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「はぁ? あんたみたいな陰キャと、付き合うわけないでしょ?」
俺、
夏休み直前の七月中旬、放課後の教室にて。
俺の目の前には、クラスの女子でギャルの、
「あ……え? で、でも俺たち付き合ってるって……」
状況を説明しよう。俺とクスミは、同じクラスメイト同士だった。
でもあるときから付き合いだした。
夏休みの予定を話そうとしたとき、彼女が冒頭のセリフを言ったのだ。
「付き合ってるんじゃなくて、お試しで付き合ってあげてもいいよって言ったの」
た、たしかにあのときは、試しに~みたいなこと、言っていたような。
でも、試しにだとしても、付き合ってるは付き合ってるってことじゃないの?
「え? そんなこと……だって、休日デートしたり、買い物に付き合ったりしたよな?」
俺はクスミと一緒に出掛けたこともあった。当日になって急な呼び出しもあったし、ドタキャンもあった。
「したわね。でもあれは別に付き合ってるからじゃないから。デートじゃなくてあーしが遊園地行きたかっただけだし、買い物の荷物持ちが必要だったからだし」
そ、そう……なのか。
で、でも俺デート代全部払わされてたんだけど……。あれ、付き合ってもないのに?
単に俺は、たかられてただけ……?
そんな……
「……じゃあ、マジで付き合ってるんじゃなかったの?」
「あったりまえじゃん」
さも当然、とばかりにクスミが言う。どこか俺を馬鹿にするニュアンスを含んだ言い方だった。
俺が感じたのは、怒りではなく……納得だった。
「で、ですよねぇ……木曽川さん」
はは、そうだよ。クラスでも目立たない俺なんかと、クラスの中心人物であるクスミと、そもそも釣り合うわけがなったのだ。
何を舞い上がってたんだろうな、俺……。
勝手に勘違いして、勝手に付き合ってると思い込んで……馬鹿みたいだ。
「そーそー。ソータくん。勘違いしちゃダメよ。あんたは底辺、あたしはカースト上位に君臨する勝ち組なんだから」
木曽川クスミ。
同じクラスの女子。ウェーブが利いた金髪に、小麦色の肌という、ザ・ギャルみたいな見た目だ。
彼女は、ギャルなのにオタク知識に明るい。
俺もまあ、【とある事情】でそういうことには、少々知識がある。
だから、クスミとよく話すようになった。
言葉はきついが、積極的に話してくれるし、おっぱいもおっきいし、気づけば惹かれていた……。
「ち、ちなみに今告白しても、結果は変わらない?」
「ない。ごっめんあーしあんた無理」
秒で振られてしまった……。
「あの、ちなみに振られた理由はなんでしょう?」
「はー? 聞こえなかったんですかソータくーん? あんたが何のとりえもない、陰キャの底辺だからだっつんだけど?」
「取柄……ですか」
「そ。あんたなんももってないじゃん。身長が高いわけでもない、顔がいいわけでももちろんない。ないないづくしのモブ。背景キャラ。それが塩尻ソータくん」
「あ、はい」
「一方であーしは? 大企業の社長令嬢。金持でこの可愛い見た目、さらに誰とでも話せるコミュ強のいい女」
クスミはいいとこのお嬢さんらしい
お兄さんは、TAKANAWAって確か大きな出版社で、あの超有名ラノベ作品、デジマスを出版してる。
こないだ劇場版が公開されて数百億円稼いだとかなんとか。
金持で、見た目もいい、人気者。それが木曽川クスミ。
何でも持っている勝ち組で……一方の俺は、彼女が言う通り、何も持っていない男。
「はーあ、あんたがせめて、この子くらい人気ものだったらねぇ。つきあってやってもいいけど?」
そう言って、クスミはスマホを取り出す。
画面には、一人の可愛い女の子のイラストが映っていた。
「【いすずワイン】……」
「そ、今ちまたで大大大人気の女性ライバー! あたしの一番の推し。はぁん、かわいいよねぇ」
「まあ、そうだな。いすずは可愛い」
「はぁ? あんたにわか? いすずじゃなくて、ワインたん、でしょ? もしくは軍曹さんだから」
確かにいすずは、ファンからワインたんと呼ばれてる。
「ワインたんちょーきゃわよねぇ。知ってる? ワインたん映画の主題歌歌うのよ?」
「ああ。AMOの主題歌だろ」
「なんだあんたも知ってるの。ま、あんたみたいなにわかファンでも知ってるなんて、ワインたんまじインフルエンサー。はぁ、ワインたんに一目会ってみたいなぁ、リアルで~」
なら、俺んちにくれば、と言いかけるが、口を閉ざす。
リアル割れはご法度と、いすずは言っていたからな。
「とにかく、あんたみたいな陰キャで、何も持たない屑とは付き合う気ないから」
「あ、はい。わかりました」
「うんうん、身の程をわきまえた下民は嫌いじゃないわ。ま、でも付き合う気なんて100ぱーないけどね」
「ですよねー」
「うん。それにあーし付き合ってる男居るし。ちなみにあんたとお試しで付き合ってるときにも別に男キープしてたから」
「ええ!? 男いたの!? 付き合ってたのに!?」
「つきあってないっつーの。なに、怒ってるの? 彼氏でもないくせに」
「あ……そ、すね……」
「そ、じゃね」
「おつかれした」
そう言ってクスミは去っていく。
はぁ、と俺はため息をついた。
「まじかぁー……。いや、でも……はぁ……」
なんかもう、いろいろ……こう、精神的にくるものがある。
この数ヶ月なんだったんだよ……って。
しかもお試しとはいえ付き合ってる間に、別の男とも付き合ってたなんて……。
俺、マジでこの数ヶ月、何やってたんだろうな……。うちも、全然裕福じゃないってのに……。はーあ……。
オタクにやさしいギャル、なんてこの世には存在しない。
クスミがいかに陰キャに対しても、分け隔てなく話していても、それは彼女にとっては特別なことじゃないんだ。
……後になって分かったことだけど。
あいつは、クラスの男子全員を、下の名前で呼んでいる。
そうやって振る舞えば、男子からの好感度があがり、チヤホヤされる。
だからやってるだけ。戦略だったのだ。……と後になってわかったところで、遅い。
「はーあ……夏休み前で、良かった」
季節は7月。もうすぐ夏休みだ。学校に来る回数も、残り数えるほどしかない。
クスミと顔を合わせて、気まずい思いする回数が減る。
それが、せめてもの救いだった。
「……かえろ」
高校1年の夏休み直前、俺、塩尻聡太は、クラスのギャルに振られたのだった。
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