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日本人は「超円安」の恐怖がわかっていない! 忍び寄る「通貨危機」への準備はできているのか

東洋経済オンライン / 2023年11月28日 7時30分

現在進行形で進んでいるアルゼンチンペソ危機も、この1年間で食料品価格などは2倍以上になった、と報道されている。大統領選挙でもハビエル・ミレイ下院議員が「中央銀行と通貨のペソを廃止し、米ドルを法定通貨にする」という政策を掲げて大統領選に勝利した。通貨に対する信任がいかに重要かを物語っている。

実際に、アルゼンチンの消費者物価指数は、23年10月に前年同月比142.7%(日経新聞 2023年11月15日)上昇。この数字はアルゼンチンが急激なインフレで苦しんでいた1991年8月の144.4%以来32年ぶりの上昇となった。2022年の通年でも94.8%の上昇となっており、通貨の暴落はインフレとセットになる。

ここ数年の世界的なインフレは戦争などによる資源価格の高騰もあるが、同時に起きた通貨変動の影響がある。その背景には、アメリカの中央銀行にあたる「FRB(連邦準備制度理事会)」の急激な金利上昇がある。金利上昇に合わせて、アルゼンチンやトルコ、アジア諸国などから、金利の高い米ドルに資本が流出して通貨が売られたわけだ。

超円安で生活はどう変わる?

今後、円安がさらに進んだ場合、われわれの生活はどうなるのか。すさまじいインフレを体験した国の人々の話を整理すると、大きく4つのポイントに絞られる。

●国全体が貧しくなる
 激しいインフレが起こり、企業業績が急激に悪化していく。賃金の上昇をはるかに上回るインフレが生活を襲い、ほとんどの国民は生活苦に陥る。とりわけ、資産を自国通貨(=円)だけで運用してきた人は一気に財産が半分に減少してしまうので、生活も苦しくなる。

●政府や地方自治体の財政が急激に悪化する
 財政赤字はさらに拡大し、地方自治体の中には職員に賃金が払えなくなるなど、公共サービスが一時的に停止になる事態がやってくる。政府の補助金に頼る年金給付や健康保険、介護保険、雇用保険といった社会福祉事業や公共サービスが危機を迎える。年金だけでは暮らせないレベルまでインフレが進み、生活が困窮する事態が起こる。

●金利が急激に上昇していく
 円安を止めるため金利を上昇させることになるため、住宅ローンなど融資を受けている人や企業が危機に直面する。住宅ローンは一気には上がらないものの、利息だけを返し続ける羽目になる場合もある。不動産市場や株式市場は低迷する。

●企業の業績が急激に悪化する
 海外での収益が円安で急増する反面、日本国内での業績は急激に悪化する。これまで企業がため込んできた内部留保も、円だけで運用してきた企業は資産が半減することになる。銀行は、円預金を引き出して外貨に換えようとする客で混乱し、最悪取り付け騒ぎに発展する可能性もある。経営基盤の弱い銀行の破綻も相次ぐ可能性がある。

日本がトルコやアルゼンチンのような状況に陥る可能性は低いが、日本には食糧やエネルギーを自給できていないというリスクが存在する。円安による食糧不足や原油価格高騰といった事態になれば、国民は困窮する。海外の投資家も、日本から資金を引き上げるために、円を売って外貨を買うことになる。超円安のシナリオも完全無視するわけにはいかないだろう。

岩崎 博充:経済ジャーナリスト

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