この記事では、いわゆる一般的な公務員である「事務職」の特別区Ⅰ類(大卒程度)採用試験の内容と対策についてお伝えします。
なお、特別区採用試験は、以下の自治体・組合の公務員になりたい方が対象です。
- 千代田区
- 中央区
- 港区
- 新宿区
- 文教区
- 台東区
- 墨田区
- 江東区
- 品川区
- 目黒区
- 大田区
- 世田谷区
- 渋谷区
- 中野区
- 杉並区
- 豊島区
- 北区
- 荒川区
- 板橋区
- 練馬区
- 足立区
- 葛飾区
- 江戸川区
- 特別区人事・厚生事務組合
- 特別区競馬組合
- 東京二十三区清掃一部事務組合
特別区とは、東京23区の正式名称です。
東京23区には港区、江戸川区、世田谷区といった様々な区があり、それぞれ独立した自治体です。しかし、職員採用試験は一括して行っています。
たとえば、
「千代田区の職員になりたい!」
「世田谷区で公務員としてはたらきたい!」
といったように、23区のどこかの公務員になりたい場合、まず「特別区採用試験」というものに合格する必要があります。その後に、各区の面接試験を受け、合格すればその区に採用内定という流れになります。
今回はそんな、(ちょっとわかりづらい)特別区採用試験について徹底解説します!
- 22~31歳が対象
- 教養試験、専門試験、論文試験、個別面接が試験科目
- 特別区Ⅰ類採用試験に合格した後に、各区の試験がある。
- 希望の区に採用されるには、上位合格が必要!
- 最終合格は総合判断(リセット方式ではない)
- 一次試験は論文の配点がとてつもなく高い
- 試験日が早いので、他の試験と併願しやすい
- ただし、東京都庁Ⅰ類Bと併願できない
☆論文対策が非常に重要!
Ⅰ類採用ではなく、経験者採用をお考えの方はこちらをご覧ください!職務経験4年以上なら受験可能です。
⇒特別区採用試験ガイド【経験者採用編】 転職希望者必見の穴場です!
特別区Ⅰ類採用試験(事務職)の受験資格
採用年の4月1日時点で22~31歳の人、もしく21歳以下の大卒見込みの人が対象です。
たとえば、2021年(令和4年)に受験する場合、就職する2022(令和5年)年4月1日時点で31歳ならば受験できます。逆に、受験時に31歳でも翌年の4月1日までに32歳になる方は、受験できません。受験時の年齢ではないのでご注意ください。
大卒である必要すらありません。大学中退、フリーター、ニートでも問題ありません。年齢要件さえ満たされていれば、住所、年齢、学歴等について評価に影響ありません。
たとえば世田谷在住でも札幌在住でもまったく評価は変りません。大学新卒の22歳でも既卒31歳でもなんら評価に影響はありません。言ってしまえばハーバード大学卒でもニートでも変わりません。
ほんとかなあ?と思うかもしれませんが、同僚をみてみると、たしかに出身も年齢も経歴もばらばらです!
特別区Ⅰ類採用試験の独特な採用システムについてわかりやすく解説
まず、採用内定までの流れについて解説します。
ざっと簡略化すると、以下の5ステップが必要です(参考までに令和5年度の日程を載せています)。
- 特別区採用試験の受験申込(3/17~4/3)
- 特別区採用試験を受験(1次:4/30、2次:7/9~7/19)
- 特別区採用試験に合格(技術職:7/26、その他:8/3)
- 各区面接の受験(技術職:7/26、その他:8/3)
- 各区面接の合格(内定)
ご覧いただければわかる通り、「特別区採用試験」と「各区の試験」の2段階に分かれています。
特別区職員採用試験に合格しただけでは、まだどこの区の職員になるかは決まっていません。
その後の各区面接に合格してはじめて採用内定になります。
では、令和5年度のスケジュールを基に採用内定までの流れを見ていきましょう。
- 3/17試験・選考案内・申込書の配布開始日
- 3/17~4/3受験申込
原則インターネット申込。面接カードを提供する。区を第1希望~第3志望まで書く。
- 4/301次試験
筆記試験(教養試験+専門試験+論文試験)
- 6/231次試験合格発表
合格通知に2次試験の試験日、集合時間および試験会場が載っている。
- 7/9~7/192次試験(対策はこちら)
個別面接(人物及び職務に関連する知識等について)。いわゆる人事院面接。
- 7/26(技術職)
8/3(その他)合格発表恐ろしいことに、合格順位が載っている。
- 7/26(技術職)
8/3(その他)区面接合格順位、希望区等を考慮し、特定の区から面接の連絡がある。
