2021.09.30
# 労働問題

トンネルの壁から撲殺遺体が…「人柱」として埋められた、労働者たちの「無念」

この惨い犠牲を、忘れてはならない
朝里 樹 プロフィール

トンネル内に、血だらけの男が…

「タコ」と呼ばれた労働者が関係する怪異譚として有名なのは、常紋トンネルに纏わる話だろう。

石北本線常紋トンネル 生田原方[ウィキメディア・コモンズ]
 

紋別郡遠軽町と北見市とを繋ぐ常紋峠に開通したこのトンネルは、やはり彼らの労働によって建設されたという。このトンネルを作るまでに百数十人もの「タコ」と呼ばれた人々が犠牲となったというが、それを示すようにこの周辺では様々な幽霊譚が語られていた。いくつか例を挙げると、以下のようなものがある。

工事の際に人柱を立てたため、雨の日に常紋トンネルを通ると「腹減った、ママ(飯)くんろ」といった声が聞こえる。

トンネルを抜けて信号のガス灯を点滅しに行くと、幽霊に出会う。

機関車の前に血だらけの男が立ちはだかり、急停車して調べると誰もいない。しかし出発しようとするとまた現れる。

常紋トンネルを通る列車の乗客から、トンネル内で火の玉が飛んだ、信号が不意に消えて血だらけの男が立っていたといった目撃談がよく寄せられた。

常紋駅長の官舎に幽霊が現れ、何代にも渡って駅長を苦しめた。

常紋信号所には火の玉が出た、お化けが現れたといった噂があり、駅員や保線区員に勤務を嫌がられた。さらに家族に病気が出る、事故が絶えないなどの話もあり、「タコの祟り」と伝えられた。

常紋トンネルの近くに昼近くになるとドンドンと大きな音がする小屋があり、「ドンドン小屋」と呼ばれた。
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