【完全解説】特別区Ⅰ類採用試験ガイド:申し込みから対策方法まで!

saiyoshiken-gaiyo 特別区ガイド

特別区は千代田区、新宿区、練馬区といった様々な区からなっており、各区とも独立した自治体です。
しかし、職員の採用試験は共同で行っています。

つまり、

「港区の職員になりたい!」
「地元の足立区がいい!」
「杉並区で公務員として働きたい!」

といったときには、まず各区が共同で行っている「特別区採用試験」に最終合格する必要があります
その後、区ごとに行われる面接試験(通称「区面接」)を受けて内定を勝ち取れば、その区で働けるという流れですね。

といっても、いきなり言われてもよく分からないと思います(笑)
そこで今回は、そんな複雑な特別区採用試験について、誰にでも分かるように徹底解説していきます!

・受験可能年齢は22~31歳まで
・教養試験、専門試験、論文試験、面接試験が課される
・特別区Ⅰ類採用試験に最終合格した後、各区ごとの採用試験がある
・希望区に採用されたいなら上位合格が必須
・最終合格は総合得点で決まる(リセット方式ではない)
・1次試験は論文の配点がとても大きい
・論文対策が極めて重要

受験資格

qualification

採用年の4月1日時点で22~31歳の人、もしくは21歳以下の大学卒業見込みの人が対象です。

例えば2023年に受験する場合、就職する2024年4月1日時点で31歳ならば受験できます。
逆に、受験時に31歳でも翌年の4月1日までに32歳になる方は、受験できません。
受験時の年齢ではない点に注意が必要です。

ちなみに、大卒でなくても受験は可能です。
大学中退、専門学校卒、高卒、フリーターでも問題ありません。

年齢要件さえ満たせば、住所、年齢、学歴等が評価に影響を及ぼすことはないのです
特別区在住だと有利とか、北海道や沖縄在住だと不利になるとか、そういうこともありません。
年齢も、31歳までなら完全に平等に取り扱ってもらえます。
学歴も同様で、東大卒だろうと高卒だろうと、何ら評価に差は出ません。

独自の採用システムを徹底解説

recruitment-system

まず、採用内定までの流れについて解説します。
ざっと簡略化すると、以下の5ステップが必要です。

1.特別区への受験申込
2.特別区採用試験を受験
3.特別区採用試験に最終合格
4.各区ごとの面接を受験
5.区からの内定を獲得

注意して欲しいのが、「特別区採用試験」「各区ごとの採用試験」2段階に分かれているところです。
特別区採用試験に合格しただけでは、各区で働くことはできません
合格発表後に、合格者のみを対象に行われる各区ごとの面接、通称「区面接」に合格して、はじめて内定となります
では、令和4年度のスケジュールを参考にしながら、内定までの流れを見ていきましょう。

①3/18~ 試験・選考案内・申込書の配布開始

②3/18~ 受験申込
⇒原則インターネット申込
⇒面接カードを作成・記入する(面接カード対策はコチラ
⇒入りたい区を第1~第3希望まで書く。

③5/1  1次試験・選考

⇒筆記試験(教養試験+専門試験+論文試験)④6/24  1次試験合格発表過去問はコチラ
⇒合格通知に2次試験の日程・集合時間・試験会場が記載⑤7/5~ 2次試験面接対策はコチラ
⇒個別面接1回(通称「人事委員会面接」)⑥8/3  最終合格発表⑦8/3~ 区面接
⇒最終合格順位、希望区等を考慮し、特定の区から面接の電話が来る。
※自分の希望区から連絡が来るとは限らない。

⑧採用内定

⇒受けた区から内定の連絡があれば試験終了
⇒仮に不合格となった場合には、別の区からの面接の電話を待つことになる。

このように、一般的な公務員試験と同様の「特別区採用試験」を受験したうえで、最終合格後に「区面接」で各区から内定を勝ち取る必要があるのです。

また、国家公務員試験における官庁訪問とは異なり、自分からどの区の面接を受けるかを選ぶことはできません
「最終合格順位」と「受験申込のときに書いた3つの希望区」などを参考に、最も適切な区が選ばれ、その区から最終合格者に区面接の電話が来ます
そして、その区の面接を受験し合格すれば、内定となります。

