【特別区】論文対策:過去問から傾向を掴む!予想テーマも伝授!(2023年度受験者向け)

ronbun 論文対策

数ある公務員試験の中でも、最も論文の重要度が高いと言われているのが「特別区」です。
特別区の合格を勝ち取るためには、入念な論文対策が必要となります。

とはいえ、

「でも、どのテーマからやればいいの…」
「広すぎてどこから手をつければ…」
「傾向が知りたい…」

と困っている受験生も多いと思います。

そこで今回は、特別区の20年分の過去問から見える傾向と、求められる対策を述べたいと思います。
なお、傾向の分析にあたっては、可能な限り統計データに基づくよう意識しました。

ただし、全ての内容が統計データに基づいているわけではありません。
中には、私の受験経験や、長年の指導経験によって判断した部分も存在します。
その部分については「ここはあくまでも私の意見です」など、適宜記述をしていますので、あらかじめご了承いただければと思います。

特別区は最終合格の順位が高い人から希望区の試験に呼ばれることになるため、配点の大きい論文で高得点を獲得することが極めて重要です。

この記事の内容を参考に、最上位での合格を目指しましょう!

特別区の傾向と対策

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特別区は「過去問を制する者が試験を制す」と言われます。
なぜなら、過去問とよく似た問題が頻繫に出てくるからです。

ですから、論文の過去問をじっくり分析し、出題傾向を把握したうえで対策を進めなければいけません。

それでは早速、特別区の過去の出題テーマを確認し、分析に入りましょう。
なお、特別区Ⅰ類採用の論文過去問については、下記の記事に掲載しています。

過去の出題テーマと分析

年度 テーマ① テーマ②
2022 限られた行政資源による区政運営 地域コミュニティの活性化
2021 公共施設のあり方 ごみの縮減と資源リサイクルの推進
2020 先端技術を活用した区民サービスの向上 都市における地域の防災力強化
2019 外国人の増加に伴い生じる新たな課題 認知症高齢者への対応
2018 住民との信頼関係の構築 子どもの貧困問題
2017 空き家問題 女性の活躍推進
2016 ユニバーサルデザインのまちづくり ICT利活用の促進
2015 自治体事務のアウトソーシング ワークライフバランスの実現
2014 自転車、まちづくり グローバル化
2013 東京の魅力発信 いじめ・体罰問題
2012 自治体の説明責任 人口減少社会、高齢社会
2011 災害・震災に強い地域社会 地域コミュニティの活性化
2010 待機児童問題 生活基盤施設のあり方と合意形成
2009 安心・安全な地域社会 学校選択制、学校と地域社会
2008 都区制度、行政運営 情報通信ネットワーク
2007 住民との協働 環境問題
2006 少子化 安全・安心な地域社会
2005 地域福祉の向上 地震対策
2004 分権型社会 環境負荷、持続可能な社会

特別区の論文は問題文がとても長いので、上記のテーマはその要約です。
(2003年度以前は短文問題のため省略しています。)
一覧を見てみると、かなり幅広いテーマが出題されていることが分かりますね。

さて、じっくりテーマを眺めてみると、完全に同じテーマが出たと言えるのは2006年と2009年の「安心・安全な地域社会」のみですね。
それ以外のテーマは実は別物なんです。

つまり、過去問から「直接」読み取れる頻出テーマはこの段階ではありません。

そして、注意が必要なのが「一見似たようなテーマでも、書くべき内容は全く異なる」ということです。
これは本当によくあるミスなので絶対に押さえてください。

例えば、2012年「人口減少社会、高齢社会」と2019年「認知症高齢者への対応」はパッと見ただけではどちらも「高齢化」がテーマに見えますよね?
しかし、実際の問題文を読んでみると、まるで違う内容だと分かるはずです。

