公務員試験における論文試験では、きちんとした書き方をしていないと即座に減点されてしまいます。
特に特別区の論文試験は少し特殊なため、他の自治体を上位合格する受験生ですら、論文で不合格になることも少なくありません。
良い内容を書いているのに、単に書き方が間違っているだけで減点・不合格となるのはもったいないですよね?
そこで今回は、論文試験の採点基準をもとに、減点されないための正しい書き方を徹底解説していきます。
なお、論文対策全般については下記の記事で徹底解説しています。
趣旨を把握する
論文を書くときに最も大切なのが趣旨を把握することです。
どんなに文章力が優れていても、問われている趣旨から外れた内容を論じてしまうと大幅な減点は免れません。
実際、能力のある受験生でも、論文の趣旨を誤って把握してしまい不合格となってしまう例は少なくないのです。
特に、特別区の論文試験は設問文の量が他の自治体と比較して多いため、どこが趣旨なのか把握しづらいことで知られています。
しかし、基本的な構造を把握しておけば、きちんと趣旨を把握できるようになるでしょう。
まずは令和3年度の過去問を例に解説します。
なお、論文の過去問を下記の記事にまとめているので、対策を進めるときには参考にしてください。
①東京都では昨年、転出者数が転入者数を上回る月が続きました。転出超過等によって人口が減少すると、税収の減少や地域コミュニティの衰退など様々な問題をもたらします。また一方で、特別区の抱える公共施設の多くが老朽化しており、人口減少がもたらす更なる社会変化に対応した、施設の企画・管理・利活用が求められています。このような状況を踏まえ、区民ニーズに即した魅力的な公共施設のあり方について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。
②国際目標である「持続可能な開発目標(SDGs)」では、持続可能な生産消費形態を確保するため、天然資源の持続可能な管理や効率的な利用をめざすことが必要であると示されています。特別区においてもその目標達成に向けた一層の取組が求められており、食品ロスや廃棄物の削減を進めていくことが重要です。このような状況を踏まえ、ごみの縮減と資源リサイクルの推進について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。
このように、他の自治体と比較すると設問文の量がとても多いのが特徴です。
さて、実はこの設問文、毎年3つの要素から構成されているのです。
(1)東京都では昨年、転出者数が転入者数を上回る月が続きました。転出超過等によって人口が減少すると、税収の減少や地域コミュニティの衰退など様々な問題をもたらします。
(2)また一方で、特別区の抱える公共施設の多くが老朽化しており、人口減少がもたらす更なる社会変化に対応した、施設の企画・管理・利活用が求められています。
(3)このような状況を踏まえ、区民ニーズに即した魅力的な公共施設のあり方について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。
具体的には、次の3つの要素から構成されています。
(1)特別区の現状
(2)その現状に伴う課題・重要事項
(3)課題に対して特別区職員としてどう取り組むか
もう一方の設問文についても見てみましょう。
(1)国際目標である「持続可能な開発目標(SDGs)」では、持続可能な生産消費形態を確保するため、天然資源の持続可能な管理や効率的な利用をめざすことが必要であると示されています。
(2)特別区においてもその目標達成に向けた一層の取組が求められており、食品ロスや廃棄物の削減を進めていくことが重要です。
(3)このような状況を踏まえ、ごみの縮減と資源リサイクルの推進について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。
このように、「特別区の現状 ⇒ 課題・重要事項 ⇒ 課題に対して特別区職員としてどう取り組むか」という流れになっていますよね。
設問文は長いのですが、特に注目すべきは「(3)課題に対して特別区職員としてどう取り組むか」の部分です。
結局はこの部分こそが論文において問われていることであり、この問いに対する回答こそが、論文で書くべき内容だと言えるでしょう。
令和3年度の問題ならば、
このような状況を踏まえ、区民ニーズに即した魅力的な公共施設のあり方について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。
