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今月7日にガザ危機が勃発して以来、中国では露骨な反ユダヤ主義(アンチ・セミティズム)がインフルエンサーらによりインターネットで拡大している。検閲など当局の厳重な管理下にある中国のネットで、そのような活動が黙認されていることは、中国政府の姿勢を反映していると英紙デイリー・テレグラフは指摘。同国がイスラエルを敵に回してもイスラム諸国を支援するには明確な理由があった。
中国がイスラム側に立つ、もう一つの理由は単純だ。「それは算数だ」とイスラエル国家安全保障研究所の中国担当・トゥヴィア・ゲーリング研究員は指摘する。
「小さなイスラエルは一つで、支援する国も一つだけ。それは米国」とし、その一方で「イスラム協力機構(OIC)の加盟国は57あり、これは国連総会で多くの票を意味する」と説明。OIC加盟国の多くは、「イスラエルは植民地主義の前哨基地であり、戦争を扇動し、中東での覇権を永続させるために西側によって建国された」との見解を持ち、中国はその考えを共有していると述べた。
OICは1969年に発足し、71年に正式な国際機構として設立。イスラム諸国の政治的協力、連帯を強化すること、イスラム諸国に対する抑圧に反対し、解放運動を支援することを目的とする。
中国国営メディアはこの見解を強調して報じ、イスラエルとパレスチナの紛争を中国と米国の広範な対立の構図として位置付けている。その主張は、米国が「ユダヤに支配され、世界に混乱をもたらしている」というものだ。
中国の反西感情は、中国政府が「屈辱の世紀」と呼ぶ時代、つまり中国が英国を含む西洋列強に支配された1839年から1940年代にまで遡る。ゲーリング氏によると、中国政府の解釈では、当時糸を引いていたのは「カーテンの後ろの黒い手…ユダヤ人だった」というのだ。
それでも中国政府は、反ユダヤ主義と名指しで非難されることに対し、「ナチスに追われた何千人ものユダヤ人はビザなしで上海への入国が許可され、ホロコーストを逃れた」という事実を強調して反論する。だが同紙は、中国政府=中国共産党が政権を取ったのは戦後の1949年で、ユダヤ人受け入れとは無関係だと指摘する。
中国政府はユダヤ教を宗教として認めていない。河南省東部・開封市には、1000年以上前に黄河沿いに定住したユダヤ人たちの子孫が住む小さな村落がある。ユダヤ人の血を引くとされる住民約1000人のうち、信仰を実践しているのはわずか100人程度。しかも、中国政府による広範な宗教弾圧から逃れるため、〝隠れユダヤ〟として暮らしている。
反米国感情と混ざり合った反ユダヤ主義が現在の中国でまん延しているが、パレスチナ問題に関する当局の執拗なプロパガンダを誰もが受け入れるわけではない。
中国北部のある大学生は同紙に、「この紛争は深刻な人道的大惨事だと思う」と語った。続けて、「中国国営メディアは正義や人権について何も話していない」とし、「反西洋的、反民主的、そして中国共産党に有利なものは全て支持されているだけだ」と主張した。