世襲でしかなれないホタテ漁師
猿払村の漁船は全部で32隻。うち24隻がホタテ用で7隻が毛ガニ用、1隻は見習い用の研修船だ。猿払村漁協の組合員は270人程度。ホタテ船は一隻5人乗りが基本で、「給料」も決まっているという。
若手漁師が続ける。
「猿払の漁師は『平等』が原則。ほかの船を出し抜くということはない。給料は毎月25日に振り込まれるんですが、船長が45万円、機関士が42万円、一般甲板員が40万円です。これに加え、毎年1回、『増産手当』と『配当金』をもらえます。前者は予定より多く漁獲量があった場合に出るもので、いわばボーナスです。配当金は乗船期間に応じて支払われる。
増産手当も配当金も、ほとんどの年で1000万円以上もらえる。なので、40歳を超えれば年収3000万円以上は当たり前。20代でも2000万円は軽くいきますね」
ちなみに、この若手漁師は20代半ばだが、副業もやっており、年収は4000万円だという。
これだけ儲かるなら、ホタテ漁師になりたい人が殺到しそうなものだが、それは許されないシステムになっている。ベテラン漁師が解説する。
「船が増えることはありません。よそ者が漁師になることも不可能です。猿払のホタテ漁師はすべて世襲。船主になれるのはその息子だけ。一般漁師の息子はずっと漁師です。漁師になれるのは実子・養子を問わず、子供2人まで。3人目は別の仕事に就くことになる。60歳定年制というのも猿払の特徴です。ちなみに、配当金は11年目から78歳までもらえます」