翻訳:北島靖己
翻訳協力:D&D日本語版翻訳チーム
第五回:戦闘およびイニシアチブ編
Q.キャラクターが麻痺状態になり、その遭遇中に回復したとすると、イニシアチブは同じままですか?それとも新しく振り直すのですか?
A.“その遭遇中”というのが、そのキャラクターが麻痺した戦闘中のことを意味しているのなら、そのキャラクターのイニシアチブは変わらない。これはホールド系の魔法で金縛り状態になったキャラクターや、ヒット・ポイントがマイナスになったキャラクターの場合も同様だ。そのキャラクターは実際には戦闘から離脱したわけではない。回復するまでほとんど何もできなかった、というだけのことなのだ。キャラクターが事実上、戦闘から離脱するという場合もある。たとえば、キャラクターがホールド・パースン 呪文に対するセーヴに失敗し、他の戦闘参加者たちは金縛り状態のキャラクターを残して、戦いながら移動して行ってしまうということもある。金縛り状態になったキャラクターが、呪文が切れたあとで戦闘に再び加わろうとしたなら、新たな参加者として扱うこと(『ダンジョン・マスターズ・ガイド』第3章の『新たな参加者が戦いに加わる』を参照のこと)。
Q.ワンドをチャージ消費するのは攻撃ですか?
A.君が“攻撃”をどういう意味で使っているかによる。ワンドをチャージ消費するには、魔法のアイテムの起動アクションを使用する必要があり、これは標準アクションだ。ほかのどんな標準アクションでも同じことだが、君はその魔法のアイテムを起動する前か後のどちらかに移動することができるが、そのターン、君はほかの標準アクションや全ラウンド・アクションを使用することはできない。たとえば、君のレベルが高くて、全力攻撃アクション(全ラウンド・アクション)で複数回攻撃ができるとしても、君はその“攻撃”の1回としてワンドを起動することはできない。
サンクチュアリ呪文やインヴィジビリティ呪文を使っているなどして、敵を“攻撃”する君の能力が何らかの制限を受けていたならば、君がワンドから開放する擬似呪文効果によってほかのクリーチャーがセーヴィング・スローを行なったり、ダメージを受けたり、その他の害があったり行動を妨げる場合にかぎり、ワンドのチャージ消費は“攻撃”とみなされ、サンクチュアリやインヴィジビリティの呪文の効果は破れる(『プレイヤーズ・ハンドブック』P.152の『特殊な呪文効果』を参照のこと)。
Q.〈軽業〉技能の説明によると、〈軽業〉技能を5ランク以上持っていれば、防御的戦闘で、通常なら+2の回避ボーナスが得られるところを、+3の回避ボーナスが得られるとあります。〈軽業〉技能は《攻防一体》にはどう影響するのでしょう?〈軽業〉から追加アーマー・クラスを得るためには、少なくとも2ポイントを基本攻撃ボーナスからアーマー・クラスへ移さなければなりませんか?それとも、基本攻撃ボーナスから1ポイントを移すだけでよいのでしょうか?それとも、防御的戦闘とは、基本攻撃ボーナスを一切移すことなく《攻防一体》を使っていることに相当するのでしょうか?
A.防御的戦闘と《攻防一体》の使用は互いにまったく無関係だ。 『プレイヤーズ・ハンドブック』P.81の《攻防一体》の説明に防御的戦闘についての記述があるため、《攻防一体》とは防御的戦闘の進化したやり方だと思っている人もいるが、それは間違いだ。
全力攻撃アクションか攻撃アクションを使用しているときならいつでも防御的戦闘を行なえる(『プレイヤーズ・ハンドブック』のP.124を参照のこと)。《攻防一体》の特技を持っているなら、この特技を使わずに防御的戦闘を行なうこともできる。
また、防御的戦闘を行ないながら《攻防一体》を使うこともできる。《攻防一体》を使い、それとともに防御的戦闘をするなら、アーマー・クラスへのボーナスと攻撃へのペナルティを合計するだけでよい。《攻防一体》も防御的戦闘もアーマー・クラスに回避ボーナスを提供する。このゲームにおけるほかのほとんどのボーナスと異なり、回避ボーナスは累積する。〈軽業〉技能を5ランク持っていれば、防御的戦闘を行なう際により高い回避ボーナスを得られるが、《攻防一体》を使用する際には得られない。
Q.〈軽業〉技能を使えば、普通なら敵から逃げる際に受ける機会攻撃を受けずに済ませることができますか? そうした場合、移動後に呪文を発動したり、ボウを射たりすることはできますか?