仮に残念な結果に終わったとしても、別の区から面接の電話が来ることになります(来ない場合もありますが…)。
なお、面接対策全般については下記の記事で徹底解説しています。

特別区採用試験の倍率

Competition-rate

大変人気のある組織ですが、採用人数が多いこともあり倍率は標準的な水準です。
著名な民間企業の採用倍率が数十倍、数百倍に達することと比較すると、まだ入りやすいほうだと言えるでしょう。

なお、倍率についての詳細な分析は下記の記事で行っております。

さて、近年の倍率は下記のとおりとなっています。

【令和3(2021)年度】

competitive-ratio-2021

令和3年度 I 類採用試験【一般方式】実施状況より引用

【令和2(2020)年度】

competitive-ratio-2020

令和2年度 I 類採用試験【一般方式】実施状況より引用

倍率のカラクリに注目

ただし、この倍率にはあるカラクリがあるのです。
次の表は、2021年の採用試験の実施結果です。

competitive-ratio-2021-jimu

最終倍率は4.8になっていますが、算出方法は「1次試験受験者÷最終合格者」です。
ここで見ていただきたいのが、1次試験合格者数2次試験受験者数の部分です。

competitive-ratio-2021-focus

1次試験合格者のうち、約1000人が2次試験を受けていないことがわかります。
しかし、倍率の算出にあたっては、こうした2次試験を受けていない人も含まれてしまっているので、実際の倍率は4.8を下回るということになります。

真の倍率は?

では、真の倍率はどうなるのでしょうか?
これは「実際の受験者数÷最終合格者数」で算出できますね。
具体的には、次のとおりです。

competitive-ratio-true
これが特別区の真の倍率です。
このように見てみると、第一関門である1次試験のほうが競争が激しいことがわかりますね。

2次試験の倍率は高くはありませんが、特別区は面接の配点比率が非常に高いと考えられており、1次試験の結果をひっくり返すほどだと指摘されています。
そのため、上位での最終合格を目指す場合には万全の対策が必要だと言えるでしょう。

人気区となると、倍率は跳ね上がる

ここまで解説してきた倍率は、あくまでも「特別区採用試験の倍率」です。
すなわち、最終合格者を対象に行われる区面接の倍率はまた別物だということです。

なお、区面接においても不合格(採用漏れ)は存在します
何より、人気区を志望している場合、区面接からが本番と言っても大げさではありません。

実際、人気区における区面接の倍率は非常に高いと考えられます。
例えば、人気区の1つである港区の採用予定者数が40人だったとします。
合格者2000人のうち、200人が港区を第一希望にしていた場合、港区の倍率は5倍ということになります。
最終合格に至るまでの倍率に加えて、この5倍という倍率を考慮すると、東京都庁や横浜市役所などの人気自治体をはるかに上回る倍率だと言えるでしょう。

したがって、希望区からの内定を勝ち取るためには、最終合格を勝ち取る以上の対策が必要となるのです。

なお、下記の記事では特別区の人気区・不人気区など、志望区について考察しています。
希望区選びで悩んでいる方は是非ご参照ください。

知らなきゃ損する特別区の特徴!

feature

他の自治体と併願しやすい

特別区Ⅰ類採用試験の日程は、他の自治体の試験よりも1~2か月ほど試験日が早いのが特徴です。
つまり、他の多くの自治体と日程がバッティングしないため、併願先を多数確保できるのです。

もちろん中には、他の自治体が第一志望で「特別区は併願先の1つ」という受験生も相当数います。
2次試験の辞退率の高さからも、これは明らかですね。
何より、特別区は筆記試験の内容がスタンダード(論文を除く)なので、他の自治体と併願しても負担になりにくいと言えるでしょう。

東京都庁Ⅰ類Bは併願不可能

特別区Ⅰ類採用試験は、東京都庁Ⅰ類B採用試験と日程がバッティングしているため併願はできません。恐らくは、併願を防ぐために両組織間で日程の調整が行われているのでしょう。