【2012年】
東京都では、2020年頃を境に人口が減少に転じることが予測されています。一方、現在すでに20%を超えている高齢化率は、今後も更に上昇を続けることが見込まれています。特別区が、これまで経験をしたことのない人口減少社会、高齢社会を迎える中で、暮らしやすい地域はどのようなものかを述べた上で、それをどのように実現していくか、あなたの考えを論じなさい。

【特別区Ⅰ類】論文過去問一覧(2002年度~2022年度)より引用

【2019年】
我が国では、今後のさらなる高齢化の進展に伴い、認知症高齢者の大幅な増加が見込まれています。こうした中、特別区では認知症高齢者の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域で、自分らしく暮らし続けることができる地域社会を実現するための様々な取組を推進しています。このような状況を踏まえ、今後急増することが見込まれる認知症高齢者への対応について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。

【特別区Ⅰ類】論文過去問一覧(2002年度~2022年度)より引用

2012年は「人口減少社会、高齢社会に対する暮らしやすい地域の実現」が問われている内容であり、2019年は「認知症高齢者への対応」が問われています。

これで書く内容が同じだった場合、確実に大幅な減点となるでしょう。

さらに例を挙げれば、2007年「住民との協働」と2018年「住民との信頼関係の構築」では求められる視点が全く異なります。

【2007年】
社会状況が変化し、価値観が多様化する中、様々な地域課題の解決には住民との協働が不可欠となっています。こうした状況において、特別区はどのように住民参加の仕組みを構築し、住民との協働を進めていくべきか、あなたの考えを論じなさい。

【特別区Ⅰ類】論文過去問一覧(2002年度~2022年度)より引用

【2018年】
特別区では、安全・安心のまちづくりや環境負荷の軽減をはじめ、区政の様々な分野で住民と協働した取組みが展開されています。今後、人口減少や少子高齢化の進展など社会状況の変化により、地域の抱える課題がますます複雑・多様化する中にあっては、行政と住民が連携を深め、課題解決に取り組むことが更に重要となってきます。その基礎となるのが住民との信頼関係です。このような状況を踏まえ、住民との信頼関係の構築について、区政の第一線で住民と接する特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。

【特別区Ⅰ類】論文過去問一覧(2002年度~2022年度)より引用

やはり問われている内容が大きく異なりますよね?
これをどちらも「住民との協働」と捉えるのは、出題意図を完全に誤解していると言えるでしょう。

このように安易なグルーピングによって出題テーマを絞り込み、中途半端にしか論文対策をやらないのは非常に危険です。

多くのテーマを対策するのはとても大変なことですが、本番での大失敗を避けるためにはやむを得ないと理解しましょう。

出題傾向と予想テーマ

特別区の論文では、過去問と完全に同じテーマが出題されることは少ないことが分かりました。

それでは、出題傾向を掴むヒントは何もないのでしょうか?
そうではありません。実はあるのです。

説明のために、まずは下記の表をご覧ください。

年度 論文テーマ トピック
2022 限られた行政資源による区政運営 デジタル庁発足、「経済財政運営と改革の基本方針2021」閣議決定(2021)
地域コミュニティの活性化 地域コミュニティに関する研究会発足(2021)
2021 公共施設のあり方 「公共施設等総合管理計画」の見直し(2021)
ごみの縮減と資源リサイクルの推進 「SDGsアクションプラン2021」 策定(2020)
2020 先端技術を活用した区民サービスの向上 地方自治体における業務プロセス・システムの標準化及びAI・ロボティクスの活用に関する研究会発足(2018)
都市における地域の防災力強化 台風19号(2019)、北海道胆振東部地震(2018)
2019 外国人の増加に伴い生じる新たな課題 出入国管理及び難民認定法改正(2018)、東京五輪(2021)
認知症高齢者への対応 「認知症施策推進大綱」発表(2019)
2018 子どもの貧困問題 子供の貧困対策に関する有識者会議設置(2016)

