2023-10-25 政治・国際

中国ネット上で反ユダヤ主義拡大 イスラムを支援する北京政府の明確な理由

© Reuters イスラエル国旗

注目ポイント

今月7日にガザ危機が勃発して以来、中国では露骨な反ユダヤ主義(アンチ・セミティズム)がインフルエンサーらによりインターネットで拡大している。検閲など当局の厳重な管理下にある中国のネットで、そのような活動が黙認されていることは、中国政府の姿勢を反映していると英紙デイリー・テレグラフは指摘。同国がイスラエルを敵に回してもイスラム諸国を支援するには明確な理由があった。

世界地図を前に中国の人気インフルエンサー、スー・リンさんは、ガザ危機が始まって以来、イスラム武装組織ハマスを支援し、反ユダヤ主義を掲げ、イスラエルを糾弾するライブ配信をほぼ連日続けている。

約100万人のフォロワーを持つスーさんは、ある時は「ハマスはまだ甘い、あまりに安直過ぎる」と同武装組織に奮起をうながし、イスラエル人は「植民地主義の手先」と呼び罵った。今月7日のハマスによる奇襲攻撃で人質に取られたイスラエル人らについては、「彼らは捕らえられるべきして捕らえられた」と発言し、「イスラエルは今やナチスや軍国主義のユダヤ版だ」と言い放った。

英紙デイリー・テレグラフ(電子版)によると、このような配信は7日以来、中国のインターネットに現れた反ユダヤ主義の波の一部に過ぎない。当局の厳重な検閲・管理下にある中国のネット上で、このような反ユダヤ主義を共有することが黙認されているということは、中国共産党がイスラエル・パレスチナ紛争に関し、どのような立ち位置にあるのかを示していると指摘。中国はハマスの攻撃を非難せず、イスラエルを怒らせ、両国の関係がこじれることは必至の状況だ。

中国政府はこれまでもパレスチナ独立を樹立するため、イスラエルとの「双方による解決」を求めてきたが、新たな紛争が勃発した今回も習近平指導部は同様のメッセージを繰り返し、それが「根本的な解決策」だと主張している。

同紙によると、中国にとってパレスチナ大義への支援は数十年前に遡り、中国政府がイスラム諸国との関係を築く基盤となっていると専門家は指摘する。

中国が初めてパレスチナを支持し、インドネシアのバンドン会議でアジア、アフリカ、中東からの参加29か国とともに「あらゆる植民地主義」を非難したのは1955年だった。当時の毛沢東指導部は、パレスチナ人団体への支援と訓練の提供を開始し、毛主席の死後も80年代まで一部の援助は続けられた。

近年、中国はイラクのインフラプロジェクトや、イランの南部ジャスク港の石油ターミナルなど、地域全体に多額の投資を行い、中東での影響力を拡大。エジプトではカイロ郊外に新首都さえ建設中だ。外交面でも、内戦で荒廃したシリアの復興努力への支援を申し出ており、今年初めには地域の長年のライバルであるイランとサウジアラビアの間の国交再開のために介入し、世界を驚かせた。

テレグラフ紙によると、中国が最終的に望んでいるのは、中東全域の投資を守るため、イスラエルとパレスチナの緊張を緩和し、同地域からの石油輸入が滞りなく継続されるようにすることだという。中国は石油の70%以上を輸入しており、そのほとんどはサウジアラビアとイランから来ている。

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