エベロンは魔法と驚異の世界であり、陰謀とサスペンスの世界であり、肩の凝らない冒険活劇とノワール風ミステリの世界である。そこで活躍する個性もさまざまな主人公たちは、世界の命運を左右し、予言を成就させる存在だ。『プレイヤーズ・ハンドブック』および『プレイヤーズ・ハンドブックII』に載っているさまざまな種族、“伝説の道”、それにクラスは、すべてエベロンの世界で使うことができる。それぞれが、ヒーローや悪漢を創造し、世界のストーリーを発展させうる可能性を秘めている。本書『エベロン・プレイヤーズ・ガイド 第4版』では、それらにキャラクター用クラスと“伝説の道”をいくつか追加する。
この章は以下のセクションに分かれる。
アーティフィサー:武器や防具や人造に魔法を吹き込むことができる最先端の秘術使いたち。彼らは錬金術による合成と非魔法的ツールを使いこなす名人であり、ロッドやスタッフやワンドを使ってみずからの能力を底上げする。いくつもの封呪を組み合わせて味方を支援する手際は他の追随を許さない。エレメンタルの力や秘術的な合成物によって動かされている機械仕掛けの人造は、創造主であるアーティフィサーの指示に従い戦場を駆けめぐる。
伝説の道:ここでは上級キャラクター向けの選択肢をいろいろと用意した。たとえばアーティフィサー向けの選択肢には、バトルフィールド・エンジニアやクロックワーク・エンジニアがある。また、新しい種族のために用意された“伝説の道”も紹介する。チェンジリングはカメレオンという“伝説の道”を選ぶかもしれず、カラシュターはライトウォーカーの道を追及するかもしれず、ウォーフォージドはウォーフォージド・ジャガーノートの道に進むかもしれない。ドラゴンマークを身に帯びるヒーローには、13のドラゴンマーク氏族それぞれに関係した“伝説の道” が用意されている。その他の種族やクラスのための選択肢は、エベロン世界のテーマと味わいを念頭に置いてデザインされたものばかりだ。
神話の運命:世界をも揺るがす“神話級”のレベルにまで到達したキャラクターには、新たな運命が用意されている。チャンピオン・オヴ・プロフェシーは“竜の予言”の大局におけるみずからの重要性を学び、ディスポゼスト・チャンピオンは歴史に見捨てられた者たちをより良い未来に導く。また、モーニング・セイヴィアは土地を癒すために己を犠牲にし、サブライム・フレイムはシルヴァー・フレイムとの最終的合一を目指す過程で悪と戦う。
アーティフィサー
「わたしには魔法に宿る秘密のパターンが見えるのよ。そして、手持ちのアイテムを通じてその魔法を使い、あなたを守ることもできれば癒すこともできる。あるいは……木っ端微塵に吹き飛ばしてしまうことだってできなくはないわ」
アーティフィサーは魔法に習熟することを、まるで工学的な技能のように扱う。彼らはエネルギーと物質に内在する種々のパターンを読み解き、物体やクリーチャーの内部または周囲で魔法の流れをあやつる術を会得する。アーティフィサーは魔法の構成要素、図形、それに複雑につながった印形を用いてエネルギーをアイテムに注ぎ込む。彼らの技能をもってすれば、どのような状況にも応じた魔法装置をつくることができるのである。
アーティフィサーである君は、もともと魔法を学ぶ学徒で、しだいにアーティファクトや秘術アイテムに関心を抱くようになったのかもしれない。あるいは、かび臭い地下室で魔法の道具を発明してはこしらえている鋳掛け屋かもしれない。そうでなければ、世界中の忘れられた場所という場所をめぐり、アーティフィサーの知識を掘り起こすことに成功した探険家という可能性もある。どこでその才能を得たにせよ、魔法の工学技術的な諸要素に対する情熱が、君をアーティフィサーとしての研鑽に駆り立てていることは間違いない。
たすき掛けにした弾薬帯はいわば君の“武器庫”であり、それには錬金術でつくった混合物、魔法の装具、非魔法的な材料、および種々の道具類が収納されている。君の武器や装具、その他の装備品には、ルーンや神秘的な模様が刻まれている。君は秘薬を混ぜ合わせ、ポーションを飲み、アイテムをこしらえる。また、身につけた知識を駆使し、自分自身や味方に秘術の力を吹き込む。そしていつの日か、磨き抜いた魔法の技能が君を伝説にすることだろう。
アーティフィサーのクラス特徴
君は以下のクラス特徴を有している。
ヒーリング・インフュージョン
君はのちのち使用するための” 癒しの封呪” をつくることができる。具体的には大休憩の終了時に、次の大休憩の終了時まで持続する”癒しの封呪”を2つ作成する。16レベルになると、作成できる”癒しの封呪”の数は3つに増える。
”癒しの封呪”の効果を決めるのは、それを作成するときではなく、そのパワーを使うときである。ヒーリング・インフュージョンのパワーを使うとき、君は最後に取った大休憩のあいだに作成した”癒しの封呪”のうちから1つを消費する。消費してしまった” 癒しの封呪” は、小休憩のあいだに君または味方1人の回復力1回ぶんを使って補充することができる。
ヒーリング・インフュージョン:キュアラティヴ・アドミクスチャー
Healing Infusion: Curative Admixture/癒しの封呪:治療薬
アーティフィサー/クラス特徴
君はあらかじめ封呪しておいた魔法を使って目標の傷を癒す。
効果:目標は(自分の回復力値+使用者の【判断力】修正値)に等しい値のヒット・ポイントを回復し、使用者はヒーリング・インフュージョンのクラス特徴によって作成した封呪を1つ消費する。
ヒーリング・インフュージョン:レジスティヴ・フォーミュラ
