2021.09.30
# 労働問題

トンネルの壁から撲殺遺体が…「人柱」として埋められた、労働者たちの「無念」

この惨い犠牲を、忘れてはならない
朝里 樹 プロフィール

常紋トンネルや「タコ」と呼ばれた人々の歴史を追った小池喜孝氏が残した多くの著作や、マスメディアの報道により、常紋トンネルだけでなく、北海道各地の同様の歴史が知られるようになった。その結果、全道で彼らの遺体を発掘し、供養し、民衆碑を建立する運動が起きたことが背景にあって、常紋トンネル工事殉難者追悼碑も建てられたのだ。

常紋トンネル工事殉難者追悼碑[ウィキメディア・コモンズ]
 

常紋トンネルだけでなく、北海道各地で「タコ」と呼ばれ働いた人々がおり、中には過酷な労働と暴力により命を失った者たちが数多くいた。それは例え記録として残らずとも、人々の記憶に残り続けていたのだ。

そして常紋トンネルにおいても民衆運動が行われ、碑と墓とが作られた。

かつてこの地に墓もなく眠りについた人々は、今も碑を通し、かつてそこで何があったのかを伝えている。

例え幽霊として語られずとも、全道各地にはその地に望まずして倒れ、静かに眠り続けている人々はまだいるのかもしれない。

これが二度と繰り返してはならない悲劇であることは言うまでもない。

それとともに、先述した「常紋トンネル工事殉難者追悼碑」の由来に刻まれたように、今この北の大地が大きく発展できた背景には、「タコ」と呼ばれた多くの人々の惨い犠牲があることを忘れてはならないと思うのだ。

【参考資料】
小池喜孝著『常紋トンネル 北辺に倒れたタコ労働者の碑』1977年、朝日新聞社
常紋トンネル工事殉難者追悼碑建設期成会編『トンネルの壁のなかから―常紋トンネル工事殉難者追悼碑完成記念誌―』1983年、常紋トンネル工事殉難者追悼碑建設期成会
合田一道編著『北海道こわいこわい物語』1988年、幻洋社
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