お分かりいただけるでしょうか?
実はここ10年間以上、国家レベルでの法改正やテーマが直後の特別区の論文試験で出題されています。

本試験で問われるのは特別区という地域での取組ですが、ネタ元のほぼ全てが国の動向に絡むものになってますよね。
中でも、主たる法改正重要な要綱発表などが取り上げられるケースが多いです。

特別区は基礎自治体なのに、どうして国の動向に絡むテーマが出題されるのか、違和感を覚える人もいるかもしれません。
しかし、特別区は我が国の首都東京の中核であり、国とは切っても切れない関係にあります。

それでは、このような傾向を踏まえつつ、2023年度の予想テーマを紹介したいと思います。
ここ数年の国家レベルの動きから、出題可能性が高いテーマは以下のとおりです。

予想テーマ トピック
環境問題 「地球温暖化対策計画」閣議決定(2021)
デジタル化 「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」策定(2022)
循環型社会 プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律施行(2022)
子どもの貧困 「子供の貧困対策大綱」閣議決定(2019)
女性活躍の推進 第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」閣議決定(2019)
コロナ禍での業務継続 第二百八回国会における岸田内閣総理大臣施政方針演説「BCP計画遂行」(2022)

ここ数年間連続で予想が当たっているので、今年度の出題可能性も非常に高いと言えるでしょう。

どのテーマが出題されてもおかしくないため、ぜひ優先的に対策してください!

出題文の変化

出題文をよく見てみると、この20年間で3回ほど表現が変化しています。
具体的には、最も重要な「問いかけ」が変化しているんですね。

【第1期(2008年まで)】
~するためにはどのように取り組んでいくべきか、あなたの考えを論じなさい。
【第2期(2009~2013年まで)】
要因について(あり方について)あなたの考えを述べ、どのように取り組むべきか論じなさい。【第3期(2014~2022年)】
特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。

こうして見てみると、2008年まではかなりゆるい問いかけですよね。
「特別区職員として」という指定もなく、割と雑な提案をしても合格できた時期です。

ところが、2009年から雰囲気が大きく変わります。
この時期は、テーマの要因についてまで述べなくてはいけませんでした。
テーマに関する深い知識と、それを前提とした自身の意見が必要だったので、この時期の受験生は苦労したものです。

そこからは、流石に難易度が高すぎたと認識したのでしょう、この形での出題は終わりを迎えました。
そして2014年から現在に至るまでは「特別区の職員としてどのように取り組むべきか」という形に落ち着き、以前よりは書きやすくなったと言えるでしょう。
来年度以降もこのパターンが続くと考えられます。

もちろん、この形になってからある程度の時間が経ちましたので、傾向が変化する可能性はあります(一部の予備校は既にそう指摘しています)。
そのような変化に対応するためにも、数多くのテーマについてしっかりと知識を持ち、万全の態勢で試験に挑めるようにしておきましょう!

出題テーマ分析方法

analysis

単刀直入に言ってしまうと、論文は出題テーマを知っているかどうかで勝負が決まります。
教養・専門試験の場合、1問知らない問題があったとしても他の問題を解ければ問題ありませんが、論文の場合はテーマを知らなければその時点で終わりです。
非常に過酷な試験だと言えるでしょう。

このような事情があるため、特別区の論文ではテーマが2つ用意されているのです。
つまり「どちらかを書いてくれれば大丈夫ですよ」という温情的な配慮ですね。

では、実際問題として、どのくらいの数のテーマを準備しておけばいいのでしょうか?
私が指導してきた上位合格者の例で言うと、20~25個程度準備している人が多かったですね。
私が受験した時にも、だいたい20個前後は準備していたので、そのくらい準備しておくと良いでしょう。

ありとあらゆるテーマを分析するのは現実的には難しいと思います。
それでも、1つでも多くのテーマを分析しておくとグッと合格に近づきますよ!