Healing Infusion: Resistive Formula/癒しの封呪:抵抗の調合式
アーティフィサー/クラス特徴
君は封呪のエネルギーを目標の鎧に注ぎ込み、持続的な防御を与える。
効果:目標は遭遇が終了するまでのあいだACに+1のパワー・ボーナスを得、使用者はヒーリング・インフュージョンのクラス特徴によって作成した封呪を1つ消費する。また、目標は1回のフリー・アクションとして上記のボーナスを終了させ、(自分の回復力値+使用者の【耐久力】修正値)に等しい値の一時的ヒット・ポイントを得ることができる。
秘術強化
魔法を学び研究することにより、君はアイテムの内部に閉じ込められた秘術エネルギーをあやつる能力を身につけた。君は1日の初め、魔法のアイテム1個を強化する能力を得、またマイルストーンに達するごとに秘術強化の使用が1回分追加される。なお、アイテムを強化するには、それを持って1回の小休憩を取らなければならない。アイテムを強化するには、次の2通りの方法がある。
エネルギー付与:君は魔法のアイテムが持つ一日毎パワーを再チャージする。この方法で1つのアイテムを再チャージできるのは1日1回に限られる。
エネルギー増強:君は1つの武器または装具に予備エネルギーを吹き込む。このエネルギーはエネルギー自体が消費されるかまたは君が次に取る大休憩が終了するまで持続する。その武器または装具の使用者は、1回の攻撃ロールを行なったあとに1回のフリー・アクションを使って予備エネルギーを消費し、その攻撃ロールに+2のボーナスを得ることができる。この方法で1つの武器または装具の威力を増強できるのは1日1回に限られる。
アーティフィサーの概説 特性:君が持つ数々のパワーは範囲攻撃と遠隔攻撃を組み合わせ、敵の行動を妨害するいっぽうで味方の能力を高める。君の使う呪文は中程度のダメージを与え、また、君は傷を癒すパワーや味方の攻撃と防御を強化するパワーを有する。さらに、君は戦闘時に自分を支援させる魔法の細アーティフィス工物をつくりだすことができる。 |
アーティフィサーの作成
ここではアーティフィサーの作成例を2つ紹介する。すなわち、鋳掛け屋と戦鍛冶である。鋳掛け屋は秘術の人造をつくりだすのに対し、戦鍛冶は武器や防具に魔法を吹き込む。アーティフィサーが呪文を創造し制御する能力は【知力】に依拠している。加えて、【判断力】は人造に自律性を与えるのに寄与し、【耐久力】は非自律性のアイテムに魔法を集中させるのに役立つ。
鋳掛け屋のアーティフィサー
手元にあるどんな材料でも使って、君は武器や防具を強化し、また味方をつくりだしさえする。自己の創造物一つひとつに魔法、元素の精霊、そして生命の火花を吹き込み、特定の仕事をさせるために必要な力を与えるのである。鋳掛け屋のアーティフィサーの攻撃パワーは【知力】に基づくため、一番高い能力値には【知力】を選ぶべきである。また、鋳掛け屋のアーティフィサーがつくった細工物や人造を強化するのは【判断力】なので、二番めに高い能力値は【判断力】にすべきである。さらに、鋳掛け屋のアーティフィサーが持つその他のパワーは【耐久力】に依存するので、三番めに高い能力値は【耐久力】にすべきである。
戦鍛冶のアーティフィサー
君は魔法の流れを撚り合わせ、それらをアイテムや味方に縫い込む。この“封呪”によって、武器はより強力になり、防具はより頑丈になり、味方はより長く戦えるようになる。戦鍛冶のアーティフィサーが持つ攻撃パワーの精度と威力は【知力】が決めるため、【知力】を一番高い能力値にすべきである。また、【耐久力】は呪文が与えるダメージと防御力のボーナスを向上させるので、それを二番めに高い能力値にすべきである。さらに、【判断力】能力値が高ければ“意志” 防御値の嵩上げが見込めるうえ、何か専門外のパワーを持っていたとしてもそれを使いこなすことができる。
アーティフィサーと召喚
アーティフィサーは物体に自律性を付与もすれば、人造をつくりだしもする。こうした創造物の大半は、召喚されたクリーチャーと同じルールに従う。物体に自律性を付与するとき、アーティフィサーは元素の精霊を呼び出して物体に縛りつける。捕縛の手続きには、アーティフィサー自身の精気のごく一部も必要になる。もし遭遇が終わる前やアーティフィサーによって解除される前に人造が破壊された場合、アーティフィサーもそのツケを払う。それゆえ、アーティフィサーの召喚は持続時間と使用頻度の両方に制限がある。
アーティフィサーのパワー
君は秘薬と材料を携行する。仮に必要なものがなくとも、ありふれた材料を構成要素に変えることができる。君は日々モノをつくり、力を吹き込み、“呪文”と呼ばれる秘術パワーを使うのに必要な物体や構成要素を準備する。物体に魔法を浸み込ませる呪文を指して、アーティフィサーの多くは“封呪”という言葉を使う。
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伝説の道
以下で紹介する“伝説の道” には、それぞれエベロンに関係する諸々の性格や特徴が表れているが、これらの“道”を他のキャンペーン世界用につくったキャラクターに使うこともできる。このセクションでは一般的な“伝説の道” ―クラス、種族、または背景に基づくもの―とドラゴンマーク用の“伝説の道”とを分けて説明する。
アルケミスト・サヴァーント
Alchemist Savant/錬金術の大家
「魔法は万物に宿っているわ。ちょっとした工夫で、それを引き出すことができるのよ」
