「特別区を受けてみたいけど、倍率はどのくらいなんだろう?」
試験を受けるとき、真っ先に気になるのが「倍率」ですよね?
倍率は、今まで高校受験や大学受験をしてきた方にとって、難易度を計るなじみのある指標だと思います。
そこで今回は、「特別区Ⅰ類採用」と「特別区経験者採用」の試験実績データをもとに、倍率と難易度をお伝えしていきます。
倍率を読み解くと、
- 1次試験と2次試験、どちらに力を入れるべきか?
- 特別区はどういった人材を欲しがっているか?
といったことまで分かりますので、ぜひご覧ください!
なお、以下の記事では23区それぞれの倍率について解説しています。希望区選びで悩んでいる方はこちらもご参照ください。
経験者採用の倍率だけ見たい方は、こちらからジャンプできます!
特別区Ⅰ類 事務職の倍率は?
「事務職」とは、いわゆる一般的な公務員にあたる職種です。
ですので、特別区では「事務職」の採用予定人数がダントツで多く、受験者数もダントツで多いです。
それでは過去8年分の倍率を見ていきましょう!年度 採用予定人数 申込者数 第1次試験 第2次試験 合格倍率 受験者数 合格者数 受験者数 合格者数 2023(R5) 1,181 8,541 7,668 5,955 4,595 3,013 2.5 2022(R4) 983 9,374 8,417 4,246 3,312 2,308 3.6 2021(R3) 874 11,449 9,019 4,098 3,006 1,881 4.8 2020(R2) 906 14,339 8,121 4,791 2,197 1,741 4.7 2019(R1) 966 13,296 11,501 4,244 3,219 2,032 5.7 2018(H30) 1,130 14,998 12,718 4,505 3,812 2,371 5.4 2017(H29) 980 15,178 12,683 4,219 3,599 2,176 5.8 2016(H28) 940 15,574 11,795 3,433 2,909 1,781 6.6
数字ばかりで分かりづらいと思いますので、グラフで見ていきましょう。
倍率はご覧の通り、急激な下降傾向にあります。
背景には、「採用予定人数が急増している」ことと、「受験者数が少なくなっている」ことがあります。
特別区の職員にヒアリングしたところ、ここ数年、大量の定年退職者が出ていますので慢性的な人手不足に陥っているそうです。
そこで、採用予定人数を増やすことで対応しています。
つまり、採用予定人数が拡大する傾向が続くので大チャンスといえます!
ちなみに特別区Ⅰ類採用試験は2次試験までなので、2次試験に合格すれば一応内定ということになります。
ただ、厳密に言うと、2次試験に合格した後に23区(もしくは組合)のいずれかの区から面接試験のオファーが来ます。
成績が良い合格者から順に、受験申込のときに書いた希望区通りにオファーが行きます
ですので、成績によっては希望していない区からオファーが来ることも・・・
区の面接試験を突破すると、晴れて採用内定という流れです。
とはいえ、2次試験に合格すれば余程のことがない限りどこかの区に採用される仕組みになっています。
詳しく知りたい方は、こちらの区面接について解説した記事をご覧ください。
特別区Ⅰ類 事務職の真実の倍率
さて、実は特別区で公表されている倍率データでは、正しい難易度を計ることができません!
というのも、公表されている合格倍率は、「1次試験受験者 ÷ 最終合格者」で算出されているのです。
つまり、「1次試験に受かったけれども、2次試験を辞退した人」まで計算に含まれているのです。
2次試験の辞退者は例年1000人近くいます。
かなりの人数ですが、この1000人近くいる辞退者も2次試験を受験したとみなして合格倍率が計算されているのです。
つまり、「実質の倍率はもっと低い!」ということです
そこで、1次試験と2次試験に分けて、実際に受験した人数を使って計算することで、辞退者を含まない正確な倍率を出せます。
すると、次の表になります。年度 第1次試験 第2次試験 受験者数 合格者数 倍率 受験者数 合格者数 倍率 2023(R5) 7,668 5,955 1.3 4,595 3,013 1.5 2022(R4) 8,417 4,246 2.0 3,312 2,308 1.4 2021(R3) 9,019 4,098 2.2 3,006 1,881 1.6 2020(R2) 8,121 4,791 1.7 2,197 1,741 1.3 2019(R1) 11,501 4,244 2.7 3,219 2,032 1.6 2018(H30) 12,718 4,505 2.8 3,812 2,371 1.6 2017(H29) 12,683 4,219 3.0 3,599 2,176 1.7 2016(H28) 11,795 3,433 3.4 2,909 1,781 1.6