※自分で面接を受けたい区を選ぶことはできない。
- 採用内定
受けた区から採用内定連絡がくればおしまい。
もし受けた区の面接がダメだった場合、別の区から区面接の案内がくる。その繰り返し。
このように、一般的な公務員試験にあたる「特別区採用試験」を受験して合格したあとに「区の面接試験」があります。
国家公務員試験の官庁訪問のように、自分からどの区を受けるか選ぶことはできません。
「合格順位」と「受験申込のときに書いた希望区」を考慮し、もっとも適切な区が選ばれ、その区からあなたのもとに面接案内の連絡がきます。そして、その区の面接を受験し合格すれば採用内定になります。
もし区の面接で残念な結果になったとしても、次に適切な区からまた面接案内の連絡がきます。その面接で合格すれば採用内定、だめならその次の区から面接案内がくる…この繰り返しです。
特別区採用試験に合格すれば、よほどのことがない限りどこかの区に採用されますので過度な心配は無用です。
区面接についてはこちらの記事で徹底的に解説しています。
特別区Ⅰ類採用試験の試験内容
内定までに受けなくてはならない試験は全部で3つあります。
特別区採用試験の1次試験、2次試験。そして、その後に待ち構えている各区の面接試験です。
それぞれ何をやるか?解説していきます。
1次試験
最初の関門が特別区採用試験の1次試験です。
例年ゴールデンウイーク前後に行われます。
教養試験、専門試験、論文試験の順番ですべて一日でやるハードな試験です。
最も配点が高いとされている論文試験が最後にあるのがポイントで、疲弊した中でも安定して書けるスキルが必要になります。
一般教養についての五肢択一式(48題中 40 題解答)
- ①知能分野(28 題必須解答)
- 文章理解(英文を含む)
- 判断推理
- 数的処理
- 資料解釈
- 空間把握
- ②知識分野(20 題中 12 題選択解答)
- 人文科学 4題・・・倫理・哲学、歴史及び地理
- 社会科学 4 題・・・法律、政治及び経済
- 自然科学 8 題・・・物理、化学、生物及び地学
- 社会事情 4 題・・・社会事情
一般行政事務に必要な基礎知識についての五肢択一式(55 題中40 題選択解答)
- 憲法
- 行政法
- 民法①[総則・物権]
- 民法②[債権・親族・相続]
- ミクロ経済学
- マクロ経済学
- 財政学
- 経営学
- 政治学
- 行政学
- 社会学
課題式(2題中1題選択解答)
字数は1,000字以上1,500字程度
特別区では論文の配点がとてつもなく高いので、確実な対策が必須です。
「ウィルス」と「ウイルス」どちらが正しい書き方か?
こうした小さなポイントを押さえるだけで差を付けることができます。
正しい書き方から、安定して論文を書ける方法まで、こちらで徹底的に解説しています。
2次試験
1次試験に合格した後に、2次試験が待ち構えています。
例年7月上旬~下旬のいずれか1日を試験日に指定されます。
特別区採用試験は2次試験までなので、これに合格すれば余程のことがない限りどこかの区に内定はもらえます。
試験内容は面接1回のみです。
人物及び職務に関連する知識等についての個別面接。
対策はこちらで徹底的に解説しています。
区面接
2次試験に合格すると、あなたの希望と試験成績を総合して、もっとも適切な区から連絡が来ます。
そして、その区の面接試験に挑むことになります。
これに合格すれば、晴れてその区へ採用内定です!
ほとんどの区は個別面接1回のみですが、一部では集団討論などを行う区もあります。
詳しくはこちらで解説しています。
特別区Ⅰ類採用試験の倍率
大変人気の自治体ですが、採用人数自体が多いので倍率は標準程度です。有名民間企業の採用倍率が平気で数十倍、数百倍に達することを考えると非常に低い倍率といえます!
令和5年度
令和4年度
知っておくべき倍率のひみつ
ただし、この倍率にはひみつがあります!
次の表は、令和5年度Ⅰ類採用試験の実施結果です。
さて、最終倍率が2.5になっていますが、これは「1次試験受験者÷最終合格者」で算出されています。
一方で、1次試験合格者と2次試験受験者をみてください。
1次試験合格者のうち1000人以上が2次試験を辞退していることがわかります。
しかし、最終倍率にはこうした途中辞退者まで含めて計算されているのです!
したがって、実質の倍率は2.5よりもかなり下がります。
これが正確な倍率だ!
では、正確な倍率はどうなのか?