薬草、顔料、鉱物、それに舶来の諸成分―これらはコーヴェア全土の錬金術師が使う材料である。毒薬やポーションから驚くべき装置まで、錬金術師の工房からはありとあらゆる種類の驚異的作品が生まれる。
アルケミスト・サヴァーントである君の技量は、三流ウィザードのそれを上まわる。君の本領は魔法を錬金術の材料と混ぜ合わせることだ。神秘のエネルギーを処方に加えることで君がつくりだす恐るべき調合物は、どんな武器にも劣らない威力を持つ。
ウォーフォージド・ジャガーノート
Warforged Juggernaut/ウォーフォージドの巨兵
「そこをどけ、みじめな肉袋ども!」
完璧な肉体を手に入れ、膂力と武勇を体現する存在になる―そのために君は生涯を捧げてきた。君は最終戦争の前線にいたのかもしれない。あるいは最終戦争の末期に生まれたため、戦場で生かせなかった戦う資質を存分に発揮したくてうずうずしているのかもしれない。いずれにせよ、君はがむしゃらに敵中に切り込み、目の前の敵を追い散らすことを無上の喜びとする。ウォーフォージド・ジャガーノートである君は、誰にもとめられない一個の兵器であり、戦場で大勢の敵にかこまれているときほど落ち着くときはない。その場を動かないと決めたら、君は梃子でもそこを動かない。ほかの者ならひとたまりもないような攻撃を受けてもびくともしないのは、恵まれた体格と日頃の鍛練の賜物と言えるだろう。
エクソシスト・オヴ・ザ・シルヴァー・フレイム
Exorcist of the Silver Flame/シルヴァー・フレイムの祓魔師
「汚らわしいデーモンめ、退散せよ! この場から去り、二度と戻ってくるな!」
世界にはびこる悪と対峙する勢力として、シルヴァー・フレイム教会以上に大きな存在はない。教会に所属する聖戦士たちは、デーモン、デヴィル、ライカンスロープ、そしてアンデッドを相手に永遠の戦いを繰り広げている。シルヴァー・フレイムに仕える使徒たちのなかで第一に数えられるべきが、エクソシスト・オヴ・ザ・シルヴァー・フレイムである。彼らは世界中を旅し、シルヴァー・フレイムの教えを身を持って示すことに生涯を捧げている。
エクソシスト・オヴ・ザ・シルヴァー・フレイムである君はシルヴァー・フレイムとの強力な結びつきを武器にしている。シルヴァー・フレイムの力を宿す“生きた器” として教会を支える―君はその任務の担い手としてシルヴァー・フレイムの“御声”から特に選ばれたのであり、それゆえに、腐敗を暴き出してこの世界から追放する使命を帯びているのである。だからこそ、悪を根絶やしにするために避けて通れない陰惨な仕事にも耐えられるよう、君は己を鍛えあげてきた。君は信仰の力を解き放ち、破邪顕正の炎によって敵を焦がす。君が祈りを唱えるとき、必ずや頭上に小さな銀の炎が現れ、君が奉ずる大義の聖性と教会内における君の地位の高さを明らかにする。
カメレオン
Chameleon/模倣の天才
「なんでもぶち壊せばいいってわけじゃないのよ……」
チェンジリングである君は、自分の目的に合わせて外見と素性をさまざまに変える。同時にカメレオンとして、君は“多芸多才”という概念を新たな次元に引きあげる。君は周囲の人々を注意深く観察することによって彼らの癖やふるまいを自分のものにする。また、姿形を変えるだけでなく、能力まで変化させることで、驚くべき融通性を実現する。誰かといっしょにいる時間が長ければ長いほど、君はその人物の行動や能力を正確に模倣できるようになる。
クロックワーク・エンジニア
Clockwork Engineer/からくり人形師
「仲間なら自分でこしらえる。まあ、こいつはオレの趣味みたいなもんだ」
最終戦争のさなか、アーティフィサーが作成する細工物は驚くべき発達を遂げた。ウォーフォージドの創造と戦争兵器の洗練を通じ、アーティフィサーは魔法とテクノロジーの融合について、より深く理解することができたからである。アーティフィサーの大半が魔法の従僕をつくりだす技術を磨くが、クロックワーク・エンジニアはその技術を芸術の域にまで高める。
クロックワーク・エンジニアである君は、無機物からまがいものの生命をつくりだす名人である。適当な材料からものの数分で自動人形をこしらえるなど、君にとって造作もないことだ。君の作成する装置は、普通のアーティフィサーがつくるものに比べて頑丈で長持ちするうえ、性能も高い。
君は仲間を援ける従僕や細工物もつくるが、冒険の仲間に対するのと同じくらい、自動人形に対して親近感を抱く。君は自分の創造物を可愛がり、それらが損傷すれば嘆き悲しむのはもちろん、破壊でもされようものなら復讐を誓うほどに深い愛着を持つ。
戦いの場以外でも、君は無害な機械仕掛けの創造物を取り巻きに従えている。それらは姦しくさえずり、君の近くをうろちょろし、決して離れようとしない。多くは君の助手でもあり、それらが持つ器用に動く付属肢の助けを借りることで、君は新しい従僕をより手早くこしらえることができる。
ゲートキーパー・ミスタゴーグ
Gatekeeper Mystagogue/“門を護る者”の秘儀伝授者
「やつらは以前オレたちの世界を侵した。だがこのオレが生きているかぎり、二度と同じことはさせない」
