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増える「私人逮捕系」動画、再生回数稼ぎで過激化 名誉毀損の恐れや〝勘違い逮捕〟も

産経ニュース / 2023年11月19日 18時24分

盗撮や痴漢といった犯罪が疑われる一般人を追跡したり、拘束して警察に突き出したりする様子を発信する「私人逮捕」系と呼ばれる動画を撮影していた男が、警視庁に逮捕された。男は〝容疑者〟と勘違いした無関係の女性を執拗(しつよう)に撮影していたという。こうした動画は、最近、交流サイト(SNS)に多数投稿されているが、手法が過激化。名誉毀損(きそん)や傷害など新たな犯罪につながる恐れもあるという。

しつこく追いかけ回す男たち

「お姉さん、パパ活やってるでしょ」

「お金返して8万円、俺に」

9月19日、東京都千代田区の帝国劇場付近。アイドル公演のチケットを転売していると女性に迫り、動画を撮りながらしつこく追いかけ回す男たち。

その様子をユーチューブに投稿し、女性の名誉を傷つけたとして警視庁は今月13日、名誉毀損の疑いで、ユーチューバー「煉獄コロアキ」こと杉田一明容疑者(40)を逮捕した。

「転売ヤー」と勘違い

「私人逮捕」「世直し」などと称した動画を多数投稿していた杉田容疑者。捜査関係者によると、交流サイト(SNS)で転売ヤーに接触して会う約束を取りつけ、メッセージのやり取りで伝えられた服装が似ていた女性を転売ヤーと勘違いし、撮影に及んだという。

女性は不正転売をしておらず、付近で友人と待ち合わせをしているところだった。杉田容疑者は調べに対し「広告収入を得たり知名度を上げたりして有名になりたかった」と話し、東京ドームなどでも同様の撮影行為を行ったと説明しているという。

再生回数稼ぎ?

杉田容疑者のユーチューブアカウントは停止されたが、盗撮や痴漢、売春などの疑いがある人を問い詰めて捕まえる私人逮捕系動画はSNS上で多数投稿されている。中には100万回近く再生されているものもある。

こうした動画の多くが杉田容疑者のように再生回数を増やし、収入を稼ぎたいとする意図があるとみられ、同種の動画と差別化を図るために、行為が過激化する傾向にあるとされる。

こうした動画に「大事故につながる」「やり過ぎだ」との批判も多い。

駅構内で痴漢や盗撮を現認し、地面に倒すなど手荒な行為に及ぶ動画も見受けられる。

JR東日本は電車や駅構内での営利目的の撮影の遠慮を求め「周囲のお客さまに危険が及ぶ行為など、駅や車内の秩序を乱す行為はおやめいただきたい」としている。

配信は名誉毀損の恐れ

刑事訴訟法は、犯罪を行っている人、行って間もない人を「現行犯人」として、警察官などではない一般人が逮捕状なしに取り押さえることを認めている。

自身もユーチューバーとして活動する高橋裕樹弁護士は「動画の中には現行犯逮捕の要件を満たさないとみられるものもある。けがを負わせると傷害罪にもなり得る」と指摘。「私人逮捕とその様子を配信することの是非は別問題。撮影して配信することには問題が多く、程度によっては名誉毀損罪に問われる可能性もある」と語る。

おとり捜査は「共犯」に

また、実際には、犯罪事実を認定するのが難しいケースなども少なくないが、不審者や容疑者と決めつけ、執拗に追いかけたり、おとり捜査まがいの行為なども見受けられる。

刑事手続きに詳しい元検察官の高橋麻理弁護士は、チケット不正転売禁止法は不正転売を「業として行う有償譲渡」などと規定しているとし「一般人が一場面を見ただけで不正転売と判断することは難しい」と話す。

さらに、警察のおとり捜査をまねた手法についても問題点を指摘。「捜査権限を持たない一般人がおとり捜査まがいのことを行うことは許容されない。場合によっては共犯にもなりうる」と警鐘を鳴らしている。(橋本愛)

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