ありがとうキャミア!おかげで謎がひとつ解けたぜ!今季限りでSBKファクトリーホンダの監督を退任(辞任)するレオン・キャミア。ライダー時代からホンダとは長い付き合いだったが、何か心境の変化があったようで、本来なら来年まで契約があったところの早期辞職を自ら申し出た。
現在ヘレスで行なわれているSBKのプライベートテストへの参加がキャミアの監督としての最後の仕事となるが、そこで走らせた新型となるCBR1000RR-Rについてはこれまでにない手応えがあったようで「第一印象はかなーり良いよ!」とその進化ぶりに太鼓判を押している。
これまでのホンダの弱点としては、加速、減速、エッジグリップ、トラクションが上げられていたが(…それって走る上でのほとんどすべての領域…)新型ではそれらを改善するために採用された、新しいスロットルボディが大きな効果を発揮するものになっているとキャミア。
「新型ではシリンダーの1番と2番、3番と4番で別々のモーターでスロットルが駆動される方式に変更されたが、これがホンダが正しい道に進むための第一歩になる」とキャミア。「アクセルを開けた時、通常であれば4つのシリンダーすべてが発火するところ、この分割駆動のモーターであれば2つのシリンダーごとに発火のタイミングを変えることができる。これがコーナーの立ち上がりでアクセルを入れた時のトラクションを向上させることができるんだ。レースマシンのように軽量なクランクシャフトが使われていると、通常の4発動時発火では駆動力変化が唐突すぎてトラクションが抜けてしまうが、これを2発にコントロールできることで、加速時のトラクションロスを減らすことができる。パワーがあるマシンで、一度トラクションが失われると、あとはタイヤがスピンするばかりになってしまう。新型の2モーター式のスロットルボディはこれを改善することができるんだ。同様の措置は他のメーカーではとっくにやっているが、ホンダもようやくそのスタートラインに立つことができた」
…!なるほどそういうことか。キャミアの発言を聞いて、MotoGPにおけるドゥカティがどうしてスロットルの開けはじめの反応が「鈍い」エンジンを採用しているのかの理由が改めてわかった。SBKでは250馬力、MotoGPでは300馬力を越えると言われている現在のマシンのエンジンが発揮するパワーでは、特にコーナリング時、マシンを深く寝かせた状態でスロットルを大きく開けることなど不可能。スロットルを開けた瞬間に一気に大パワーが伝わってしまうと、その瞬間からタイヤのグリップが失われ、あとはスピンするばかりで前に進めなくなってしまう。そこでMotoGPでのドゥカティは、スロットルの開けはじめでのエンジンの反応をあえて鈍くすることでパワーの伝達を穏やかにし、タイヤのグリップを極力活かしたかたちでマシンを加速させられるようにしている。
そして、今回ホンダが新型のCBR1000RR-Rで採用した2モーター式のスロットルボディでやろうとしているのがこれだ。コーナーからの立ち上がりで、あえて2気筒分を失火させ(という表現が妥当かは微妙だが)、パワーの立ち上がりの穏やかにすることで、タイヤのグリップを活かし、より加速力を高めようとしているのである。
他にもキャミアは、加速に関しては新型の2モーター分割式のスロットルボディでアクセル開度とトラクションを制御し、立ち上がりで発生するウイリーに関しては空力で、エッジグリップやマシンの旋回性等に関しては「ピレリタイヤに合わせた開発を行う(これまではBSベースで開発してきた)ことで」向上させることを狙った開発を、新型CBRでは行ってきたと説明している。これはマシン開発の内情を知るにこの上ない情報だ。そんなことまで話しちゃっていいの、という感じのキャミアである。
これらが狙った通りの効果と性能を発揮するかはまだわからないが、新型を初めてコースに投入した感触は「すごくいい」と言っている。
キャミアが語った新型CBRの開発コンセプトが達成しようとしていることは、MotoGPでも苦戦を重ねているホンダがRC213Vで必要としていることでもある。このコンセプトがSBKとMotoGPで共有されているのであれば、新型のRCVにも期待していいかもしれない。
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