今から1万6千年以上前、ドルイドの宗派“門を護る者”が結成された。彼らはしだいに大きくなりつつある邪悪な勢力―カイバーの奥底に巣食う異形の者ども―から世界を守るという、喫緊の使命を負っていた。彼らの働きによって1度は撃退されたものの、こうしたクリーチャーは滅んだわけではなく、現実と非現実を隔てる境界を通り抜けて定命の世界を征服する機を、依然としてうかがっている。“門を護る者”が門番としての使命を果たせなかったことは、後にも先にも1度きりしかない。今からおよそ9,000年前、“狂気の領域” ゾリアットからやってきたデルキールの侵攻を許したときである。しかし、“門を護る者”はわずかに生き残ったメンバーで懸命に闘い、なんとかデルキールを大いなる封印の向こうに閉じ込めることに成功した。以来、彼らは先人たちの誓いに思いを馳せ、こんにちに至るも自分たちの使命を果たすべく、不断の警戒に努めている。
“門を護る者”の秘儀伝授者である君は、先人たちが築いた封印を護持し、異形の脅威を封じ込めることに日々努めている。デルキールとその眷属たちが絶えず封印を破ろうとしている今、君は世界を飛びまわって使命を果たさなければならない。彼らに立ち向かうため、君は古来のテクニック―彼らが持つ種々の能力に負けないよう精神を鍛えるすべや、彼らの及ぼす恐るべき影響と闘うためのノウハウ―を学んできたのである。
セルフフォージド
Self-Forged/自己鍛造者
「わしは必要なやりかたで自分の体を改良することができるのじゃ」
ウォーフォージドは興味深い種族である。いっぽうの極に彼らを所有物とみなす考えがあり、もういっぽうの極には彼らを市民として認めるという姿勢があり、人々はその両極のあいだを揺れ動いている。大方の人々の態度は、ウォーフォージドを目の敵にするか、信用しないか、あるいは受け入れるかのいずれかに分類される。しかし、君の見かたは違う。君は自分自身がウォーフォージドになりたいと思っているのである。最終戦争のさなか、ウォーフォージドの製造炉で働いていた名工たちの一部に、ウォーフォージドこそは「完全無欠」という言葉を体現する存在だという確信が生まれた。そういう確信に取り憑かれた名工たちはいま、かつての雇い主に背を向け、おのれの肉体に機械のパーツを埋め込むことで、少しでも「完全無欠」に近づこうとしている。
セルフフォージドになるための第一歩はバトルフィストを取り付けることだ。これは関節で区切られた指をそなえた篭手に似た鋼鉄製の付属肢で、機械で動く。バトルフィストはもともとの手に取って代わるものなので、それを新たに取り付けるためには本来の付属肢を切断しなければならない。結果として、セルフフォージドの道に歩み出すのはよほど熱心なアーティフィサーか、または正気を失ったアーティフィサーに限られる。
バトル・エンジニア
Battle Engineer/戦う技工
「工房? 私にそんなものは必要ない。私の仕事場は戦場だからな」
最終戦争のさなか、アーティフィサーといえばそのほとんどが兵站か技術分野の支援にまわった。しかし、なかには工房にこもって過ごすような生活を拒む者も、わずかながらいたのである。こうしたアーティフィサーこそがバトル・エンジニアであり、彼らは自分たちの技能を戦いに持ち込んだ。最終戦争を戦った各国の軍隊において、バトル・エンジニアは欠かせない追加戦力として重宝された。こんにちでも、彼らの衣鉢を継ぐ者たちは、戦いの場面で心強い味方となるだろう。
ライトウォーカー
Lightwalker/光の道を歩む者
「わたしたちは光のなかを歩んでいる。でも、目の前に闇しかないとき、わたしたち自身が光を携えていかなければならないわ」
“光の道”を信奉し、世界をさすらいながら聖戦を戦う戦士であるライトウォーカーは、カラシュターのコミュニティを渡り歩き、行く先々で同胞が直面している争いごとや危機を解決する手助けをしている。ライトウォーカーの1人である君もまた、ある月にはシャーンでドリーミング・ダークの引き起こした種々の問題に対処したかと思うと、翌月にはクバーラに飛び、古い階段式ピラミッドの内部を探索するカラシュターの考古学者たちを護衛する任務に就いているかもしれない。カラシュターの多くは一つ所にとどまり、外界から隔絶されたコミュニティやアダールの要塞寺院にこもって暮らすことに満足している。しかし、それは君の生きかたではない。ドリーミング・ダークを叩くのに貢献するなり、ロード・オヴ・ダストの殲滅を試みるなり、カラシュターのコミュニティに平和をもたらすなり、ともかく積極的に闇と戦うのでなければ満足できない性分だからだ。ライトウォーカーとして、君は清浄と正義の光を享受しながら、そのいっぽうで、世界にはびこるあからさまな悪と対決する必要性もきちんと認識しているのである。
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ドラゴンマークの“伝説の道”
ここで紹介する13の“伝説の道”は、各々13あるドラゴンマーク氏族のうちの1つに結びついている。それぞれの“道” は1つのドラゴンマークを前提条件に持つ。ドラゴンマーク特技については、第4章の「特技」のセクションで解説する。
ヴァダリス・グリフィンマスター
Vadalis Griffonmaster/ヴァダリス氏族のグリフィン使い
「友よ、空を見あげなさい。わたしならきっとそこにいるでしょう」
最終戦争末期、ヴァダリス氏族はグリフィン乗りの育成に乗り出した。すなわち、飼いならしたグリフィンにまたがって敵と戦う兵士たちである。グリフィン使いである君は、これらグリフィンとその乗り手たちを訓練するのに一役買ったというだけでなく、ドラゴンマークの力を利用できる強みを生かして自分自身が卓越したグリフィン乗りになった。グリフィンの背中ほど、君にとって落ち着ける場所はない。
オリエン・スウィフトブレード
Orien Swiftblade/オリエン氏族の速太刀