これが実態の倍率です。
辞退者を考慮すれば公表されている倍率よりもやや穏やかになりました。
しかし油断はできません。
なぜならば、辞退者を廃除した本気の受験者同士での倍率だからです。
また、特別区は上位合格者から順に希望区への挑戦権が得られますので、手は抜けません
特別区採用試験の辞退率は減少傾向にある
特別区は辞退者がやや多いことで知られています。
他の公務員試験と比べて試験日が早めなので、滑り止めや力試しで受ける人が多いからです。
ところが近年、辞退率が急激に減っています。
つまり、本気で特別区を受験する人が増えているということです。
辞退者数の減少は特別区にとってはありがたいことですが、受験生にとっては競争が激しくなることを意味します。
特に、新型コロナウイルスの影響で公務員人気が高まることが予想されますので辞退者数のさらなる減少が見込まれます。
倍率から垣間見える、特別区の意図
倍率の傾向をひも解くと、特別区の採用傾向がよくわかります。
改めて表をみてみましょう。年度 第1次試験 第2次試験 受験者数 合格者数 倍率 受験者数 合格者数 倍率 2023(R5) 7,668 5,955 1.3 4,595 3,013 1.5 2022(R4) 8,417 4,246 2.0 3,312 2,308 1.4 2021(R3) 9,019 4,098 2.2 3,006 1,881 1.6 2020(R2) 8,121 4,791 1.7 2,197 1,741 1.3 2019(R1) 11,501 4,244 2.7 3,219 2,032 1.6 2018(H30) 12,718 4,505 2.8 3,812 2,371 1.6 2017(H29) 12,683 4,219 3.0 3,599 2,176 1.7 2016(H28) 11,795 3,433 3.4 2,909 1,781 1.6
ちょっと分かりづらいので、倍率をグラフにして見てみましょう。
グラフを見ると、1次試験の倍率(青線)は下降傾向にある一方で、2次試験の倍率(オレンジ線)は横ばいです。
つまり、「筆記試験よりも面接試験を重視する傾向に変わってきている」ことが分かります。
これは近年の公務員試験全体に言えることですが、人物重視の採用に変ってきています。
従来は「勉強ができる=事務仕事ができる」人を重視していましたが、近年の行政はコミュニケーション能力を求められる場面がとても多くなりましたので、それに応じて面接試験が重視されるようになってきたのだと考えられます。
行政の現場でも、人と交流する仕事のウェイトも増えています
とはいえ直近の試験結果を分析すると、論文は相変わらず重視されているようです。
ですので、「教養試験」「専門試験」のウェイトが下がり、「面接」のウェイトが上がった、というのが正しい認識でしょう。
結論、「教養試験」「専門試験」は完璧を目指さずに、「論文」・「面接」に注力するのが間違いない戦略だといえます。
特別区採用の倍率をリアルに認識
大企業の倍率が数十、数百倍であることを考えると、特別区の倍率はかなり低いと感じる方もいらっしゃるでしょう。
しかし落ち着いて考えてみてください。
1次試験と2次試験、どちらも倍率1.5倍と考えると各試験で1/3が脱落する計算になります。
つまり、あなたの周りに6人の受験者がいたら、最終合格者はたったの2人だけです。
・・・いかがでしょうか?
辞退者数を省いていますので、本気の受験生だけで争った場合のイメージです。
おそらくこれを見て、「油断できない」と感じたと思います。
もしそう感じていただけたのなら幸いです。
なぜならば、目標に対する明確なイメージを持つことで、勉強に対するモチベーションを高めることができるからです。
特別区の勉強は長期戦です。
やる気が出なかったり、つい他のことに気を取られてしまうことは当然あります
そんなときに、この倍率イメージを思い出してください。
きっと、やらなければという思いを再び奮い立たせてくれると思います。
正直に言って、受験生にとって特にモチベーションが上がりづらいのが「論文」だと思います。
私が受験生のときも、教養や専門ばかり解いて、論文は中々手を付けることができませんでした。
しかし、特別区は論文の配点が異常に高いので、論文次第で合否がほとんど決まってしまいます。
ですので、模範解答集を使って効率的に対策するのが非常におすすめです。
論文はその時のコンディションや出題テーマによって大きく点数が揺らぐ科目なので、模範解答をいくつも覚えておくことで非常に安定しますよ!