A.できる。〈軽業〉判定(難易度15)に成功すれば、機会攻撃を誘発せずに敵の機会攻撃範囲を通って20フィートまで移動することができる。これは、君にとって移動アクションとなるが、〈軽業〉で移動した距離が君の移動速度を超えないかぎり、移動後に呪文発動や遠隔攻撃を行なうことができる。君の移動速度が20より高ければ、君は呪文発動や遠隔攻撃を行なう前に、通常通り、最後まで移動することができる。たとえば君の移動速度が30なら、君は機会攻撃を誘発せずに〈軽業〉で20フィート移動し、射撃や呪文発動を行なう前にさらに10フィート移動できる。どの場合でも、〈軽業〉で移動したあとに誰の機会攻撃範囲でもないマスに入ることができれば、そこで何をしようと機会攻撃を誘発することはない。
鎧や荷重によって移動速度が下がっている場合、〈軽業〉技能を使用することができないことに注意(『プレイヤーズ・ハンドブック』P.63の〈軽業〉技能の説明を参照のこと)。君がロングボウや(ハンド・クロスボウ以外の)クロスボウなどといったかなり大き目の武器を持っている場合、DMは君の〈軽業〉判定に状況ペナルティを科すかもしれない。
Q.部分突撃をする準備をしておいて、移動し、向きを変え、その後に部分突撃を行なうことはできますか? 移動と部分突撃の間に5フィート・ステップすることはできますか? 部分アクションとして移動し、5フィート・ステップし、部分アクションとして攻撃することで、毎ラウンド、余分に5フィートの移動をひねり出せますか?
A.どれもダメだ。突撃する場合、君の全移動は直線(でしかも同方向)でなければならない。部分突撃の前に行なうすべての移動もそれに含まれる。
自分のターンの間に、移動相当アクションと部分アクションを行なうことはできない。標準アクション(この場合、5フィート・ステップはできない)か2倍移動アクション(アクション自体は移動でない場合にかぎり5フィート・ステップが可能)か部分アクション(これもアクション自体が移動でない場合にかぎり5フィート・ステップが可能)しかできないのだ。
Q.自発的に呪文抵抗を止めるのはフリー・アクションですか? そうだとすれば、仲間のクレリックがキュア してくれるためにやって来たときに自動的に呪文抵抗を止めることができるのでしょうか? それとも、その直前のイニシアチブまでにやっておかなければならないのでしょうか?
A.これは標準アクションだ(『ダンジョン・マスターズ・ガイド』のP.81を参照のこと)。標準アクションをとるには自分のターンが回って来るまで待たねばならないが、君や君の仲間はタイミングよくキュア 呪文をかけるために待機アクションや行動遅延を使用することができる。
Q.クロスボウを装填する(移動相当アクション)ために自分を機会攻撃範囲に収めている敵から離れる(移動アクション)と、(最初の移動アクション後に敵の機会攻撃範囲からは出ているとして)機会攻撃を誘発しますか? ライト・クロスボウを装填する行為そのものは(敵の機会攻撃範囲内にいたとすれば)機会攻撃を誘発することはわかっています。クロスボウを装填するために機会攻撃範囲から出たとすると、そのキャラクターは2倍移動アクションを行なっていることになり、従って、機会攻撃を誘発しないのだと思いますが。
A.この場合、君の移動が5フィートを超えるものであったなら、最初の機会攻撃範囲内のマスを離れた時点で機会攻撃を誘発する。移動アクションと移動相当アクションをとることは、2倍移動アクションをとることとは違う。2倍移動アクションとは、君の移動速度の2倍の距離を移動することだ。移動相当アクションは、移動とまったく同じことだからそう名づけられているのではなく、そのアクションをとって、なおかつ通常なら移動と組み合わせられる行動をとることができるからそう名づけられているのだ。たとえば、クロスボウを装填して(移動相当アクション)撃つ(攻撃アクション)などといったことだ。
Q.機会攻撃として呪文を発動することはできますか? 『プレイヤーズ・ハンドブック』によれば、機会攻撃にとして近接攻撃を1回行なうことができるとあります。これには接触呪文も含まれますか? 高速化された呪文が使える場合はどうですか? 擬似呪文能力や超常能力はどうですか?