「俺の太刀筋を見てるのか? それとも足さばきを見てるのか? 俺の動きについてこようと思ったら、両方から目を離さないことだ」
速太刀(スィフトブレード)はオリエン氏族でも屈指の武芸者と目される者たちであり、比類のない剣技の持ち主ばかりがそろっている。剣の一閃で世界と世界の狭間に道を切り開く彼らの能力は、この氏族が受け継ぐ移動のマークの賜物と言える。オリエン・スウィフトブレードである君は、世界の布地を切り裂いてそこを通り抜け、戦場の反対側に姿を現すことができる。スウィフトブレード同士で練習試合をするときは、互いに瞬間移動を駆使するため、戦いの舞台はおのずから地域と地域、あるいは都市と都市にまたがるものになる。
武器と言葉でもって氏族の利益を守ること―それがオリエン・スウィフトブレードに与えられた使命だ。オリエン氏族は交渉の全権大使として、あるいは大陸全土に張りめぐらせた交通網に障害が生じたときの調査役として、この武芸者たちを派遣する。物腰が洗練されているため、オリエン氏族に仇なす敵からはむしろ見くびられることの多い彼らだが、オリエン・スウィフトブレードの怒りを買った者は、彼らがたんなる腕自慢の武芸者ではないことを早々と思い知らされることだろう。
カニス・マスターメイカー
Cannith Mastermaker/カニス氏族の名工
「ある種のアイテムには潜在的な力が宿っているのだけれど、わたしは常にそういう力の存在に気づくのよ。もちろん、アイテムがいったんわたしの手に落ちれば、隠れた力がじきに顕わになることは言うまでもないわ」
カニス氏族の名工は、ドラゴンマーク13氏族が擁する呪文使いのなかで最も力のある使い手である。この氏族のメンバーにはアーティフィサーとウィザードがそれこそ腐るほどいるが、カニス・マスターメイカーである君は、この氏族が誇る堂々たる魔法の伝統の一翼を担う。君は魔法のアイテムに宿る隠れた力を巧みに引き出し、その力を尋常ならざる用途に使うことができるのだ。しかしそのいっぽうで、君の体には長いあいだレシデュウム(魔力抽出物)やその他の構成要素を扱ってきたことの、隠しようもない印が刻まれている。すなわち、両手に幾筋も走る、永久に消えることのない銀色の線条である。これは、ほとんどのカニス・マスターメイカーに共通する特徴と言える。
ガランダ・サンクチュアリ・ガーディアン
Ghallanda Sanctuary Guardian/ガランダ氏族の聖域守護者
「引き下がるなら今のうちよ。でもわたしには、あなたたちがそうしなければいいと思う気持ちもどこかにあるわ」
サンクチュアリ・ガーディアンである君は、ガランダ氏族のいわば槍の穂先である。ゲストに安全な避難場所を提供すべしという氏族の意志が確実に実現されるよう努めるのが君の役割だ。ガランダ氏族は世界中にエンクレーヴをかまえているが、それらは仕事熱心な地方当局や人さらい、凶暴なモンスターといったさまざまな危険に取り囲まれている。君はそうした脅威に対処するための訓練を積んできた。君はドラゴンマークが付与する諸種のパワーを通じて戦闘のお膳立てをし、自分の味方が確実に優位に立てる状況を整える。味方に戦いを継続させ、敵に悪戦苦闘を強いるのに、君の持つパワーが役立ってくれるだろう。君や君の仲間に挑戦する者たちはすぐに学ぶはずだ―ガランダ氏族が優れているのは、なにも快適さと利便性の提供だけではないということに。
クンダラク・ゴラディン
Kundarak Ghorad’din/クンダラク氏族のゴラディン
「厳密に言えばだな、コソ泥を捕まえるのにコソ泥は要らないかもしれん。だが、われわれは敵が考えたり鍛えたりするのと同じように考えたり鍛えたりしようとしているのだ」
君は一風変わった盗賊集団に属している。それはクンダラク氏族のゴラディンという集団で、氏族の警備態勢をテストし、また、クンダラク氏族の宝物庫に押し入るほど図々しい輩に盗まれた金品を取り戻すのが仕事だ。君は呪文使いの魔法力と夜盗の隠密術を併せ持つ。結果、どんな障壁も君の侵入を阻むことはできない。
クンダラク氏族がゴラディンを使うことは滅多にない。また、ゴラディンはクンダラク氏族の長であるモーリカン卿に直属する。新たにつくった高セキュリティの金庫をテストする必要にせまられたとき、クンダラク氏族はゴラディン数名からなる特別チームを編成して金庫への侵入を試みさせ、セキュリティ上の弱点をあぶり出す。そうやって見つけた弱点をすべてつぶしてからでなければ、その金庫が使われることはない。こうしたテストに参加するだけでもゴラディンとしての技は磨かれるのだが、君にしてみればいささか物足りないかもしれない。そういう練達のゴラディンには、自分たちに勝るとも劣らない優れた盗賊から、盗まれた物品を奪還する仕事が任される。また、噂では暗殺者として作戦活動に従事するゴラディンもいるという。
シヴィス・トゥルーネイマー
Sivis Truenamer/シヴィス氏族の真言修得者
「われ汝をザウクララゼム‐ショロウディと呼ぶ。われマハナプリル‐カタルナアをもって汝を非難する。汝、この言葉を肝に銘じるべし。クォーラン―クォータリヴォレシャザイウー!」
刻印のマークを身に帯びる者として、君は超自然的なまでに優れた語学の才を有する。君は自分の技能を総動員し、“真言” ―ほかのあらゆる言語を生み出した母体言語―が持つ微妙なイントネーションと正確なリズムをマスターすることに努めた。その甲斐あって、語彙こそ限られているものの、君が発する真言には強力な魔法の力が宿っている。その力が君の敵を混乱に陥れ、隷属させ、あるいはせまりくる暴徒を立ちどまらせるのである。