それは「各試験の受験者数÷各試験の合格者数」で算出できます。
すると、次の通りになります。
これで正確な倍率になりました。
こうしてみると、1次試験も2次試験も同じくらい重要だということが分かります。
1次試験は論文がとくに重要ですので、上位合格をして希望区に入るために万全の対策が必要です。
希望区に行くためには、倍率が一気に上がる
公表されている倍率はあくまで「特別区採用試験の倍率」です。
区面接の倍率は含まれていません。区面接でも当然、合格・不合格はあります。
人気区の場合は区面接が本番と言っても過言ではありません。区面接を考慮すると、倍率は一気に跳ね上がります。
たとえば、一番人気のX区の採用予定人数が40人だったとします。合格者2000人のうち、200人がX区を第一希望にしていた場合、X区の倍率は単純に5倍ということになります。つまり、特別区採用試験の倍率に加えてこの5倍も考慮すると、他の人気自治体をはるかに上回る倍率ということになります。
したがって、公表されている特別区採用試験の倍率は「どこでもいいからとりあえず、どこかの区に採用される倍率」だということです。
希望区に採用されるためには、より一層万全の対策が必要です。
絶対に知っておくべき特別区Ⅰ類採用試験の特徴と対策!
多くの自治体と併願できる!
特別区Ⅰ類採用試験は例年、他の公務員試験よりも1か月ほど試験日が早いのが特徴です。
多くの公務員試験と日程が被らないので、併願先が豊富です。
逆に、他の公務員試験が本命で、腕試しや滑り止めのために特別区を受験する人も数多くいます。2次試験の辞退率の高さがそれを物語っています。
試験内容がスタンダードなので、他の公務員試験と併願してもあまり負担になりません!
ただし、東京都庁Ⅰ類Bとは併願ができない
特別区Ⅰ類は東京都庁Ⅰ類B採用試験と例年日程が同じなので併願できません。
おそらく、併願を防ぐ目的があるのだと思います。
また、特別区経験者採用、氷河期採用とも併願できません。
受験資格的にはⅠ類も経験者も氷河期採用も受験できる方もいるかもしれませんが、そのうち1つしか受験できないので注意です。
希望の区に採用されるためには上位合格する必要がある!
特別区と一言にいってもまったく別の魅力や特徴があります。例えば港区と葛飾区は趣が全然違いますし、渋谷区と千代田区は雰囲気が真逆です。
ですが、どちらも特別区です。そして、どちらの職員になるにしてもこの特別区職員採用試験を突破する必要があります。
こちらの記事で詳しく解説していますが、希望の区に採用されるには特別区職員採用試験で上位合格することが必要です。
特別区職員採用試験自体はそこまで合格難易度が高くありませんが、上位合格して希望の区への採用を目指す場合、一気に難易度は跳ね上がります。
したがって、配点が非常に高い、論文と面接に力を入れる必要があります。
最終合格は総合判断(リセット式ではない)
最近では1次試験の結果は最終合格に使わないという自治体がほとんどです。いわゆるリセット式という方式です。
一方で特別区Ⅰ類採用はリセット式ではないので、1次試験の成績も最終合格に使われます。
したがって、面接が苦手な人でも一次試験で頑張って点数を貯めておくといった戦略をとることができます。
とにかく論文の配点が異常に高い
特別区採用試験の特徴は何といっても論文の配点が異常に高いことです。1次試験の6割も論文の配点が占めると言われています。
つまり、論文ができなければ落ちますし、論文さえ良ければ受かります。
上位合格して希望区に行きたいなら論文ができるのは当たり前で、さらに高得点を取らなくてはなりません。万全の対策が必要です。
面接が苦手な方は、論文で稼げるだけ稼ぐ戦略が有効でしょう。
特別区は他の公務員試験と比べて短期合格者が多いですが、この論文の配点比率が原因だと言われています。論文さえできれば受かりますので、論文の勉強だけに注力すればいいからです。
しかし、論文はまともに向き合うと非常に難しいうえに、点数が安定しない科目でもあります。出題テーマを知っているかどうか、イチかバチかで合否が決まってしまうこともあります。
特別区Ⅰ類採用試験のまとめ
このように特別区Ⅰ類採用は、一見スタンダードな試験ですが、他の公務員試験とは異なる特徴があります。
やりがいがありますし、待遇も申し分ありません。非常に魅力的な自治体なので、ぜひ勝ち取ってください!
ただし、特別区に合格するためには論文・面接を避けては通れません。
なぜならば、特別区は論文・面接の配点が異常に高いことで知られているからです。
この通り、教養・専門の点数がどれだけあっても簡単に逆転が起こります。
したがって、特別区に特化した論文・面接対策を取ることが非常に重要です。万全の対策をして、確実に合格を掴みましょう!
それでは、あなたの合格と幸せな未来を願っています!