テーマ分析のステップ

テーマ分析を行うときには、次のステップで進めてみましょう。

1. 調べたいテーマを1つ設定する(例:子育て支援)

2. テーマの現状と背景を調べ、全体像を掴む(例:待機児童数は減少傾向にある)
序論で書く内容

3. テーマの主要課題を把握する(例:保育の量よりも質が課題となりつつある)
 本論で書く内容(最も重要)

4. 職員として主要課題にどう取り組むか考える(例:保育士の待遇改善を推し進める)

特に手順3の内容については、反射的に書けるレベルに持っていく必要があります。

例えば、教養試験や専門試験の訓練をしっかり行っている受験生だと、問題文と選択肢を見て「あぁ、過去問と同じパターンか。じゃあこれが正解だな」と瞬間的に答えにたどり着けることがあるでしょう。

同じ話は論文についても当てはまります。
問題文を読んだときに「あぁ、準備してたこのテーマか。これならこう書けばイケるな」と反射的に内容が浮かぶようになれば、試験本番でも焦ることなく論文を書き上げることが出来ます。

テーマ分析の情報ソース

基本となるのは各区の公式HPです。
ただ、HPは区民向けの情報が中心となっているため、区の課題や取組について探すのは少し大変かもしれません。

また、やや難易度が高くなりますが、各区の区議会HPも参考になると思います。
今現在各区で話題になっていることが取り上げられているため、情報の鮮度は高いと言えるでしょう。

それと、あまり知られてはいませんが極めて有用な情報ソースとして、特別区長会調査研究機構が挙げられます。
特別区で話題となっているテーマについて、文字通り専門的な調査・研究を行う機関です。
特別区の課題や求められる取組について、深いレベルまで学ぶことができるでしょう。

テーマ分析は手間の掛かる面倒な作業ですが、この辺りの内容は上位合格者なら当たり前に押さえてくるので、確実な合格を目指すためには絶対に行うべきです。
なお、特別区の課題については、下記の記事で徹底解説しています。

特別区に固有の事情を踏まえる

併願先として特別区を受験している人に多いのが、特別区ではなくても言える一般論を書く、というものです。
ただし、それでは上位合格は望めません。
特別区に固有の事情を踏まえた上で、課題や取組を書けるかどうかが評価の分かれ目になります。

なぜなら、特別区としては「特別区が第1志望!絶対に入りたい!」という人を最優先で採用したいからです。
特別区は試験日程が非常に早いため、毎年の併願者がとても多いことで知られています。
そのため、途中辞退や内定辞退が多いことに特別区は毎年頭を抱えてきました。

こういった事情があることから、論文試験において、特別区に固有の事情をしっかり踏まえている受験生に対しては、非常に高い評価を与えています。
書店に売られている論文のテキストや、予備校の総合コース(あるいは地方上級コース)における論文指導では、特別区に固有の事情や課題についてほとんど言及がありません。
一般論に終始しており、特別区に適用することは非常に困難でしょう。

したがって、上位合格を目指す場合には、区議会HPや特別区長会調査研究機構などから特別区に特化した情報を収集し、それを分析・研究していくのが王道です。

なお、特別区独自の取組や政策については、下記の記事で徹底解説しています。

特別区の論文トレーニング方法

training

論文トレーニングの基本は、何と言っても「実際に紙に書く!」ことです。
とても原始的に思えるでしょうが、書いた分だけ上達するのは間違いありません。
ひたすら書いていく中で、書き慣れとでも言うべき感覚が徐々に掴めてくるはずです。

何枚くらい書けばいいのかについては明確な基準があるわけではありませんが、私が指導してきた上位合格者は想定できるテーマをすべて紙に書いていました。
つまり、最低でも20枚は書いている計算になりますね!