ジョラスコ・ジェイドハンド
Jorasco Jadehand/ジョラスコ氏族の翡翠の手
「ボクにとって敵というのは傷口にできる壊疽みたいなものさ。傷を治そうと思ったら方法はただ1つ―その壊疽を切るしかないんだ」
ジョラスコ氏族はエベロンが最終戦争で負った傷を癒すのに手を貸すべきだ―特使サヘミがそう主張したとき、君は真摯に耳を傾けた。氏族のなかでは反発の声が大勢を占めたが、それでもサヘミは譲らなかった。われわれのドラゴンマークが、大地を癒す手伝いに努めよと命じているのだ、と。サヘミの唱導する活動の支持者として、君はみずからを翡翠の手と呼ぶ。これは特使サヘミに倣って、翡翠の腕輪を身に着けているからだ。ドルイドの伝統を尊ぶ君の二大関心事は、神界からの脅威を食い止めることと、モーンランドのような傷ついた大地を癒すことである。何をもって“治癒”と呼ぶかについては常識にとらわれない柔軟な考えを持っているので、人々や大地を癒すために、君は自分の技能を惜しみなく用いる。君にとって、邪教集団の存在をあばいたり辺境に跋扈する山賊を討伐したりするのは、普通より大きめの傷に切開手術をほどこすのとなんら変わらない。
タラシュク・ウェイファインダー
Tharashk Wayfinder/タラシュク氏族の“道を見出す者”
「オレの追跡を逃れる方法は1つしかない。それは死ぬことだ」
タラシュク氏族のレンジャーがしばしば鞍替えするウェイファインダーは、氏族の抱えるさまざまな懸案を解決する手助けをしながら世界中を旅してまわる、万能の案内人である。彼らは斥候であり、賞金稼ぎであり、調査員でもある。ウェイファインダーである君は、1つの季節のうちに、ドラゴンシャードの採掘人を案内して危険な荒野を旅し、亡命者を捕え、シャーンの貧民窟に毒物を密輸入しているのは誰かを暴き出し、その途次、ダンジョンの1つか2つを探索することさえあるかもしれない。君が身に帯びるドラゴンマークは、白兵戦であろうと弓の撃ち合いであろうと、とにかく君が行なう攻撃を導いてくれる。いったん獲物をこれと定めたら、君の追跡にはいっさいの妥協がない。君に追われる者は、ウェイファインダーから逃れるすべなど存在しないことを思い知るだろう。逃げたところで、それは避けようのない運命をほんの少し先延ばしにしているだけにすぎないのだ、と。
チュラーニ・シャドウ・キラー
Thuranni Shadow Killer/チュラーニ氏族の“影の刺客”
「わが武器のたてる音といえば、絶命した骸が倒れて床を打つ音のみ」
君はチュラーニ氏族が誇る最凶の暗殺者たちの1人である。フィアラン氏族は言うまでもなく、君を雇えるだけの財力がある敵を持つ者たちにとって、君は災い以外の何ものでもない。君は音もなく標的の息の根をとめることができるうえ、敵の本拠地に潜入する技にも熟達している。無慈悲な手際の良さでもって標的を始末し、かすり傷一つ負わずにチュラーニ氏族の拠点に帰還を果たす。そんなチュラーニ・シャドウ・キラーも、そうした殺しが自分たちの仕業だと大方のコーヴェア人に気づかれないよう、細心の注意を払う。
デニス・プロテクター
Deneith Protector/デニス氏族の警護士
「俺がついているからといって何も起こらないとは保証できないが、俺がついていれば何が起きても無事に切り抜けられることだけは受け合おう」
デニス氏族の警護士は守護兵ギルド―この氏族が擁する雇われ用心棒の組織で、歴戦のつわものぞろい―のなかでもとりわけ名高い存在である。警護士である君は武芸、それにドラゴンマークが付与する超自然的な諸種の力を駆使して保護対象の身柄を守る。同僚の大半は守護兵ギルドのメンバーだが、君は剣術ギルド(コーヴェア全土でさまざまなサービスを提供している傭兵組織)および国境執行団(法と秩序の徹底に努める集団)にも協力することがあるはずだ。自分以外の誰かを守る君の技能は日々の訓練で磨き抜かれ、また、保護対象に危害を加えようとする敵を倒すことに、君はえもいわれぬ喜びを見出す。愚かにも君の保護対象を襲う者がいるとすれば、その無謀なくわだてに、君は武器の一撃をもって速やかに報いるだろう。
フィアラン・ファンタズミスト
Phiarlan Phantasmist/フィアランの幻魔術師
「悪いことは言わないから武器を収めなさいな。あなたたちの前にわたしと戦った相手はさぞや身にしみたでしょうけれど、恐怖に駆られて恥も外聞もなく逃げ出すのは、状況を賢く判断して降伏するよりもずっと危険なものなのよ」
フィアラン氏族の芸人と職人はさまざまな手段や技術を駆使して自分の技芸を披露し、敵の注意を逸らす。この氏族のメンバーで幻術の素質を見せた者は、幻魔術師として訓練されるケースが少なくない。ファンタズミストたる君は、回避と欺瞞の術に優れる。いかにして敵の悪夢を現実のものにするか―それこそ君が訓練を通じて身につけたことだ。影に身を包み、まやかしの姿で敵を欺く。その技を極めたとき、君は幻影をまぎれもない現実―それも危険きわまりない現実―に変える力さえ手に入れることだろう。
メダーニ・トゥルーシーア
Medani Trueseer/メダーニ氏族の見者
「おまえがああするだろうことはわかっておったぞ。おまえが今からそのツケを払うということもな」
メンバーの五感と精神を鍛えるメダーニ氏族の能力は、すでにして伝説的である。君の場合、厳しい訓練とドラゴンマークの持つ力とが相俟って、予知能力と観察力が超自然的なレベルにまで引き上げられている。君は見えない敵をいとも簡単に暴き出し、動きを予測することで敵の足を掬うことができる。メダーニ・トゥルーシーアである君は、ほかの誰よりも一歩先を読むことに優れている。君を出し抜いたと思っている敵さえ、君を利するための罠にいつのまにか嵌まっていることに気づくだろう。