ただし、東京都庁Ⅰ類Aという「大学院生や既卒者」を主な受験生として想定した試験種であれば、特別区と日程がバッティングしないため併願が可能です。

経験者採用試験は併願不可能

注意しておきたいのが、特別区Ⅰ類採用試験と特別区経験者採用試験は併願不可能だという点です。
皆さんの中には、Ⅰ類と経験者採用のどちらの受験資格も満たしている人もいるでしょう。

しかし、特別区人事委員会の公式HPでは下記のように記述されています。

I類採用試験【一般方式】、【土木・建築新方式】と経験者採用試験・選考、就職氷河期世代を対象とする採用試験の併願はできません。

令和4年度Ⅰ類採用試験【一般方式】のご案内より引用

上記のとおり、Ⅰ類と経験者採用の併願はできないので、どちらを受験するか早めに決めておきましょう

ちなみに、もしもⅠ類を受験することを決めたのなら、予備校は「EYE 公務員試験予備校」さんがオススメです。
「一次試験合格率」と「最終合格率」の両方を公開していて、予備校としての姿勢に信頼感が持てる点が高評価ポイントですね。

大手予備校とは異なり、面倒見の良さが伺える点もGOOD!
TACさんやLECさんなどの大手以外にも良い予備校はたくさんありますから、色々検討してみるといいでしょう。

希望区に入るためには上位合格が必要!

一口に特別区と言っても、各区には異なった魅力や特徴があります。

例えば、千代田区と練馬区は雰囲気が大きく異なりますし、新宿区と文京区も趣がまるで別物です。
とはいえ、どちらも特別区ではあります。

そして、どの区の職員になるにしても、特別区採用試験を最終合格する必要があります。
希望区に入るためには特別区採用試験で上位合格することが求められます。
試験自体の難易度はそこまで高くありませんが、上位合格したうえで希望区に入るとなると、難易度は非常に高くなると言えるでしょう。

したがって、配点が非常に高いと考えられる、論文と面接の対策に全精力を注ぐことが重要です。
なお、区面接については、下記の記事で徹底解説しています。

最終合格は総合得点で決まる

近年、1次試験の結果は最終合格の判定に使わず、最終面接の結果だけで合否を決定する自治体が増えています。
いわゆる「リセット方式」というスタイルですね。

しかし、特別区採用試験はリセット方式ではありません
1次試験の結果は、最終合格の判定に大きな影響を及ぼします。
そのため、面接が苦手であったとしても、1次試験で高得点を取っておくことで最終合格を獲得可能なのです。

論文の配点が極めて大きい

特別区採用試験の最大の特徴は論文の配点が極めて大きいことです。
配点自体は非公表となっていますが、多くの予備校や識者が、1次試験の配点の6割以上を論文が占めていると指摘しています。
つまり、論文の良し悪しが合否を決定すると言えるでしょう。

上位合格をしたうえで希望区に入りたい場合、平均的な論文を書けるのは当然として、さらに高得点を狙う必要があります。
特に面接が苦手な受験生は、論文で徹底的に稼ぐことが必要でしょう。

特別区は他の自治体と比べて短期合格者が多いと言われますが、この論文の配点比率の大きさが理由だと考えられます。
極論を言ってしまえば、良い論文さえ書ければ合格出できるため、論文対策に注力すればいいからですね。

しかし、論文はどのように対策すればいいのかが分かりづらいうえに、本気で対策しようとすると相当の時間が必要になります。

そのため、論文の過去問を徹底的にマークしたうえで、過去の出題テーマについては、きちんとした論文を書けるようになっておくことが強く求められます。

なお、特別区の配点やオススメの選択科目については下記の記事で紹介しています。

おわりに

これまで述べてきたように、特別区Ⅰ類採用試験は他の自治体とは特徴が異なります。

そして、特別区に最終合格するためには論文・面接を避けて通ることはできません。
何故なら、論文・面接の配点が極めて大きいと考えられるからですね。
教養・専門試験でどれだけ点数を獲得していても、簡単に逆転が起こります。

最終合格を確実なものにするためには、特別区に特化した論文・面接対策が必要不可欠です。
なお、論文・面接対策については、下記の記事で徹底解説しています。

万全の対策をしたうえで、最終合格を勝ち取っていきましょう!
あなたが最終合格を獲得し、特別区職員として働けることを心から祈っています。
どうか最後まで頑張ってくださいね。