時間がある人にはそのくらい追い込んで欲しいところですが、10枚前後書くだけでもカンは掴めると思います。

残念ながら、どのくらいのスピードで書かなければいけないか、制限時間がどのくらい厳しいのか、こういった感覚は書いていく中でしか掴むことができません。
テーマ分析が十分でなかったとしても、早めに書くことへの慣れを養っていくべきだと思います。

また、論文を書いてみて初めて気付くこともたくさんあります。
例えば、テーマ分析を十分にやったと思っていても、いざ書いてみると知識や取組が出てこないこともザラにあります。
そこで改めてテーマについて復習してみると、以前よりもずっと深く理解することができるでしょう。

こういった地道な作業を反復することでしか書く力はつきません。
初めのうちは書けなくて当たり前ですから、試験当日まで粘り強くトレーニングを続けてください。
必ず書けるようになります!

本番を意識したトレーニング

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論文は教養試験・専門試験と異なり、ちょっとしたミスが大きな減点につながる試験です。
普段は良い論文を書けている受験生でも、試験当日に大崩れすることはザラにあります。

そのため、試験当日に安定して論文を書くためには、常日頃から本番を意識したトレーニングを積むことが重要だと言えるでしょう。
そこで、まずは特別区採用試験における課題式論文について、あらためて内容を確認してみましょう。

・1次(筆記)試験科目
Ⅰ類採用:教養択一試験→専門択一試験→課題式論文 の順
経験者採用:職務経験論文→教養択一試験→課題式論文 の順
氷河期採用:教養択一試験→課題式論文 の順
・制限時間 80分(経験者採用は90分)
・2題のうち1題を選択し解答
・文字数 1000字以上1500字程度
・横書き
・社会への関心、思考力、論理性等が問われる
・すべての区分で同じ論文課題が出題(保健師区分を除く)

Ⅰ類採用試験・経験者採用試験・氷河期採用試験、いずれにおいても、課題式論文は試験の最後に実施されます。
つまり、当日最も疲労しているタイミングで試験が行われるということですね。

実は、ここは無視できないほど重要なポイントなんです。
つまり、教養試験や専門試験を終えて疲労困憊した状態では、思った以上に論文が書けないものです。
そのため、普段から「疲れた状態で論文を書く」ことに慣れておいた方がいいでしょう。

具体的には、直前期に入ったら、一日の勉強の一番最後に論文を書く時間を設けるのがオススメです!

それと、答案用紙は横書きです。
特別区の採用試験が始まって以来、ずっと横書きが続いていますから、来年急に変わってしまうことはないでしょう。
このため、論文を書く練習をするときには、本試験と同様の横書きの用紙に書くようにしてください。

というのも、横書きと縦書きでは論文の書き方についてのルールが大きく異なるからです。
詳しくは下記の記事で解説しているので、確認してみてくださいね。

さて、制限時間は80分(経験者採用は90分)ですが、実際に書いてみると時間が非常に少ないことが分かります。
書き慣れていない受験生にとっては、時間内に書ききるのはかなり難しいでしょう。
その場合、形式面でも内容面でも中途半端な論文になってしまう可能性が高いです。

実際に書くトレーニングをしっかり行い、時間感覚を掴んだうえで試験本番に挑みましょう!

【究極の論文対策】模範解答の読み込みと写経

ultimate

これまで論文対策の方法について書いてきましたが、最も効率の良いトレーニング方法は、模範解答を読み込んだ上で写経をすることです。
費用対効果で言えば、これが究極のトレーニングだと言えるでしょう。

ここで言う写経とは「模範解答を見て、そっくりそのまま同じ論文を書く」ことです。
時間のない人は模範解答を読み込むだけでも効果があるでしょう。
模範解答を見ながら、一言一句同じように書いてみることで、論文の組み立て方やポイント、守るべきルール、時間感覚や書くべき文量まで学ぶことができます。

それ以外にも、テーマ分析に必要な膨大な時間を削減することにも繋がるでしょう。
なぜなら、模範解答を覚え込む中で、結果として頻出テーマの関連知識を習得できるからですね。