リランダー・ウィンドライダー
Lyrandar Wind-Rider/リランダー氏族の風乗り
「あたしと戦うなんて風を撃とうとするのと同じくらい骨折り損よ。それでも戦うっていうなら、あんたは馬鹿にしか見えないでしょうね」
君は地上にいるよりもリランダー氏族の飛空艇に乗っているときのほうが生き生きしている。ドラゴンマークの力を通じて、君は風と天候を自在にあやつることができる。そよ風に乗って空高く舞いあがることなど君にとって造作もないことだが、風はたんにいつもそばにいる仲間というだけではなく、君の武器庫に並んでいる武器の1つでもある。ドラゴンマークの助けを借りることで、君はにわかに旋風を巻き起こし、敵を吹き飛ばすことができる。それどころか、力量しだいでは、竜巻を呼び起こして敵陣を突っ切らせることさえ不可能ではない。君をあなどり軽んじる者は、嵐の怒りに触れるだろう。
神話の運命
21レベルに到達した時点で、君は“神話の運命”を選択することができる。その際、ほかで紹介されているものではなく、以下に詳述するエベロン特有の“神話の運命” から1つを選ぶことが可能だ。これらはどれもエベロンというキャンペーン世界に根ざした“神話の運命”ながら、DMの許可さえあれば、どのキャンペーン世界のキャラクターに適用しても差し支えない。
サブライム・フレイム
Sublime Flame/荘厳なる炎
君はシルヴァー・フレイムとの合一を果たす。
その濫觴からしてすでに、シルヴァー・フレイムがこの世界で追及する目的は明確であった。しだいに広がりつつある闇に敢然と立ち向かい、悪の尖兵を探し出して滅ぼし、純潔と光明を旗印に掲げる―それがシルヴァー・フレイム信仰を生んだ誓いである。大勢がこの大義のもとに集まったが、それまで自分の魂を曇らせていた暗黒が浄化の炎で焼き払われるのを感じ、これ以上ないほど明快なヴィジョンを受け取ったのは、選ばれた少数の者たちだけだった。このことからもわかるように、シルヴァー・フレイムの器はみずからなるものではなく、シルヴァー・フレイムによって選ばれるものなのである。
サブライム・フレイムである君の信仰心は揺るぎなく、シルヴァー・フレイム教会開基の礎となった根本教義を守ることに一身を捧げている。君は教会に衷心から仕えるかもしれないし、あるいはシルヴァー・フレイムと直接交信するかもしれない。いずれにせよ、ひたむきな献身によって、君はこの世界におけるみずからの役割をより深く理解するのである。
不滅性
サブライム・フレイムである君は、目の前に現れる者たちの力を流用するすることができる。最終的にはこの力に導かれてシルヴァー・フレイムと融合し、その神聖なる意思の一部として不滅性を獲得するだろう。
“炎”との合一:君はシルヴァー・フレイムの名のもとに腐敗や邪悪と戦うことに半生を費やしてきた。目的意識の目覚めも経験している。また、最後の敵と対峙するうちに、わずかに残っていた懐疑のかけらも燃え尽きた。究極の勝利を手にした君は、何かに引き寄せられるように今一度スレインに向かう。いわば、最後の巡礼である。郊外を抜け、首都フレイムキープにたどりついた君は、シルヴァー・フレイム大聖堂を訪う。そこで、君は炎のなかに歩み入り、生まれ変わりを経験する。銀色の炎が君の肉体を焼き尽くし、君の精神と魂魄をシルヴァー・フレイムに融合させるのである。君は永遠に燃えさかる炎の一部と化し、自分の力、知識、信仰心をその聖なる目的に捧げる。地上の楽園を築くという大願の成就を目指す後進たちに、君はシルヴァー・フレイムの一部として力を与えるのである。
チャンピオン・オヴ・プロフェシー
Champion of Prophecy/予言の戦士
何ものも君をとめることはできない。君はそういう星のもとに生れついているのである。
まだ年端もいかないころから、君は自分を特別な存在だと感じていた。成長とともに見聞を広めた君は、やがて“竜の予言”なるものを知り、自分がそのなかで特定の役割を果たす運命にあるということを学んでゆく。そう、自分が特別な存在だという感覚は、“予言”との結びつきに由来するものだったのである。
君はすでに、“予言”に果たすみずからの役割を示す明白かつ具体的な示唆をいくつも見つけている。“予言”の提示は曖昧なものかもしれないし(人生の節目ふしめに囁き声が聞こえ、予言的な導きを与える)、反対にあからさまなものかもしれない(“予言”に関わる古文書に、はっきりと君のことが記されている)。あるいはドラゴンたちがじきじきにやってきて、“予言”に果たすべき君の役割を告げることさえあるかもしれない。
どのような経緯でみずからの宿命を知ったにせよ、君はそれを受け入れた。君は今後直面しなければならない幾多の試練に備えて訓練を積んできたのであり、君の行く手をさえぎる者には必ずや災いが降りかかるだろう。君は運命の申し子であり、予言の代理人である。君をとめようと思ったら、それこそ時をとめるしか方法はない。
不滅性
君が不滅性へと至る道は、単一の経験というよりは、さまざまな経験の集合として用意されている。
予言の申し子:“竜の予言” に縛られた君は、未来と過去の双方向にのびる物語の軸となる役割を演じる。“予言”を学ぶ者は誰しも君の名を知るのであり、君は未来のチャンピオン・オヴ・プロフェシーを奮い立たせ、彼らの行動に影響を与えるのである。君は“竜の予言”に示される種々の出来事の発生をうながす。そしてついに“予言”が成就されたとき、君はその紛れもない一部となっていることだろう。
