特別区の課題を徹底解説!新型コロナウイルスも対策せよ!

issue 面接対策

公務員志望者にとって、志望する自治体が抱えている課題は把握しておくべきことです。

しかし、特別区の採用試験の場合、23区一括で実施されるため、対策がやや難しいと言えます。
ある区で課題となっていることが、他の区では課題として認識されていないこともありますし、各区の方針も異なるからです。

とはいえ、面接では、特別区全般の課題や政策について問われることになります。
そのため、特別区の採用試験では、ある特定の区にのみ当てはまる課題や方針を答えることは望ましくありません。
正直、受験生にとってはかなり不親切な試験制度ですが、上手く対応できれば、他の受験生に大きな差をつけることができるでしょう。

そこで今回は「特別区全体の課題」「地域ごとの課題」を説明します。

なお、面接対策全般については下記の記事で徹底解説しています。

特別区全体の課題

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区政の課題はいくつもあり、中にはすべての区に当てはまる課題もあります。
これらの共通課題は、特別区の採用試験で出題される可能性が極めて高いので、現状を把握し、自分の考えを答えられるようにしておく必要があります。

では、共通課題にはどのようなものがあるのでしょうか。
特別区長会が特別区の普通会計決算とともに公表している報告書では、令和2年度時点の特別区の課題として、次のようなものが取り上げられています。

①大規模水害
②少子高齢化
③首都直下地震
④公共施設の更新
⑤児童相談所の設置
⑥新型コロナウイルス
特別区長会「特別区財政の現状と課題」を元に作成

これらは特別区長会が共通課題として認識しているものであり、原因から対策まで答えられることが必須となります。
では、それぞれの課題について解説していきます。

大規模水害

近年、集中豪雨などによる大規模な水害が日本各地で発生しています。
局地的な災害という認識もあるでしょうが、特別区には大きな河川がいくつも流れており、油断することはできません。
その証拠に、2019年の台風19号は特別区に大きな被害をもたらしました。

こうした状況を受け、大規模水害への取組が強化されています。
水害対策も地震と同様、「自助」「共助」「公助」が重要です。

ただし、水害への取組は、「ある程度予測できる」「頻度が高い」という点で若干異なると言えます。
例えば、気象情報をいち早くキャッチし、被害地域や規模を予測し、適切な対策を講じる能力が求められるでしょう。
また、日頃から地域住民にハザードマップや避難所などを周知しておくことも重要ですね。
河川にネットワークカメラを設置し、24時間ライブ映像を配信するなど、ICTを活用した対策も行われています。

少子高齢化

区によって進行の度合いに差はありますが、どの区でも遅かれ早かれ直面する問題です。
少子高齢化とよく言われますが、最近は『少子化』と『高齢化』が別々に大きな問題として取り上げられているので、分けて考えた方が整理しやすいと思います。

まず、『少子化』について見てみましょう。
少子化の原因は、『結婚して子供を産み育てる』ことが当たり前という価値観が崩壊したためと答える人がいますが、実はこの答えには注意が必要です。
なぜなら、そのような「価値観の変化」は、行政が打ち消すことができないからです。
論文や面接では、解決策をセットで問われるため、行政が解決しにくい問題は避けた方が無難でしょう。

そこで
・女性の社会進出が進んでいるにもかかわらず、キャリアと子育ての両立ができる環境が整っていない
・若い世代に子育てのための時間的、経済的余裕がない
など、行政が対応できる原因を挙げるのがよいでしょう。
その上で、解決策を挙げるのがベストです。

次に、『高齢化』です。
さまざまな問題が考えられますが、特別区ならではの問題として、一人暮らしの高齢者の多さが挙げられます。
一人暮らしの高齢者は社会的に孤立しがちで、地域のつながりが薄れつつある特別区では非常に大きな問題だと言えます。
まさに行政が支援すべき分野であり、見守り体制に基づく対策が必要でしょう。

首都直下地震

いつ起こるかわからない喫緊の課題です。
災害対策においては「人命の保護」と、行政の「事業の継続」が核となるでしょう。
災害時には、行政そのものが大きな被害を受け、「人命の保護」や「事業の継続」が満足にできない可能性があります。

そんな時、住民自らが自分の命を守る「自助」の姿勢と、住民同士が協力して災害に立ち向かう「共助」の姿勢が非常に重要です。
災害対策では、「自助」「共助」、そして行政からの支援である「公助」という概念を基本として押さえておかなければなりません。

公共施設の更新

災害対策と同様、待ったなしの課題だと言えます。
特別区は、財政が豊かな時代に公共施設やインフラを大規模に整備してきた歴史があります。

現在ではこれらの施設の老朽化が進み、近年はあちこちでひび割れや雨漏りなどの問題が発生しています。
特に耐震性の問題は深刻で、いつ起こるかわからない大地震に対する脆弱性が指摘されています。

一方、特別区では、財政難から施設の建て替えが思うように進まないという現状があります。
新型コロナウイルスの影響により税収が減少しているため、この問題はさらに深刻だと言えるでしょう。