これまで述べてきたように、論文の力をつけるためには実際に書くことが不可欠です。
とはいえ、むやみやたらと書くよりは、模範解答を参考にしながら書く方がはるかに効率的でしょう。

予備校不要論のウソ

なお、この方法は「コストパフォーマンスには優れている」と言えますが、予備校での講義などを併用した方が望ましいのは言うまでもありません。

アドバイザー等の中には「予備校での講義はムダ」「模範解答さえあればいい」と極端な主張をする人もいますが、これは大きな間違いです。
模範解答から外れたテーマが出てきた場合、模範解答だけで練習をしてきた人は太刀打ちできません。

そのため、論理的な思考や文章力、幅広い知識や論文の基本的な作法などを講義を通じて学ぶことはとても価値のあることです。

ただ、受験生の中には「対策を始めたのが遅いので短期間で何とかしたい」「通っている予備校が特別区に絞った対策をしていない」という人もいるでしょう。
その人たちにとっては、特別区の模範解答を使って、何とか戦えるレベルにまで持っていくのは合理的だと言えます。

しかし、それは決して予備校が不要であることを意味しません。
予備校を使えるなら使った方がいいのは事実ですから、予備校不要論者の意見を鵜呑みにしないよう注意してくださいね。

特別区の模範解答を手に入れるには?

さて、ここまで模範解答を使ったトレーニングを推奨してきましたが、肝心の模範解答が手に入らなければトレーニングは行えません。

では、どうやって手に入れればいいのでしょうか?

自ら書き上げる

ひとつには、模範解答を自ら書き上げてしまうというのが考えられます。
一部の合格者は、かなりの時間をかけてテーマの分析を行い、各テーマについてゼロベースで論文を書いて「自分なりの模範解答」としていました。

ただ、このやり方はとても大変だと言わざるを得ません。
特別区の論文においては、分析すべきテーマが非常に多いのが特徴です。
また、市販の論文の参考書などは国家公務員や県庁・市役所向けの内容がほとんどであり、残念ながら特別区に絞った分析は行われていません。

とはいえ、ある程度時間に余裕がある人にとっては、自分なりに書き上げてみるのもひとつの選択肢だと思います。

その場合には、この記事で紹介してきた区議会HPや特別区長会調査研究機構などから特別区に特化した情報を収集していくのがよいでしょう。

模範解答集を利用する

既に述べたように、模範解答をゼロベースで書き上げるのは大変な手間がかかります。
しかも、書き上げたとしても、そのクオリティが合格を狙えるものかどうかは未知数です。

そのため、昨今の特別区採用試験においては、模範解答集を利用するのが割と一般的になっています。
説明会への参加、面接カードの作成、教養試験・専門試験対策などがある中、論文を大量に書き上げるのは至難のワザですから、無理もない話だと思います。

上記の模範解答集は予想テーマや頻出テーマを網羅しており、特別区Ⅰ類採用に完全特化したものです。
経験者採用や氷河期採用には対応していませんが、Ⅰ類採用での上位合格を目指すのなら最早必携だと言えるでしょう。

その他の候補としては、寺本康之さんの『小論文バイブル』などが挙げられます。
ただし、特別区に固有の事情を踏まえた内容とは言えないため、これのみで対策するのは少し危険かもしれません。
第1志望が国家公務員や市役所・県庁などの場合には、参考にするのはアリだと思います。

模範解答集を使わないという選択肢もあるかもしれませんが、短期間で論文対策を行いたい受験生にとっては、勉強時間を削減し、その他の科目に時間を使えるようになるのでとても有効な対策法だと思います。

特別区の1次試験は論文の配点が高いと言われていますから、模範解答集を使って確実な合格を目指していきましょう。

あなたが最終合格を獲得し、特別区職員として働けることを心から祈っています。
どうか最後まで頑張ってくださいね。