20代女性に人気の「Qoo10」 韓国ファッションが充実
新型コロナ禍で思うように外出ができない今、ネット通販が人気だ。中でも海外の販売者から直接購入できるECモール「Qoo10(キューテン)」は、韓国ファッションを愛する若い女性を中心に人気が上昇中。その魅力とプロモーションの手法について、Qoo10のファッション担当者に話を聞いた。
韓国ファッションに強いQoo10
若い女性の韓国ブームは根強い。韓国ドラマが巻き起こした第1次韓流ブーム、K-POP音楽を中心とした第2次韓流ブームを経て、数年前からはコスメやファッション、グルメを含む第3次韓流ブームが続いている。韓国のコスメやファッションが手に入る東京の新大久保では、若い女性がグルメとショッピングを楽しんでいる。
フリマアプリ「ラクマ」がユーザー3845人を対象に行った「参考にするファッション」調査(2019年6月実施)では、10代、20代がファッションの参考にしている国のトップは「韓国」だった。16年の調査から3年連続で上昇しており、同国の強さを証明している。韓国に注目する理由としては、「安くて気軽に買えるから」が68%で1位だ。安くて品質の良い商品へのニーズは若い世代ほど強い。
そんな女性たちに、現在注目されているショッピングサイトが「Qoo10」だ。Qoo10は韓国の大手通販サイト「Gmarket」から派生した日本国内向け電子商取引(EC)サイトで、運営はイーベイジャパン(東京・港)。Qoo10の中に販売者(セラー)がショップを出店するモール形式で、国内、海外合わせたセラーの数は1万1000店舗に上る。登録会員数は約1400万人で、ユーザー層は10代後半~40代前半が多く、女性が7割を占めている。特に活発に利用している層は20代の女性で、次が30代の女性となっている。
MMD研究所(東京・港)が20年6月に発表した「2020年5月総合EC・ネットスーパー利用動向調査」によれば、Qoo10は利用経験のあるECサイトの5位に入っている。Amazon(81.6%)、楽天市場(74.8%)、Yahoo!ショッピング(56.3%)、au PAYマーケット(33.1%)に続いて、Qoo10(30.1%)だ。
取扱商品はファッションとビューティー・コスメが多く、6割以上を占める。登録商品数は2950万以上あり、20年4月にオープンした「eBayダイレクトショップ」の商品も合わせると、その数は約12億にも上る。eBayダイレクトショップは米国「eBay(イーベイ)」に出品されている商品を日本円で購入できるQoo10内のショップで、Qoo10のアカウントで利用できる。
Qoo10のアプリを開くと、商品の安さに加えて、海外からの発送にもかかわらず送料無料の商品が多いことに驚く。「送料は意外と気になる。商品と同じくらいの送料がかかると納得できない。Qoo10は送料無料が多いからいい」と話す20代の女性は、韓国メーカーのプチプラコスメを購入したという。
アプリのトップページには、「韓国館」というボタンがある。「Kファッション」「Kコスメ」など、韓国のファッションとコスメを特集しているページだ。「ファッションの20%が韓国のセラーで、Qoo10でしか買えない商品も多く、他のECサイトとの差別化となっている。感度の高いユーザーを取り込めていると感じている」(イーベイジャパンファッションカテゴリー室長の丸山恵未氏)。
ファッション分野では20%が中国のセラーで、60%が日本のセラーだという。韓国、中国ともに公式ショップが出店しており、国内ではWEGO(ウィゴー)やマックハウスが公式ショップを展開している。
Twitterのプロモーションが効果的
海外のセラーから購入する場合、「商品が届かない」「商品がイメージと違った」などのトラブルが怖い。しかしECモールでは、セラーと客のトラブルにモール側は介入しないことが多い。その点Qoo10は、セラーに注意喚起することもある。韓国人や中国人のスタッフを配置し、カスタマーサービスの充実を図っている。
「積極的に介入する姿勢なので、安心して購入していただける。物流も整ってきており、Qoo10を長く使っているユーザーは海外セラーにも抵抗を感じていない。商品が到着するまで1~2週間かかることもあるため、初めて利用するユーザーは不安を感じ、問い合わせいただくことはあるが、すぐに慣れていく」(丸山氏)
Qoo10のプロモーションはWeb活用のみ。19年はテレビCMも流したが、20年からその動画素材をYouTubeで配信している。SNSに関しては、ファッションに強いInstagramからの流入が多いと思いきや、Twitter(ツイッター)が強いという。「Twitterのフォロワーは30万以上で、コスメやファッションの商品についてもTwitterからの流入が多い。定期的に行うウエルカムキャンペーンの効果は大きい。ネットでのプロモーションのほうが、地上波より効率がいいと感じている」と丸山氏は話す。
YouTubeやInstagram(インスタグラム)にも「Qoo10で買った」といった投稿が多く見られるが、「インフルエンサーやブロガーを囲い込むことは特にしていない」とのことだ。
若い世代はショッピングする際にSNSの情報を重視する。特に商品に関する本音を知りたい場合、Twitterを参考にする。Instagramのように映える必要がないTwitterには、率直な意見が投稿されるからだ。ある20代女性は「Twitterで流れてきたQoo10の商品を買った。買う前にTwitterで検索して、商品のクチコミを確認した」と話す。Twitterで支持を集めているならば、ネットでのプロモーションが売り上げに直結するのも至極当たり前に感じる。
Qoo10はアプリ、モバイルサイトを合わせて8割がスマホからの利用だ。10年前に日本へ進出したときからスマホに注力し、UI/UXともに改善を重ねてきた。SNSで情報を知り、スマホで購入するという動線が、若い世代と今の時代にマッチしているのだろう。Amazon、楽天などの大手ECサイトも、スマホからの利用者が7割を超えているとの調査データがあるが、Qoo10のスマホ利用率はそれよりも高い可能性がある。Qoo10は今後も国内、海外とも認知度の高いブランドを積極的に誘致する予定だという。ファッション分野は大手ECサイトも力を入れているだけに、その動向を注視しておく必要があるだろう。
(ITライター 鈴木朋子)
[日経クロストレンド 2020年7月22日の記事を再構成]
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