A.機会攻撃として呪文を(どんな呪文でも)発動することはできないし、機会攻撃として擬似呪文能力や超常能力を使用することもできない。 敵が君から機会攻撃を誘発した場合、君は近接攻撃か、近接攻撃としてできること(敵を足払いするなど)しか行なえない。呪文や擬似呪文能力や超常能力の中には、機会攻撃を行なう時点で関係してくる持続的な効果や自動的な効果を持つものもあることに注意。たとえば、君はすでにショッキング・グラスプのような接触呪文のチャージを保持している場合や、プロデュース・フレイムのような呪文をすでに発生させている場合、君はそうした呪文による接触攻撃を機会攻撃として使用することができる。また同様に、生命力吸収は超常能力だが、これは通常、近接攻撃に成功すればいつでも働く。従って、機会攻撃の一部としても働く。
Q.バーバリアンのグルンサーグがロングスピアを持ち、両手にスパイクト・ガントレットをしていたとします。彼はベルトにスローイング・アックスをはさんでいます。彼は60フィート離れたところにいるオーク2体と遭遇し、イニシアチブをとりました。自分のターンに、グルンサーグは移動しながらアックスを抜き、オークが15フィート以内に近付いたらアックスを投げるアクションを待機しました。オークたちは突撃して来ました。第一のオークが15フィート以内に近付いたとき、グルンサーグはアックスを投げ、そのオークを倒しました。アックスを投げたあと、グルンサーグはロングスピアを両手で構えていると見なせますか? 従って、残った方のオークが10フィート離れたマスから5フィート離れたマスへと移動する時に機会攻撃を行なえますか? できないとすると、武器を片手持ちから両手持ちへ(あるいはただ持っている状態から構えている状態へ)持ち替えるためのルールはありますか? また、それに必要なアクションは? さて、自分から5フィート離れたところにいる呪文の使い手が呪文の発動を始めたときに、グルンサーグがロングスピアを両手で持っていたとします。ロングスピアは間合いの長い武器であり、この呪文の使い手はグルンサーグに近すぎるために、ロングスピアはこの呪文の使い手を機会攻撃範囲に収めていません。グルンサーグはロングスピアから手を離して、スパイクト・ガントレットでこの呪文の使い手を殴りつけることができますか? 構えていた両手武器から片手を離すのに必要なアクションは何でしょう?
A.第一の例のグルンサーグのアクション(待機したアックスを投げる)は可能だ。グルンサーグはロングスピアを片手で持っていたと思う。恐らく、柄を持って肩に立てかけていたか、石突きを地面に引きずっていたかしたのだろう。そうしていれば片手は開いており、グルンサーグは少なくとも+1の基本攻撃ボーナスを持っているので(バーバリアンなら1レベルでも+1の基本攻撃ボーナスを持っている)、移動しながらスローイング・アックスを抜くこともできるだろう。一般的なルールとして、もし君がある武器を両手使用できるサイズのキャラクターなら、片手で運搬することは可能だ。
第二の例(第二のオークに機会攻撃をする)は不可能だ。両手武器を持っているのと、その武器を構えているのとは同じことではない。グルンサーグは、肩に立てかけているか地面に引きずっているロングスピアを使いたいのなら、開いている方の手をそれに添えなければならない。この動作は武器を抜くのに似ているが、すでにもう一方の手で持っているので、それよりは少し簡単だ。従って、フリー・アクションとなる。しかし、グルンサーグがそうしたければ、それは自分のターンに行なわなければならない。また、いずれにせよ、片手で持っているだけでは、そのロングスピアで周囲を機会攻撃範囲に収めることはできない。
第三の例(呪文の使い手をスパイクト・ガントレットで殴りつける)は君の書いた方法では不可能だ。スパイクト・ガントレットは近接武器であり、グルンサーグはそれで周囲を機会攻撃範囲に収めることができるが、それは、スパイクト・ガントレットをはめた手が開いている場合だけだ。上の例では、グルンサーグはその手でロングスピアを持っており、ガントレットを“構えて”はいない。なるほど、ロングスピアから片手を離すことはできる。もう一方の手でロングスピアを持ったままであるとは言え、この動作は武器を落とすのに相当する。武器を落とすのはフリー・アクションだが、フリー・アクションは自分のターンの間でしか使用できない。グルンサーグは自分のターンの最後に、フリー・アクションとしてスピアを片手で持つことにし、スパイクト・ガントレットで自分の周囲を機会攻撃範囲に収めるべくもう一方の手を自由にすることができるが、そうした場合、彼はロングスピアで周囲を機会攻撃範囲に収めることはできなくなる。
Q.塔や城壁の上に5フィートの高低差があるようなところで戦闘をしているとします。キャラクターが高いところから5フィート・ステップで下に降りた場合、何が起こりますか? 機会攻撃は発生するのですか? 垂直方向の移動が関係する場合に、機会攻撃を受けずに引き下がることはできますか? それとも、5フィート後ろに下がって、5フィート下に降りるためには、10フィート相当を“跳躍”しなければならず、従って、5フィートを超える移動をし、機会攻撃を誘発することになりますか?
