姉妹鍋

カチン。

店の人が火をつけた。

中には親指実装と蛆実装が2匹ずつ。

「ニンゲンさんがお風呂に入れてくれたレチ。うじちゃんキレイキレイするレチ~」

「オフロきもちいいレフ~」

「オトウフおいちいレフ~」

「ニンゲンさん、このお豆腐食べてもいいんレチ?うじちゃんちょっと食べちゃったレチ」

お湯の温度があがってくる。

「ちょっとお風呂アツイかもレチ~ニンゲンさん、もう火を止めていいレチ~」

しかしニンゲンさんは何も言わず見ているだけ。

「と、とにかくウジチャンたちをお豆腐の上に乗っけるレチ、お豆腐の上は熱くないレチ」

「レチャァァ!のぼれないレチィィィ!」

次女が豆腐の上に登ろうとして豆腐をかなり崩してしまう。

「このお豆腐は柔らか過ぎレチ、次女ちゃんワタチタチが登ったら崩れてウジチャンお湯に落ちちゃうレチ、お豆腐にくっつくだけで我慢レチ」

「ニンゲンさん、火を止めてくださいレチー」

お湯の温度はどんどんあがる。

「ニンゲンさん、早く火を止めてレチ~!底とかもうありえない熱さなんレチ~!!」

「あちゅいレフあちゅいレフゥゥ~!おトウフのなかはあんまりアチュくないレフ~もぐるレフ~」

「お豆腐も熱くなってきたレチ~このお風呂どうなってるんレチ~もうダメレチ~」

「レフ?すすめないレフ~おトウフのなかにチュメタくてカタイものがあるレフ~?」

「ツメたくてカタイものレチ!?」

「!次女ちゃん!お豆腐を壊して中のものを出すレチ!いそぐレチ!」

壊した豆腐からは氷漬けの葉が出てきた。その氷のカタマリがお湯に浮かぶ。

そうしているうちにもお湯の温度は容赦なく上がってゆく。

「は…早くウジちゃんたちを氷の上に乗っけるレチ!ウジちゃんがこの熱いお湯に落ちたら死んじゃうレチ!」

ダシ入りの湯が煮詰まり始める。

氷のカタマリなどすぐに溶けてしまった。

「まだこのハッパはちょっと冷たいレチ!これにうじちゃんたちのっけるレチ!次女ちゃんそっち持つレチ!」

「おねちゃワタチ…アンヨがもう何も感じないんレチィ…」

「ニンゲンさんなんで見てるだけなんレチ!どうして助けてくれないんレチィ!せめてウジちゃんたちだけでも助けてレチィィィィィィィィィ!」

更にダシツユが煮詰まる。

「アワが…あっついアワアワがどんどん上がってくるレチィ!うじちゃんがこのアワアワに当たったら絶対死んじゃうレチィ!」

「おねちゃ…ワタチもうダメレチ…ワタチを台に…可愛いうじちゃん…守って…あげてレチ…」

「レェェェェン!次女ちゃぁぁぁん!」

煮立つダシの中に倒れた次女を踏み台に長女が立つ。

「ニンゲンさんお願いレチー!うじちゃんとってもイイコなんレチィー!助けてあげてレチィィィィィィ!!」

ダシツユが完全に煮詰まって実装姉妹が鍋いっぱいの泡で見えなくなって数分。

カチン。

店の人がコンロの火が消すと泡が引き中が見えてくる。

「これはこれは…」

店の人の声色にちょっとした驚きが現われている。

「大納言が出来てますわ。センセ、凄い運の持ち主やわ」

実装姉妹鍋。それは料理の仕上がりを具材自らが決める料理。

遠い昔の吉凶占いがルーツとされ、今でも料理であると同時に運試しでもある。

出来上がりの型を表す言葉の一つ、”大納言”はさしずめ超特大の茶柱。

「当選間違いナシじゃな、グワッハッハッハ」

センセと呼ばれた”ニンゲンさん”は扇子をあおぎながら満足げに笑った。

<おしまい>

引用元:実装石虐待保管庫