昨年11月、ハイキング中に登山道の女子トイレから出た彩乃さん(50)=神戸市=は、入ろうとした女性と鉢合わせた。困惑した顔を見て、慌てて説明した。
「あ、ごめんなさい。トランスジェンダーです」
男性に生まれ、20歳を過ぎて男子トイレに入ると「なんか違う」と感じるようになった。女性用はホッとする。日常的に使ってもトラブルにならなかった。
そんな中、大阪市の商業施設で今年1月、「戸籍は男性、性自認は女性」とする客が女子トイレを使い、大阪府警に建造物侵入容疑で書類送検される。ひとごととは思えず怖くなった。
ただただ一人の女性として暮らしたいだけ。でも、警察沙汰になりかねない。それからは「誤解を与えるきっかけを自ら増やす必要はない」とできるだけ多目的トイレを選んでいる。
車いす利用者らへの後ろめたさはあるものの、なるべく波風を立てたくない。性別を問わない「オールジェンダートイレ」も各地にできつつあるが、マイノリティーと周囲に公然と明かすようで使いにくい。
◇ ◇
男か、女か-。私たちの社会は、体の性と性自認が同じ「シスジェンダー」を前提に、多数派の価値観を「当たり前」としてきた。尼崎市のアウティング(暴露)問題を検証したワーキングチームは、その暴力性を強調する。LGBTという言葉は広く知られるようになっても、当事者は差別におびえ続けている。
「今はそういう時代だしね」。3年前、彩乃さんが「心は女性で」と打ち明けると、家族はそう応じながらも結局、女性としての性自認を女装趣味とみなし「うちに近寄るな」と突き放した。実家とは疎遠になっている。
長い髪も化粧も、自分には一番しっくりくる。「なりたい姿」へ、常に自分を磨く。「えっ、男?」と振り向かれても、背筋を伸ばし、街を歩く。
一方で、神戸市内の商業施設の管理会社は「外見だけで見分けるのは難しい」と防犯上の悩みを抱える。過去に女装した男が女子トイレに盗撮用カメラを付けようとした問題も起きた。
「男っぽい人がいたら怖いという女性の声が多い。商業的には、多数派の声を優先せざるを得ない」
◇ ◇
立場によって見解が異なる中、尼崎市の銭湯「蓬莱湯」が性的マイノリティーに周囲の目を気にせず利用してもらえるイベントを開くと、反響は大きかった。
「当事者の苦労を知った」と賛同の声が寄せられた陰で、根拠なく犯罪者と同一視し「問題を起こす人々なのに」と批判する電話やメールが相次いだ。「なんで目立つことを」と当事者から不安の声も上がった。
「荒れるかもしれない」と主催者たちも正直思っていた。それでも性自認が女性のトランスジェンダー、ゆめかさん(32)=仮名=は言う。「私たちは特権がほしいわけではない」
そして願う。「お互いに歩み寄り、同じラインに立てる社会になってほしい」(大田将之、浮田志保、広畑千春)
【バックナンバー】
■(1)性告白を否定「幹部辞めさせろ」全国から批判
■(2)「手をつなげるのは夜だけ」…社会の拒絶に拭えぬ不安
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