A.君が言う移動は5フィート・ステップとみなせると思う。問題のキャラクターが段差の縁ぎりぎりのところにいる場合、そのキャラクターは低いところへ、斜め下に1マス移動したと言える(移動中の最初の斜め移動は5フィートと数える)。この場合、そのキャラクターの移動は5フィート・ステップのみであり、そうした移動は機会攻撃を誘発しないので、引き下がる際に攻撃やその他のアクションをとり、機会攻撃を誘発せずに済ませることができる。狭間胸壁など、降りる前に乗り越えなければならないようなものがあったり、キャラクターと段差との間に5フィートを超える距離があったりすれば、移動は5フィート・ステップではなくなる。しかし、それでも移動以外に何もしなければ、戦闘から逃れることができる(この場合、胸壁から跳び降りることが移動となる)。移動以外何もしなければ、君が離れた最初の5フィート四方のマスは機会攻撃範囲とは見なされない。
Q.私の仲間が1体の敵を攻撃しているとします。私はどうにかして不可視状態になり、剣を抜き、敵の反対側に回って挟撃したとします。私が不可視状態であっても、私の仲間は挟撃ボーナスを得られるのでしょうか?
A.君は、君の敵が見ることのできる(そして挟撃するための適切な位置にいる)すべての仲間から挟撃ボーナスを得る。君の敵が君を見ることができない場合、君は仲間の誰に対しても挟撃ボーナスを与えない。
と言うことはつまり、盲目状態のクリーチャーを挟撃できないのではないかと、慧眼な読者は気付いたかもしれない。しかし、本当に盲目状態のクリーチャーは事実上、すでに挟撃されているようなものなのだ(盲目状態のクリーチャーはACへの【敏捷力】ボーナスを使用できず、そうしたクリーチャーを攻撃する際には+2のボーナスがつく)。擬似視覚能力を持つクリーチャーは事実上、有効距離内のすべてを“見て”いるため、そうしたクリーチャーを挟撃することはできない。
Q.どの程度の視認困難であれローグの急所攻撃を阻害しますか? それとも、完全視認困難の場合だけですか? トゥルー・ストライク呪文はこの効果を無効化しますか? 視認困難以外を原因とする失敗確率の場合はどうですか? たとえば、ブリンク呪文の50%の失敗確率などです。
A.君の敵が、君に失敗確率を及ぼすだけの視認困難を得ているなら、君はその敵に対して急所攻撃を行なえない。君がどうにかして(たとえばトゥルー・ストライク呪文を使うなどして)視認困難による失敗確率を無効化したなら、その敵を急所攻撃できる。
ブリンク呪文の失敗確率などのように、視認困難によらない失敗確率は急所攻撃を妨げない。視認困難は、君が敵の身体の構造を観察して、正しい場所に正確に攻撃を与える能力を妨げることで、急所攻撃を無効化する。ブリンク呪文は正確な攻撃を行なう能力を妨げるのではない。君が攻撃を命中させる寸前に、敵をその攻撃の前から連れ去ることで、攻撃そのものを失敗させるものだ。トゥルー・ストライクではブリンク呪文による失敗確率を無効化できないことにも注意。
Q.2つの爪など、2つの肉体武器を持つクリーチャーは1ラウンドに2回、組みつきの試みを行なえますか? キャラクターが2つの武器で戦うルールを用いて、同じ技を使えますか? 組みつき判定は毎ラウンド何回行なえるのですか?