もしくは
このような状況を踏まえ、ごみの縮減と資源リサイクルの推進について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。
の部分ですね。
ここが問われているにもかかわらず、多くの受験生は前半部分に引っ張られがちです。
その結果、「地域コミュニティ」や「SDGs」について論じてしまうのですが、これは誤りだと言わざるを得ません。
趣旨の把握に完全に失敗しており、これだけで不合格となっても不思議ではありません。
何故なら、この問題における問いは、3つ目の要素である「区民ニーズに即した魅力的な公共施設のあり方」あるいは「ごみの縮減と資源リサイクルの推進」だからです。
特別区は論文試験の配点が極めて大きいので、受験生のためにわざわざ設問文の前半で状況説明をしてくれているのですが、それがかえって受験生を惑わせてしまっているのは皮肉としか言いようがありませんね。
話を戻すと、設問文の前半はあくまでも現状や課題・重要事項の説明にすぎません。
また後ほど解説しますが、それらの部分は序論で活用するのが最も適切でしょう。
ひとまずここでは、回答すべき内容が「一番最後の要素」についてであると理解してください。
「特別区の職員として」を意識する
特別区の論文試験における設問文には、「特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい」という一文が必ず記されています。
令和3年度の設問文を再度見てみましょう。
①東京都では昨年、転出者数が転入者数を上回る月が続きました。転出超過等によって人口が減少すると、税収の減少や地域コミュニティの衰退など様々な問題をもたらします。また一方で、特別区の抱える公共施設の多くが老朽化しており、人口減少がもたらす更なる社会変化に対応した、施設の企画・管理・利活用が求められています。このような状況を踏まえ、区民ニーズに即した魅力的な公共施設のあり方について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。
②国際目標である「持続可能な開発目標(SDGs)」では、持続可能な生産消費形態を確保するため、天然資源の持続可能な管理や効率的な利用をめざすことが必要であると示されています。特別区においてもその目標達成に向けた一層の取組が求められており、食品ロスや廃棄物の削減を進めていくことが重要です。このような状況を踏まえ、ごみの縮減と資源リサイクルの推進について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。
このように、特別区の職員目線で書くことが求められていますね。
そのため、職員目線で書いていない、職員にはできないことを書いている場合は高得点は望めません。
例えば、課題解決のために法律等の改正を挙げることは推奨できません。
何故なら、それは立法府(ないしは区議会)にしかできないことであり、職員にはできないことだからです。
それ以外に、許認可の基準を見直す、補助金を交付するという解決策もよく見かけますが、安易に書くことは推奨できません。
何故なら、許認可基準の見直しや補助金の交付は最後の手段であり、通常はより穏健な解決策のほうが望ましいと考えられるからです。
特に望ましいのが、「協働」です。
区民との協力や、企業・大学との連携など、職員の積極的なコミュニケーションによって解決を目指すのが好印象でしょう。
もちろん、許認可基準の見直しや補助金の交付と書くことが全面的に駄目というわけではありません。
設問の内容によっては、それらの解決策が相応しいこともあるでしょう。
しかし、可能な範囲で、「イチ職員」でもできるような解決策を意識していくことは重要です。
書き方のルールを守る
減点の多くは書き方のルールが守られていないことが原因です。
内容的に優れていても、減点が積み重なれば不合格まっしぐら。
知ってさえいれば避けられるものばかりですので、絶対に把握しておきましょう。
文字数
指定された文字数の不足、あるいは超過は即不合格となります。
例えば、特別区Ⅰ類採用試験の論文試験においては、注意書きとして「字数は 1,000 字以上 1,500 字程度です」と記されています。
したがって、1000字未満、1500字より多い文字数の場合、それだけで不合格となります。
これは絶対に避けるべき事態ですね。