ディスポゼスト・チャンピオン
Dispossesed Champion/寄る辺なき人々の闘士
打ちひしがれ離散した人々を、君は繁栄の新時代へと導くのだ。
最終戦争はいくつもの深い傷を残した。都市という都市、国という国が、あの忌まわしい戦争による惨禍からいまだ立ち直れずにいる。コーヴェアの大地と民には、戦争によって強いられた苦難の痕がまざまざと見える。今なお流浪の境涯に甘んじ、寄る辺や生き甲斐を探している人々は数知れない。彼らを新たな故郷に導き、争いや苦しみのない未来へいざなうこと―それが“予言” に選ばれた君の使命である。世界は彼らのことを忘れて顧みようとしない。そういう酷薄な世界から彼らを守って戦う闘士の一人に、君は選ばれたのである。
君はキャリアの初期の段階で、運命の思惑に気づいたかもしれない。あるいは、もっと遅くなってから使命を自覚したという可能性もある。互いに無関係な事件や経験に導かれるようにして、君は特定の人々との絆を深めてきたのだが、ディスポゼスト・チャンピオンになることはその集大成と言えるかもしれない。寄る辺のない人々のために戦う闘士となった今、君は持ち前のリーダーシップを発揮して彼らに希望を与えようとしている。
不滅性
死後も長らく、君の名は英雄的行為や希望の象徴として、君が代表して戦った人々の心のなかに生き続けるだろう。ディスポゼスト・チャンピオンという“神話の運命”を選択した時点で、君はサイアリ人、シフター、フィアラン氏族、ウォーフォージド、ティーフリングその他、見捨てられた人々や打ちひしがれた人々の集団のなかから1つを選ばなければならない。もっとも、君自身がそのグループの一員である必要はない。神話級のキャラクターとしてキャンペーンを進めるなかで、彼らを助けたり、世界における彼らの存在感を強めたりする機会を探すとよいだろう。
予言の英雄:いつか1人の英雄が現れて自分たちを忘却の底から導き出してくれる―君が選んだ人々は長らくそう信じてきた。“竜の予言”の断章や、神秘主義者たちが見る幻影の数々に、君の登場が予見されていたのだ。彼らの闘士として戦う運命を受け入れた瞬間から、君の使命と目的は明確になり、それ以後の君はありとあらゆる機会を見つけて彼らを助けてきた。そうした君の努力は、彼らに仇なす宿敵と戦う最終決戦でクライマックスを迎える。その敵を倒すことで、君が長らく追い求めてきた救済を達成することができるのだ。君は彼らの王や女王に祭りあげられるかもしれないし、あるいはたんに救世主として人々の記憶に刻まれ語り継がれるのかもしれない。いずれにせよ、君のくぐり抜けた数多の試練は向こう何千年というもの物語や詩歌の題材として繰り返し取りあげられるはずだ。やがて君は人々の記憶のなかで、たんなる定命の存在以上の何かになる。彼らにとっての君は、希望と明るい前途を象徴する存在として永遠に生き続けるだろう。
モーニング・セイヴィア
Mourning Savior/悲嘆の救世主
サイアリの完全な復興以外に君を満足させるものはない。
最終戦争も終局を迎えるころ、予言者と占い師はこぞって破滅の到来を警告していた。彼らが口々に語ったのは、コーヴェアの地表の様相を一変させ、大地に破滅と死をもたらすような大事変のことであった。こうした警告は悲嘆の日(デイ・オヴ・モーニング)の訪れによって現実のものとなり、今や彼らの予言が正しかったことを否定できる者はいない。ところで、サイアリ滅亡を生き延びた人々の一部は、デイ・オヴ・モーニングを予言したその同じ神秘主義者たちが、ある種の救いについても語っていたことを憶えている。いずれ、サイアリを見舞った悲劇をなかったことにする人物が現れるというのである。予言者たちによれば、その人物は大地を癒し、同じような災厄が世界を破滅させるのを防ぐのだという。じつは君こそが、予言に示された悲嘆の救世主にほかならない。“竜の予言”によって選ばれた君の使命は、モーンランドから生じる脅威に敢然と立ち向かい、かつてのサイアリを覆う汚染がコーヴェア全土に広まるのを阻止することだ。
不滅性
モーニング・セイヴィアである君には、途方もない使命が与えられている。大地に健やかさと活力を取り戻すこと。また、奇怪な汚染がこれ以上拡大するのを防ぐこと。この2つが、君に背負わされた責務である。
悲嘆の克服:最後のクエストを完遂し、モーンランドの秘密を解き明かしたとき、君は大地をむしばむ汚染を取り除くには何をしなければならないか悟る。サイアリを穢している悪の源を封印するには、自分の身を犠牲にするしかないのである。この過酷な使命と折り合いをつけると、君はモーンランドに歩み入り、霧のなかに姿を消す。
その後しばらくは、なんの変化もない。ところが季節の移ろいとともに、サイアリを覆っていた陰翳がしだいに晴れてゆく。と同時に、それまで荒涼たる風景のなかを徘徊していたおぞましい怪物たちが互いに牙を剥き、血みどろの争いを始める。こうした変容がすっかり終わったとき、かつて一国を地上から消し去った魔法的な現象の名残はいっさいなくなっている。辺縁にはまだその爪痕がぽつりぽつりと見受けられるものの、それらはサイアリ難民を意気消沈させるよりもむしろ励ますのである。失われたものを再建し、故郷に昔日の栄光を取り戻そう―そう彼らは決意を固める。君の英名が広く顕彰されることはないかもしれない。しかし、君の自己犠牲によって悲嘆が克服され、サイアリに再び生命の咲き誇る土壌が生まれたことは間違いない。