A.基本攻撃ボーナスで通常行なえる攻撃回数だけ、組みつき判定を行なうことができる。武器の数は、組みつき判定が何回できるかということには関係しない。たとえば、ダイア・エイプは5ヒット・ダイスの動物であり、その基本攻撃ボーナスは+3だ。従って、肉体武器を3つ持っているにも関わらず、毎ラウンド1回の組みつき判定しかできない。組みつきによってダメージを与えようとする場合、サイズに従って非致傷ダメージを与えるのであり、肉体武器のダメージを与えるのでないことにも注意。たとえば、ダイア・エイプ(大型サイズのクリーチャー)は組みつき判定に成功すれば、1d4ポイントに加えて【筋力】ボーナスの+6の非致傷ダメージを与える。つかみ強化の特殊攻撃を持つクリーチャーは組みつきに肉体武器を使うことができることに注意。また、モンクのキャラクターは組みつき判定に成功することで素手攻撃ダメージを与えられることにも注意。モンクとつかみ強化を持つクリーチャーは恐るべき組みつき手だ。
通常の組みつきルールでは、攻撃側が攻撃に全身のほとんどを使用すると仮定している(君が組みつく際には、君は両腕と、恐らくは両脚も相手の身体に回すだろう)。君は盾を使いながら組みつくこともできるが、君の組みつき判定にはその盾の防具による判定ペナルティがつく。
つかみ強化の特殊攻撃を持つクリーチャーの場合、組みつきを行なうのに1本の付属肢のみを使用することができる。ただし、そうすると組みつき判定に-20のペナルティがつく。キャラクターもこの-20オプションを使用できるが、君も指摘したように、その場合は2つの武器で戦うルールも使用しなければならないだろう。『プレイヤーズ・ハンドブック』の表8-2を参照し、キャラクターの片手は軽い武器と見なされることを思い出しておこう。
2つの武器で戦う際のペナルティは、つかむ際の判定と、つかむのに成功したあとのすべての組みつき判定に適用される。-20のペナルティは組みつき判定にのみ適用される。たとえば、《二刀流》と《両手利き》の両方の特技を持つキャラクターは、それぞれの手による“つかむ”際の判定に-2のペナルティを受け、つかむのに成功したあとに行なうすべての組みつき判定に-22のペナルティを受ける。
自分のターンに、このキャラクターはそれぞれの手で別々に組みつき判定を行なうのをやめ、1体の敵に対して両手を使うこともできる。そうすれば、そのターンに行なう組みつき判定には、2つの武器で戦う際のペナルティも、-20のペナルティも適用されない。
Q.組みつきを行なう際に、敵をただ持ち上げて連れ去ることはできますか? 組みつきを行なうときには、常に敵のいるマスへ入り込まなければなりませんか? 逆に、敵を自分のマスへ引っ張り込むことはできませんか?
A.組みつき中に敵を移動させることに関するルールはないが、合理的な行動のように思える。やってみて損はないだろう。
私のお勧めは以下の通り: 敵を移動させることを、組みつき中に行なえるもう1つのオプションとして扱うこと。このオプションを選んだなら、敵を移動させるためには対抗組みつき判定に勝たねばならない。君がこの対抗判定に勝ったとしても、君は敵の重量を動かせるだけの力がなければならず、君は重荷重を持っているかのように移動する。たとえば、【筋力】値17の人間のファイターがいて、体重110ポンドで装備18ポンドを持っているエルフのウィザードと組みついているとしよう。このファイターは1,000ポンド以上を押し引きすることができ(『プレイヤーズ・ハンドブック』の表9-1とその説明文を参照のこと)、従って、そのウィザードを簡単に引きずって行くことができる。移動中には、君は敵を、君の近接攻撃間合い内のどの場所にも置くことができる。従って、たとえば、君は、敵を引きずって落とし穴の上に押しやり、その中へ落とすことができる。
君はまた、1か所に留まったまま、敵を間合い内の好きな場所へ置くことができるが、そうすることは移動相当アクションとなる。こうして敵を移動させる際には、君は敵にしっかりとしがみついてずりずりと移動するか、君の身体にしがみついた敵とともに床の上を転げまわっているものとみなされる。
君と敵が一緒に移動している場合、その移動は、君を機会攻撃範囲に収めている敵からの機会攻撃を誘発するが、君が1か所に留まって敵をある場所から別の場所へと移動させる場合には、機会攻撃を誘発しない。
敵を移動させる際には(組みつき判定に)攻撃アクションが必要なため、1ラウンドに移動は1回しかできない(つまり、2倍移動アクションを行なうことはできない)。君が組みつき判定に-20のペナルティを受けている場合、君は敵を文字通り片手でつかんでいる。敵をそのようにして捕らえている場合、実際にその重量を運べるだけの【筋力】があれば、君は自由に移動することができる。