そこで、「施設更新費の確保」「今後の施設計画」について、過去の失敗事例を踏まえた提案ができれば、高く評価されるはずです。

児童相談所の設置

児童虐待に関する相談は年々増え続けており、特別区でも非常に深刻な問題となっています。
都市部特有のストレスや地域のつながりの希薄さが虐待につながると考えられています。

こうした児童虐待の防止、発見、相談に対応するため、各地域に児童相談所が設置されています。
従来は東京都が各区に設置していましたが、よりきめ細かく地域に密着したサービスを提供するため、特別区にも設置できるようになりました。

2020年4月、世田谷区江戸川区に特別区として最初の児童相談所が設置され、運用が開始されました。最近の特別区におけるビッグニュースであるため、論文や面接でも問われる可能性が高いと言えるでしょう。

特別区に児童相談所が設置できるようになったことは大変喜ばしいことですが、一方で、人材や施設の確保などハード面での大きな課題があり、思うように進んでいないのが現状です。
人材や施設は各区で用意しなければならず、資金やノウハウが不足しています。

さらに、児童相談所設置に対する近隣住民の反対も懸念されますね。
港区南青山地区での住民の反対運動はまだ記憶に新しいところです。
そのため、住民との綿密な話し合い丁寧な合意形成が必要になるでしょう。

新型コロナウイルス

現在の特別区にとって、最も重要な政策課題と言えるでしょう。
新型コロナウイルスはいまだ収束の兆しを見せておらず、区の職員は対応を迫られています。

その中で、最優先とされるべきは「人命」です。
当然ながら、区民の命を守ることが行政にとっての最重要課題だと言えるでしょう。

それと同様に重要なのが、「区民の財産」を守ることです。
そのため、重症化リスクの高い高齢者への対応や、新型コロナウイルスの影響を受けた企業への支援などがポイントになるでしょう。
よく見てみると、ニュースなどで見聞きする行政の取組も、ほとんどがそこに焦点を当てています。

また、行政自体が機能を停止してしまっては元も子もないので、業務を継続できるような体制を整えることも重要ですね。
例えば、テレワークで感染症を予防したり、民間企業や他の組織と連携することで緊急時の対応力を高めることも必要でしょう。

しかし、中心的な課題は「人命の保護」「事業継続」であることを忘れなければ、論文でも面接でも落ち着いて対処できると思います。

地域ごとの課題

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ここまでは、全ての区に当てはまる課題について見てきました。
もしかしたら、自分の志望理由や携わりたい仕事と紐づけるのが難しいと感じたかもしれません。

そこで、全てとは言わないまでも、複数区が抱えている課題を確認することが重要となります。
採用する側も、全ての区に該当する課題がそれほど多くないことはよく理解していますので、複数区が該当している課題なら、十分に特別区の課題と判断してくれるでしょう。

この場合の目安になるのが「ブロック」という考え方です。
各区が協力して調査・研究・政策検討を行う場合、23区合同で行うのは困難なため、「ブロック」に分けられることが多いのです。
皆さんの志望区がどのブロックに属しているかを見てみましょう。

第1ブロック:千代田 中央  新宿
第2ブロック:文京 台東  荒川
第3ブロック:品川 目黒 大田 世田谷 渋谷
第4ブロック:中野 杉並 豊島 板橋 練馬
第5ブロック:墨田 江東 足立 葛飾 江戸川
※各区をクリックすると、その区の解説記事に飛びます。

同じブロック内でも、ある程度似たような区があるのが分かると思います。
これは、特別区が上から4~5区を「行政順」にまとめているためです。
この行政順は、明治時代に千代田区を中心に「の」の字を書くことで各区の順番を決めた習慣に由来しています(豆知識)。

これは、現在でも公式の順番として強く残っているんです。
地理的に近く、一緒に仕事をする機会も多いため、同じブロック内の区は同じような課題を抱えていることが多いと言えます。

ちなみに、研修などもブロック単位で行われることがあるので、同じブロック内の区との繋がりは結構深いんですよ。
以下に、各ブロックの課題を簡単に紹介しますね。

第1ブロック(千代田 中央 港 新宿):人口急増・待機児童
第2ブロック(文京 台東 北 荒川):高齢化・教育
第3ブロック(品川 目黒 大田 世田谷 渋谷):帰宅困難者・住民参加
第4ブロック(中野 杉並 豊島 板橋 練馬):住環境保護・住民との協働
第5ブロック(墨田 江東 足立 葛飾 江戸川):人口減少・高齢化・介護

課題や取組について調べる時は、ブロック単位で見てみると気づきを得られるかもしれませんよ。

おわりに

各区は独立した自治体ではありますが、共通の課題も多いことが分かったと思います。
特別区の採用試験は、ある特定の区の課題や方針を語るだけでは突破できないので、こうした共通の課題をしっかり把握することが重要です。

しかし、課題や方針を調べることは、やり始めるとキリがないため、時間が限られている場合は難しいかもしれません。
ただし、特別区職員になってからも役立つ内容だと思いますので、今のうちにしっかり把握しておきましょう。

あなたが最終合格を獲得し、特別区職員として働けることを心から祈っています。
どうか最後まで頑張ってくださいね。