では、どの程度の文字数が適切かというと、最大字数の8割程度、つまり1200字以上は書くことを推奨します。
というのも、しっかり趣旨を把握したうえで論文を書くとなると、少なくとも1200字程度は書くことになると考えられるからです。
これは決して「1200字に満たないと減点される」ということではありません。
しかし、1200字に満たないとなると、本論の内容が不足していたり、どこかを書き洩らしている可能性があります。
そのため、実際に書いてみて1200字に満たない場合、急いで内容を見返すべきだと言えるでしょう。
ただし、終了時間が迫っている場合は修正が難しいかもしれないので、誤字・脱字のチェックを優先して欲しいと思います。
誤字脱字
これも採点する側にとっては分かりやすい基準ですね。
特別区のように評価基準が非公表の場合でも、「誤字脱字1つにつき数点マイナス」といった基準は存在しているはずです。
どれだけ内容が素晴らしくても、誤字脱字が複数あれば、それだけで大幅な減点となりかねません。
あまりにもったいないので、できるだけ誤字脱字ゼロを目指しましょう。
下記にありがちなミスをまとめたので、参考にしてください。
【誤字・脱字の一例】
(×)意織 → (○)意識
(×)特長 → (○)特徴
(×)指適 → (○)指摘
(×)適格 → (○)的確
(×)完壁 → (○)完璧
(×)革進 → (○)革新
(×)低抗 → (○)抵抗
(×)確立 → (○)確率 ※割合等を指す場合
(×)票識 → (○)標識
(×)不可決 → (○)不可欠
(×)初める → (○)始める
(×)今だに → (○)未だに
(×)~しずらい → (○)~しづらい
(×)シュミレーション → (○)シミュレーション
(×)コミニュケーション → (○)コミュニケーション
論文のルールを守っていない
論文には守るべきルールがあり、これを守らないと即座に減点対象となる可能性が高いです。
下記に基本的な論文のルールをまとめました。
論文を書き始めたばかりの受験生は、このルールを参照しながら書いていくといいでしょう。
・一番はじめの書き出しは1文字あける。
・段落の始まりは必ず改行し、段落の書き出しは1マスあける。
「(カギカッコ)などの記号ではじまる場合でも1マスあけ、「 を2マス目に入れて書き出す。
・。 (句点) 、 (読点) 「 」 (カギカッコ)は1マス使う。
ただし、これらが行のはじめにきてしまう場合は、前の行の最後の文字と一緒に1マスに入れる。
・アルファベットは原則、大文字なら1文字を1マス、小文字は2文字を1マスで書く。
・アラビア数字を使う場合は、2文字以上なら1マスに2文字ずつ入れる。
(例)2022 → 1マス目に20、2マス目に22と書く。
・!(感嘆符)、?(疑問符)、…(三点リーダー)の記号は使わない。
読みづらい字・クセ字
読みづらい文字が1つでもあると、それだけで減点される可能性があります。
また、細かい漢字を書くときに、どこかの画が潰れていたり、あるべき画がなかったりするのも減点対象です。
特に目立つのが、曖昧な漢字を書くときに、分からないので雑に書いて誤魔化す手法(?)ですね。
誤字として認識され、減点となる可能性があります。
文字が綺麗かどうかは主観的なものですから、きちんと読める字であれば減点はされません。
しかし、読みづらい字やクセ字が多いのは印象があまり良くないため、結果として得点が伸びづらくなってしまうという可能性は捨てきれません。
逆に言えば、同じような内容であったとしても、文字が読みやすいだけで印象が良くなり、場合によっては採点者の裁量点をも獲得できるかもしれません。
本試験で読みやすい字を書くためにも、普段から丁寧な字を書くことを心掛けましょう。
表記方法がバラバラである
文章の書き方には大きく分けて「です・ます調」と「だ・である調」の2種類があります。
学術的な文章では「です・ます調」は好まれませんので、「だ・である調」を使いましょう。
これらが混在するとかなり減点されますので、注意が必要です。
おわりに
特別区の試験において論文は最も重要な科目であり、論文の出来が合否を左右すると言っても過言ではありません。
そこで順位が決まり、皆さんの将来も決まってくるのです。
そのため、奇をてらった対策ではなく、地道な対策をオススメします。
皆さん次第ではありますが、それこそが確実な合格方法であり、これまで指導してきた合格者たちにもそのように指導してきました。
避けては通れない科目ですので、ぜひ全力で取り組んで欲しいと思います。
皆さんの合格をお祈りしています。