ホタテの村猿払を直撃
だが今、そんな「日本一裕福な村」である猿払村に危機が訪れている。今年8月、東京電力福島第一原発からの処理水放出を受け、中国が日本の水産物に対し禁輸措置を取ったのだ。
最大の輸出先である中国を失い、猿払村はどうなってしまうのか。ホタテ漁師たちの現状を取材すべく、10月下旬、本誌は現地を訪ねた—。
日本最北端の都市・稚内市から車で東へ1時間。オホーツク海に面した猿払村は、海岸線が33km続く「北海道一広い村」でもある。
正午頃、村内の浜鬼志別漁港を訪ねると、ホタテの水揚げの真っ最中だった。大量のホタテを積んだ漁船を、加工会社のトラックや「おかまわり」と呼ばれる漁師の妻が待ち構える。
ホタテは鮮度が命。記者が漁船の撮影をしていると、トラックの運転手に「邪魔だ!」と怒鳴られた。水揚げ作業後、港で仲間と談笑していた若い漁師に声をかけた。
「ホタテ漁は3月中旬~11月末まで行われ、ピークは6~9月頃です。ホタテの稚貝が育つには4年かかるため、猿払村漁協では海域を4区画に分け、一年ごとに漁をする区画を変えています。一隻あたり一日のノルマは12トンですが、ピーク時には15トン獲れることもあります」