特別区経験者採用 事務職の倍率考察
経験者採用は1級職(社会人経験4年以上)と2級職(社会人経験8年以上)があります。
ちなみに特別区は2019年から経験者採用の仕組みが変わったので、2019年以降のデータを載せています。
〇特別区1級職(社会人経験4年以上)事務の倍率年度 採用予定人数 申込者数 第1次試験 第2次試験 合格倍率 受験者数 合格者数 受験者数 合格者数 2023(R5) 207 1,516 1,146 561 524 289 4.0 2022(R4) 143 1,702 1,287 436 424 215 6.0 2021(R3) 110 1,799 1,302 315 305 172 7.6 2020(R2) 113 1,662 1,247 311 298 155 8.0 2019(R1) 125 2,037 1,601 337 322 173 9.3
〇特別区2級職(社会人経験8年以上)事務の倍率年度 採用予定人数 申込者数 第1次試験 第2次試験 合格倍率 受験者数 合格者数 受験者数 合格者数 2023(R5) 86 1,004 720 244 225 112 6.4 2022(R4) 63 968 695 220 211 88 7.9 2021(R3) 44 1,093 762 159 154 59 12.9 2020(R2) 45 1,080 809 181 173 57 14.2 2019(R1) 47 1,146 870 185 181 61 14.3
数字だけでは分かりづらいので、グラフで倍率を見てみましょう。
1級職、2級職ともに倍率が低下傾向にあることが分かります。
ただでさえ特別区は、他自治体の経験者採用と比べるとかなり倍率がとても低いのが特徴です。
例えば横浜市の令和4年度社会人採用試験事務職の倍率は12.6倍でした。
なぜここまで倍率に差があるかというと、特別区は社会人採用人数が多いからです。
公務員試験全体で社会人採用が活発になっていますが、特別区はとりわけその意欲が高い傾向があります。
特別区に採用されて働きはじめると気づくかと思いますが、特別区は社会人経験者の数がかなり多いです。
Ⅰ類採用でも社会人経験がある方が多いです
ですので、新卒ではないからといって肩身が狭い思いをすることはまずありません。
職場に何人かは社会人経験者がいるような環境です。
さらに特別区は大都市の自治体ということもあって、民間企業のような考え方の人が多いので社会人経験者が働きやすい環境です!
特別区経験者採用 事務職の倍率をひも解く
公表されている倍率は「1次試験受験者÷最終合格者」で算出されています。
つまり、「1次試験に受かったものの2次試験を辞退した人」まで計算に含まれているのです。
とはいえ特別区経験者採用は辞退者が極めて少ないことが特徴です。
毎年10人いるかどうかです。
したがって、公表されている合格倍率と実態の倍率に乖離はほぼありません。
ですが、各試験の倍率を分けてみることで、特別区が何を重視しているのかが見えてきます。
〇特別区1級職(社会人経験4年以上)事務の倍率年度 第1次試験 第2次試験 受験者数 合格者数 倍率 受験者数 合格者数 倍率 2023(R5) 1,146 561 2.1 524 289 1.8 2022(R4) 1,287 436 3.0 424 215 2.0 2021(R3) 1,302 315 4.1 305 172 1.8 2020(R2) 1,247 311 4.0 298 155 1.9 2019(R1) 1,601 337 4.8 322 173 1.9
〇特別区2級職(社会人経験8年以上)事務の倍率年度 第1次試験 第2次試験 受験者数 合格者数 倍率 受験者数 合格者数 倍率 2023(R5) 720 244 3.0 225 112 2.0 2022(R4) 695 220 3.2 211 88 2.4 2021(R3) 762 159 4.8 154 59 2.6 2020(R2) 809 181 4.0 173 57 3.0 2019(R1) 870 185 4.8 181 61 3.0
これが辞退者を省いた、試験ごとの実質倍率になります。
1級職と2級職、いずれも1次試験の倍率は下降傾向にある一方で、2次試験の倍率は横ばいです。
つまり、「筆記試験よりも面接試験を重視する傾向に変わってきている」ということです。
Ⅰ類採用とまったく同じ傾向です
端的に言えば、人物重視の採用に変ってきています。
従来は「勉強ができる=事務仕事ができる」人を重視していましたが、近年の行政はコミュニケーション能力を求められる場面がとても多くなりました。
したがって、面接試験が重視されるようになってきたのだと考えられます。
とくに経験者は、企業や団体との交渉・折衝の仕事を任されることが多いです
また、特別区の経験者採用試験では、職務経歴書、職務経験論文、課題式論文といった、「書くスキル」が非常に求められます。
最終合格判断には1次試験の成績も使われますので、2次試験の面接だけではなく論文でも高得点を取ることが重要です。
こうした特別区経験者採用の対策は世の中にほとんど出回っていませんので、まずは定番のコアテキストを使って対策する方法が間違いありません。
コロナウイルスの影響で今後人気が高まる可能性があるので、今のうちにトライすることをおすすめします!
それでは、あなたの合格と幸せな未来を願っています!