能実習制度」などの見直しを検討してきた政府の有識者会議は先週金曜日(11月24日)、この制度を廃止して、新制度「育成就労制度」の創設を求める報告書を取りまとめた。

だが、目玉と言えるのは、最大の焦点だった別の職場への「転籍」の制限期間を現行の「3年」から「1年」に短縮することを原則として打ち出したことぐらいだ。その目玉でさえ、実際には、「経過措置」を設けて、当分の間は1年を超える制限を容認するよう求めるなど、尻抜けの提言にとどまった。

周知の通り、もはや、日本は、賃金水準の低さが響いて、外国人労働者から「選ばれない国」になっている。報告の内容は、経過措置を設けることによって、その日本国内でも賃金の低さや過酷な労働条件が仇となって人材の確保が困難になっている非効率企業の経営を支援する枠組みの存続を訴えていることに他ならない。

これでは、外国人労働者の賃金上昇をテコにして、日本人労働者の賃金を押し上げる効果や、生産性の向上を促す効果、そして国全体の成長を押し上げる効果も期待できないだろう。

優柔不断でピンボケの政策判断しかできない岸田政権らしい、落第点の外国人労働者の受入制度の改革に終始したと言わざるを得ない。

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今回の提言をまとめた有識者会議は、「外国人材の受け入れ・共生に関する関係閣僚会議」が2022年11月に設置を決めたものだ。政府は、今回の提言をもとに、来年(2024年)1月召集の通常国会に関連法案の提出を目指すとしている。

こうした見直しの根底には、現行の「外国人技能実習制度」に設けられている転職制限が「現代の奴隷制度」と酷評されるなど、内外から職業選択の自由を制限することへの批判が強まっていた問題が存在したことと無関係ではない。

加えて、政府に、今なお日本が圧倒的な経済大国という驕りが横たわっていた問題も見逃せない。「外国人技能実習制度」の目的を、「人材育成による国際貢献」と位置付けていた点が、そうした誤認と驕りの象徴になっていた。

 

半面、政府部内にも、以前から、国際的な労働市場の実情と日本の問題を適格に把握していた部署もある。例えば、経済産業省が2022年4月にまとめた「未来人材ビジョン」は、「日本は、高度外国人から選ばれない国になっている」との問題意識を明確にしたうえで、「外国人から『選ばれる国』になる意味でも、社会システム全体の見直しが迫られている」と正鵠を射た提言を出していた。

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