君が通常の組みつきを試みる場合、ルールによれば、君は敵のマスに入り込まなければならない。しかし、君は上で述べたルールを用いて、君と敵の双方がいるマスから外に敵を移動させることができる。
もう1つのお勧め:君がつかんだ敵より君のサイズが2段階以上大きい場合、君は敵のマスに入る代わりに、自分のマスに敵を引っ張り込むことができる。敵を自分のいるマスに引っ張り込むことは、敵からの機会攻撃を誘発しない。
Q.2体の敵同士が組みつき合っていて同じマスにいる場合、キャラクターがこのうちの1体を攻撃したら何が起こりますか? このロールには、突き飛ばし最中のキャラクターを攻撃する場合のように、組みつき合っているものたちどちらにも当たる可能性がありますか? この件については明言されていません。どんなことでも教えてくれれば非常に助かります。
A.組みつき中のものを近接攻撃する際に間違った目標に当ててしまう可能性は、今のところない。私の知っている多くのDMは、組みつき中のものを遠隔攻撃する際には、組みついているどのクリーチャーにも同じ確率で当たるとしている(たとえば、2人のものが組みついているなら、どちらに当たる可能性も50%だ)。組みつき合っているものたちのうち1体のサイズが充分に大きければ、近接戦闘中の敵に遠隔攻撃を行なう際のペナルティを避けるため、近接攻撃から10フィート離れたところへ撃ち込む場合と同様に、実際に組みつきが起こっている場所から少なくとも10フィート離れた場所を、間違った目標に当たる可能性なしに攻撃することができる。
Q.つかみ強化能力を持つクリーチャーは、正確に言って、どのようにして、どの時点で敵にダメージを与えるのでしょう?『モンスター・マニュアル』の『はじめに』の記述は個々のモンスターの記述と合っていないように思えます。締めつけ能力は、クリーチャーが組みつき中にダメージを与える能力にどのように影響するのでしょうか?
A.つかみ強化があれば、君は肉体武器、通常は爪か触手で近接攻撃に成功したあとで、敵に組みつこうとすることができる(クリーチャーの説明には、つかみ強化にどの肉体武器を使えるかが書いてある)。組みつきの最初のラウンドで、つかもうとするクリーチャーは通常通り、近接攻撃を命中させることでダメージを与えられる。そのクリーチャーがつかむことを決め、それに必要な組みつき判定に成功した場合(組みつきの手順については『プレイヤーズ・ハンドブック』のP.137を参照のこと)、さらに締めつけ能力も持っているのでなければ、追加ダメージは与えない。締めつけることができるなら、この組みつき判定に勝った時点で締めつけダメージを与える。
敵を捕らえた状態で自分のターンを始めたら、そのクリーチャーはそのまま捕らえ続けるか、もう一度組みつき判定を行なうかすることができる。再び組みつきを行なうことにして、それに成功したなら、攻撃側がつかみ強化に用いている肉体武器は、敵に通常のダメージを与える。攻撃側がさらに締めつけ能力も持っていれば、肉体武器のダメージに加えて、締めつけダメージも与える。
Q.(組みつきや武器落としなどで)対抗攻撃ロールを行なう場合、通常の攻撃ロールと同様、ダイスの目が1の場合は自動失敗なのですか?
A.攻撃側(つまり、敵の武器を落とそうとしたり、組みつき判定で何かを行なおうとしているキャラクター)にとっては、ダイスの目が1ならば失敗で、ダイスの目が20ならば成功となる。これは防御側のロールが何であろうと関係ない。防御側のロールは“対抗攻撃ロール”と呼ばれはするものの、防御側は攻撃側に対する難易度を設定しているにすぎないのであって、1や20は防御側にとって特別なものではない。攻撃側に対する難易度を設定するために、防御側の修正値を適用すればよい。攻撃側と防御側の両方が1をロールしたなら、攻撃側は失敗する。攻撃側と防御側の両方が20をロールしたなら、攻撃側は成功する。自分よりサイズ分類が2段階以上大きな敵を捕らえることはできないことに注意(『プレイヤーズ・ハンドブック』のP.137を参照のこと)。
上記すべては、君が実際に対抗攻撃ロールを行なっているものと仮定している。対抗攻撃ロールは自動成功と自動失敗の対象となるのだ。判定は自動成功や自動失敗の対象とならない。たとえば、君が対抗判定をする場合(敵の〈視認〉判定に対抗して〈隠れ身〉判定をするような場合)、ダイスの目が1や20となっても、特別な意味はない。