前編記事『「深入りするな。消されるぞ」と忠告され…アメリカ亡命中の研究者が決死の告発「新型コロナは『中国軍の生物兵器』として開発された」』より続く。
自然界では見られない特徴
イェン・レポートは、発表されると即座にマサチューセッツ工科大学出版社(MIT
press)やジョンズ・ホプキンス大学の研究機関によって、「根拠薄弱」と否定された。しかし、発生から4年もたったいまでも、新型コロナが人への感染力を強めるために変異した中間宿主は、自然界に見つかってはいない。
ジョンズ・ホプキンス大学はじめ米国の権威ある大学が研究所漏洩説を受け入れない理由を、イェン博士はこう指摘する。
「世界のウイルス研究は、中国政府の強い影響を受けているからです。欧米先進国に比して人権意識の低い中国は、実験もしやすい。様々なウイルス研究のメインフィールドになっています。学術界の権威には中国政府への偏向が見られます」
一方、現場で奮闘した医師やウイルス学者には、新型コロナが人工的に作られたとする「人為説」を支持する者が多い。米国疫病予防管理センター(CDC)の第18代所長で新型コロナのパンデミックに現場のトップとして対応した、エイズ・ウイルス研究の権威であるロバート・レッドフィールドJr.博士は言う。
「私は、新型コロナが人為的に作られたという点でイェン博士の指摘を百パーセント支持します。その遺伝子配列を見れば、人工的に作られたことは疑いようがない。SARSやMERSのウイルスは人から人への感染力は弱いのですが、新型コロナは最初から強すぎる能力を持っていた。これは自然界で進化したコロナに見られない特徴です」
さらに、博士は米国政府が武漢ウイルス研究所と共犯関係にあったと指摘する。
核兵器と同等の脅威
「パンデミック当初の'20年2月1日、アンソニー・ファウチ元大統領首席医療顧問は、CDCトップの私を、対応策を練る重要な議論から排除しました。なぜなら、米政府も武漢ウイルス研究所に膨大な資金を提供していたという『不都合な真実』を抱えているからです」
ところが、関係者の証言や決死の告発によって、米政府も動かざるを得なくなっている。
今年3月、米下院は「コロナウイルスのパンデミックに関する特別小委員会」を開会。ロバート博士が招致され、「武漢研究所から漏洩した結果である可能性が高い」と証言した。そのうえで、現在、中国や欧米など世界の最先端の研究所で行われる、ウイルスを人為的に変異させる「機能獲得研究」の監視体制の整備と強化を説いたのだった。
機能獲得研究とは、将来発生しうるウイルスをあらかじめ人工的に作り出し、ワクチンや治療薬の開発に役立てる研究だ。イェン博士が言う。
「機能獲得研究は、感染症の治療法やワクチン開発において医療技術を飛躍的に向上させますが、生物兵器として国際秩序の混乱を狙う国家やテロリズムに利用される可能性もある。世界に拡散されれば、核兵器と同じように人類の脅威になりかねないのです」
不自由な亡命生活
国際原子力機関(IAEA)が核拡散の防止のために監視を続けるように、研究機関からのウイルスの漏洩を防ぐ国際的な枠組みを検討する必要があるというのが、イェン博士とレッドフィールドJr.博士が共有する危機意識なのだ。
イェン博士は、亡命後、両親を人質に取られ、中国政府のコントロール下に置かれた香港大学の同僚でもある夫に、居場所を探られるという冷酷な仕打ちを受けたという。
「現在の私の立場はインディペンデント・リサーチャー(独立系研究者)です。中国共産党のスパイネットワークは非常に強く、私の居場所は誰にも知られないようにしなければなりません。そのため、どこにも所属せずに研究を続けています」
不自由な亡命生活を送りながらも、声を上げ続けるイェン博士は、最後にこう語った。
「一刻も早く世界が新型コロナの真実に向き合うことを願っています」
「週刊現代」2023年11月25日号より
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ウイルス研究の世界を支配し、「研究所流出説」を抑え込んできた中国。さらに関連記事『岸田首相vs.習近平主席、2度目の「日中首脳会談」で“これでもか”と見せつけられた中国の「上から目線外交」』では、習近平政権の外交について解説している。