モーンランドはかつて人間の国サイアリがあった場所だが、王国暦994年のデイ・オヴ・モーニング(悲嘆の日)に原因不明の大爆発が起きて、そこに住む人々を地上から消し去り、街という街、鄙ひなという鄙を荒れ果てた大地に変えてしまった。かつての麗しい国は見る影もなく、いまや荒廃しきった不毛の地に成り果てている。残存する魔法の効果が荒涼たる風景を覆い尽くし、ごつごつとした岩山にはリヴィング・スペル(生きている呪文)や奇怪な姿をしたモンスターがうろつき、不思議な現象が絶えないという。モーンランドの境界線の内側では、自然のことわりが通用しない。したがって魔法による治癒も自然治癒もここでは機能せず、屍はいつまでも死んだときのままの状態を保ち、腐敗することがないという。さらには、ロード・オヴ・ブレードなる存在が秘密の要塞にウォーフォージドの兵を集めているとも言われている。こうしたさまざまな危険にもかかわらず、モーンランドで得られるものもまた少なくない。廃墟に埋もれたレリックはもちろんのこと、モーンランド誕生の謎を解き明かしたいという衝動が、多くの人々をこの地に引きつけてやまないのである。
それでもモーンランドを目指しますか?
ハシウス・ロート
コランベルグ・クロニクル、ゾルデイ、ドラヴァゴ4日号より転載 ごきげんよう、読者のみなさん! この記事に目をとめるぐらいだから、あなたもまた財宝や名声を求めてモーンランドに分け入ることを考えておいでなのだろう。したがって、かの地であなたを待ち受けるさまざまな危険については、とうにご承知に違いない。リヴィング・スペル、デッドグレイ・ミスト、奇怪な変貌を遂げたモンスター、残存するデイ・オヴ・モーニングの魔法効果、はぐれウォーフォージド。これらはそういった危険のほんの一部に過ぎないが、もちろんこんな材料であなたを思いとどまらせることができるとは夢にも思っていない。そのかわり、探検から生還したいのであれば必ず知っておくべき事柄をいくつか挙げるので、心して読んでほしい。
あなたが理解しておかなければならない最も重要なこと──それは、モーンランドでは治癒ができないということである。自然治癒も魔法による治癒も、あの不毛の地ではまったく機能しない。ただし、ドルイド呪文のグッドベリーは、なぜかモーンランドの影響を受けないようだ。また、患部に手をかざすことで傷を治すパラディンの能力も普通に使えるらしい。さらに、次元間旅行を可能にする魔法は貴重この上ない。異世界にいるあいだは、治癒をおこなうことも治癒を受けることもできるからだ。それと、人造を修復する呪文はモーンランドでも問題なく機能するので、もしパーティーのメンバーにウォーフォージドがいても、彼らがさほど困ることはないだろう。
さて、それなりの装備を整えて出発したあなたが最初に出くわす障害が、モーンランドの外縁を取り巻くデッドグレイ・ミストだ。霧のなかに足を踏み入れたあなたは、なんだか意気消沈し、冒険の熱意が失われていくのに気づくだろう。いやいや、なにもあなたの意気込みを疑っているわけではない。こうした気分になるのは、霧の持つ魔力のせいなのである! しかも、この魔力の効果がひときわ強い場所がところどころに存在するので、霧の灰色がいちだんと濃い場所を見つけたら、けっして足を踏み入れないことだ。この霧はまた、方向感覚を失わせる力も持っている。デッドグレイ・ミストで迷ったあげく消息を絶った探検隊の話は、私自身飽きるほど聞いたので間違いない。 今のところ、私にできる助言はこれですべてだ。あとは勇敢なる冒険者諸兄の幸運を祈るばかりである。ちなみに次回のタイトルは「それでもデーモン荒野を目指しますか?」なので、ご期待いただきたい。
・・・本編へ続く |