20代で年収2000万、日本一裕福な「猿払村」が危ない…中国の禁輸措置で「ホタテ長者」が没落する懸念
テレビなんて出なけりゃよかった……。世間の批判を受け、ベテラン漁師はポツリと呟いた。中国の禁輸措置で、猿払村ではホタテパニックが発生。ホタテ長者は没落してしまうのか? 現地に飛んだ。
芦屋よりも平均年収が高い
「貧乏見たけりゃ、猿払に行け」
こんな言葉が広まるほど、かつて北海道猿払村は貧しい村だった。明治時代にホタテ漁で栄えたが、乱獲により数が激減。浜に流れ着いた缶詰がごちそうと言われるほどの飢えに苦しんだ。
転機となったのは、'71年に始まったホタテの稚貝放流だった。1億9400万粒の稚貝を海に放ち、ホタテが育つまでの4年間を耐え忍んだ。稚貝事業は成功し、猿払村はやがて日本一のホタテの産地となった。
水産・食料経済が専門の近畿大学世界経済研究所・有路昌彦教授が言う。
「約20年前、中国への輸出ルートを開拓できたことで、北海道ホタテは一大産業になりました。人件費の安い中国で加工をし、ヨーロッパやアメリカに輸出するビジネスモデルを確立したのです」
昨年の日本の水産物輸出額は3873億円で、最も大きいのはホタテの約910億円。そのうち51.3%が中国への輸出だ。とりわけ猿払村のホタテはブランド品として価値が高く、昨年度の取扱高は106億7700万円にまで上った。
村は「ホタテ景気」による活況に沸き、数多くの「ホタテ長者」も誕生。総務省が発表した資料によると、昨年度の市区町村別平均所得では、カネ持ちの街として知られる兵庫県芦屋市や東京都文京区を抑え、全国6位(約732万円)にランクインした。村に帰ってくる若者も増え、一時激減した人口も約2700人で下げ止まっている。