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一章
1話 恋人(だと思ってた子)から馬鹿にされ振られる

「はぁ? あんたみたいな陰キャと、付き合うわけないでしょ?」


 俺、塩尻しおじり 聡太そうた。16歳。高校1年生。

 

 夏休み直前の七月中旬、放課後の教室にて。

 俺の目の前には、クラスの女子でギャルの、木曽川きそがわクスミがいる。


「あ……え? で、でも俺たち付き合ってるって……」


 状況を説明しよう。俺とクスミは、同じクラスメイト同士だった。

 でもあるときから付き合いだした。

 夏休みの予定を話そうとしたとき、彼女が冒頭のセリフを言ったのだ。


「付き合ってるんじゃなくて、お試しで付き合ってあげてもいいよって言ったの」


 た、たしかにあのときは、試しに~みたいなこと、言っていたような。

 でも、試しにだとしても、付き合ってるは付き合ってるってことじゃないの?


「え? そんなこと……だって、休日デートしたり、買い物に付き合ったりしたよな?」

 

 俺はクスミと一緒に出掛けたこともあった。当日になって急な呼び出しもあったし、ドタキャンもあった。


「したわね。でもあれは別に付き合ってるからじゃないから。デートじゃなくてあーしが遊園地行きたかっただけだし、買い物の荷物持ちが必要だったからだし」


 そ、そう……なのか。

 で、でも俺デート代全部払わされてたんだけど……。あれ、付き合ってもないのに?

 単に俺は、たかられてただけ……?

 そんな……


「……じゃあ、マジで付き合ってるんじゃなかったの?」

「あったりまえじゃん」


 さも当然、とばかりにクスミが言う。どこか俺を馬鹿にするニュアンスを含んだ言い方だった。

 俺が感じたのは、怒りではなく……納得だった。

 

「で、ですよねぇ……木曽川さん」


 はは、そうだよ。クラスでも目立たない俺なんかと、クラスの中心人物であるクスミと、そもそも釣り合うわけがなったのだ。


 何を舞い上がってたんだろうな、俺……。

 勝手に勘違いして、勝手に付き合ってると思い込んで……馬鹿みたいだ。


「そーそー。ソータくん。勘違いしちゃダメよ。あんたは底辺、あたしはカースト上位に君臨する勝ち組なんだから」


 木曽川クスミ。

 同じクラスの女子。ウェーブが利いた金髪に、小麦色の肌という、ザ・ギャルみたいな見た目だ。


 彼女は、ギャルなのにオタク知識に明るい。

 俺もまあ、【とある事情】でそういうことには、少々知識がある。


 だから、クスミとよく話すようになった。

 言葉はきついが、積極的に話してくれるし、おっぱいもおっきいし、気づけば惹かれていた……。


「ち、ちなみに今告白しても、結果は変わらない?」

「ない。ごっめんあーしあんた無理」


 秒で振られてしまった……。


「あの、ちなみに振られた理由はなんでしょう?」

「はー? 聞こえなかったんですかソータくーん? あんたが何のとりえもない、陰キャの底辺だからだっつんだけど?」


「取柄……ですか」

「そ。あんたなんももってないじゃん。身長が高いわけでもない、顔がいいわけでももちろんない。ないないづくしのモブ。背景キャラ。それが塩尻ソータくん」


「あ、はい」

「一方であーしは? 大企業の社長令嬢。金持でこの可愛い見た目、さらに誰とでも話せるコミュ強のいい女」


 クスミはいいとこのお嬢さんらしい

 お兄さんは、TAKANAWAって確か大きな出版社で、あの超有名ラノベ作品、デジマスを出版してる。

 こないだ劇場版が公開されて数百億円稼いだとかなんとか。


 金持で、見た目もいい、人気者。それが木曽川クスミ。

 何でも持っている勝ち組で……一方の俺は、彼女が言う通り、何も持っていない男。


「はーあ、あんたがせめて、この子くらい人気ものだったらねぇ。つきあってやってもいいけど?」


 そう言って、クスミはスマホを取り出す。

 画面には、一人の可愛い女の子のイラストが映っていた。


「【いすずワイン】……」

「そ、今ちまたで大大大人気の女性ライバー! あたしの一番の推し。はぁん、かわいいよねぇ」


「まあ、そうだな。いすずは可愛い」

「はぁ? あんたにわか? いすずじゃなくて、ワインたん、でしょ? もしくは軍曹さんだから」


 確かにいすずは、ファンからワインたんと呼ばれてる。


「ワインたんちょーきゃわよねぇ。知ってる? ワインたん映画の主題歌歌うのよ?」

「ああ。AMOの主題歌だろ」


「なんだあんたも知ってるの。ま、あんたみたいなにわかファンでも知ってるなんて、ワインたんまじインフルエンサー。はぁ、ワインたんに一目会ってみたいなぁ、リアルで~」


 なら、俺んちにくれば、と言いかけるが、口を閉ざす。

 リアル割れはご法度と、いすずは言っていたからな。


「とにかく、あんたみたいな陰キャで、何も持たない屑とは付き合う気ないから」

「あ、はい。わかりました」


「うんうん、身の程をわきまえた下民は嫌いじゃないわ。ま、でも付き合う気なんて100ぱーないけどね」


「ですよねー」


「うん。それにあーし付き合ってる男居るし。ちなみにあんたとお試しで付き合ってるときにも別に男キープしてたから」

「ええ!? 男いたの!? 付き合ってたのに!?」


「つきあってないっつーの。なに、怒ってるの? 彼氏でもないくせに」

「あ……そ、すね……」


「そ、じゃね」

「おつかれした」


 そう言ってクスミは去っていく。

 はぁ、と俺はため息をついた。


「まじかぁー……。いや、でも……はぁ……」


 なんかもう、いろいろ……こう、精神的にくるものがある。

 この数ヶ月なんだったんだよ……って。


 しかもお試しとはいえ付き合ってる間に、別の男とも付き合ってたなんて……。


 俺、マジでこの数ヶ月、何やってたんだろうな……。うちも、全然裕福じゃないってのに……。はーあ……。


 オタクにやさしいギャル、なんてこの世には存在しない。

 クスミがいかに陰キャに対しても、分け隔てなく話していても、それは彼女にとっては特別なことじゃないんだ。


 ……後になって分かったことだけど。

 あいつは、クラスの男子全員を、下の名前で呼んでいる。

 そうやって振る舞えば、男子からの好感度があがり、チヤホヤされる。


 だからやってるだけ。戦略だったのだ。……と後になってわかったところで、遅い。


「はーあ……夏休み前で、良かった」


 季節は7月。もうすぐ夏休みだ。学校に来る回数も、残り数えるほどしかない。


 クスミと顔を合わせて、気まずい思いする回数が減る。

 それが、せめてもの救いだった。


「……かえろ」


 高校1年の夏休み直前、俺、塩尻聡太は、クラスのギャルに振られたのだった。


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