スマートフォンにおける発熱のメカニズムを簡単に紹介した。最後になるが、スマートフォン側の発熱を抑えるための機構を見ていこう。
スマートフォンで熱設計が本格的に必要となってきたのは2011年ごろからだ。SoCの集積密度が上がり、マルチコアプロセッサなども現れて、従来の冷却設計では満足に動かせなくなっていたのだ。
この頃の端末にはヒートスプレッダーが当たり前に搭載されるようになり、熱設計を考慮した端末や基板の設計が積極的に取り入れられた。熱流体シミュレーションを入念に行ったという旨の開発者インタビューも出てきている。
2016年ごろにはプロセッサの基本性能も向上してきた。これに合わせてヒートパイプや銅製ブロックといったより高性能な冷却機構を搭載したスマートフォンも現れ、本体を金属にして効率よく熱を逃がしたり、グラファイト放熱シートを採用したりするなど、各社からさまざまな対策が見られた。
現在では液冷ヒートパイプの弱点を改良した「ベイパーチャンバー」がハイエンド端末の冷却機構としては一般的となっている。
従来の銅ブロックよりも熱伝導率が高く、薄型軽量で折り曲げ可能などの加工性にも優れている。加えて、ヒートパイプと異なり、熱源の位置によって熱輸送効率が左右されないといった利点も備える。本体サイズに制約のあるスマートフォンにはうってつけの冷却機構だ。
ヒートパイプやベイパーチャンバーの大枠の仕組みは同じだ。冷却液を用いて熱を与えると蒸発し気化する。これが冷やされて液化し、機構内を対流することで効率よく冷却しようというものだ。一種の水冷設備と思っていい。
近年ではこの冷却機構の容積や基本的な性能などが注目されるようになっている。ただ高性能なプロセッサを搭載するのでなく、適切な放熱設計を行って安定してパフォーマンスを維持できるものが求められているのだ。
今回はスマートフォンの発熱のメカニズムと冷却性能について考えてみた。今後はスマートフォンを選ぶにあたって、単に性能だけではなく、縁の下の力持ちともいえる冷却機構についても考えてみると新たな発見があるはずだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.