ご報告。と、おやすみなさい。
最後にこのブログを更新した日、から
ちょうど一年。
今日で、最後にします。
ご報告です。
長い間ずっと好きだった
忘れられなかった彼、と
この11月に結婚することになりました。
最後のブログを書いてから一年。
あの日、10年にピリオドを打ったつもりだった。
二人で撮った写真。
たのしかったよ、って
写真といっしょにメールした。
LINEでやりとりを始めたのは、その頃。
「メールと全然違うね」
「既読が気になってずっと見てしまう」と戸惑う彼が
なんだかおかしくて
「わたしたち付き合ってた頃、LINEなかったね」なんて
妙に歳をとった会話してるうち
いつのまにか、毎日、
「おはよう」と「おやすみ」を重ねるようになった。
ときどき、会うようになって
彼が通っているお店、に連れて行ってもらった。
夏の帰り道、懐かしいぬくもりの手に触れた。
晩夏のわたしの誕生日に、キスをした。
クリスマスの朝を、いっしょに過ごした。
お互いの仕事が忙しくて、なかなか会えなかった冬をこえて
わたしが一つ大きな仕事を終えて
おつかれさま、のごほうびの食事をした雨の夜。
雨の中を走る帰りのタクシー。
ワインがまわって、眠ってしまって
優しく起こされたら、マンションの前。
「今日はありがとう。おやすみなさい」
と言うわたしに、彼は答えない。
おやすみを言ったら、いつもそこでお別れなのに
わたしが降りるのを追いかけて
彼、は支払いを済ませ
タクシーを降りて傘を差し
わたしを入れた。
泊まってくかな?
今朝悩んで出した服、そのままかも。
冷蔵庫からっぽなのに、明日朝なに食べる?
明日の朝早いんだけど起きられるかな。
なんて、酔ってるわりに
現実的な考えがつぎつぎ浮かんで
何て言おうか、考えあぐねていたら
彼が囁くように、言った。
「サチコ、結婚しよう。」
突然で、びっくりして、
えっ。と
声が出たかも、出てないかも、覚えてない。
「結婚、しよう。」
もう一度、言って
わたしの目をじっと見た。
わたし、酔ってるのかな、まだ寝てるのかも?
でも夢なら夢で
夢の中でくらい、幸せでいたい
だからYESを口にしようとするのに
うまく言えなくて
涙が出てしまう。
「泣くほどいやなの?」
からかうように言う彼に
「泣くほどうれしいの」
と答えたら、
眉をハの字にして、困り顔で笑いながら
「返事。」
催促されて、
わたしは
「はい。」
を言うだけで精一杯だった。
すごく大きなものを受け取った気がして
からだがすごく重かった。
彼、がわたしを腕に入れてくれた。
重いからだを預けるように、背中に手を回すと
わたしに差し出した傘からはみ出た
彼のジャケットの背が濡れていた。
優しいな。好きだな。って
しばらくじっと浸って
彼を部屋に入れた。
やっぱり、洋服は散らかっていた。
冷蔵庫は空っぽだった。
でもそれが、
彼の選んでくれたわたしの、そのままだった。
彼はなにも言わなかった。
それから、
ぱたぱたと窓のサッシを叩く雨音 を聞きながら、
窓の外が白むまで、たくさんの話をした。
わたしが彼を知ったときのこと。
わたしたちが、初めて会った日のこと。
わたしたちが、最初に恋人同士だったときのこと。
彼が、結婚したときのこと。
わたしが、あらいさんと付き合っていたときのこと。
彼が、別れたときのこと。
それからこれまでの、5年間のこと。
もうサチコのそばにいてあげられないし、
抱きしめることも、
キスすることもできないけど、
僕はサチコに音楽を贈ることができる。
彼がそう言ったのは、いつだっけ。
それだけでいいって思ってた。
大切にしてもらえてる、ってわかるから。
でも、またこうして
抱きしめて、キスしてくれるの、夢みたいで
夢みたい、酔ってるのかな、って繰り返すわたしに
夢じゃないよ、と彼は繰り返す。
そうしていつのまにか、おやすみも言わずに眠った。
その日、初めて、仮病で仕事を休んだ。
ずっと、こうしたかった。
と、眠る彼の腕のなかで思っていた。
目がさめるたびに、彼がいることをたしかめて
そのたびに泣いてた。
わたし生きてきてよかった。って
わたし生まれてきてよかった。って
こんなに陳腐なこと
真剣に、でも自然に思えるんだって
びっくりした。
桜が咲いて、春になって
指輪をもらった。
いろいろの日どりを決めて
お互いの休みを合わせて、お互いの家に、挨拶をした。
娘というより孫のようだわ、と言う
彼のお母さんの手。
爪のかたちが、いっしょだった。
お父さんのハの字になる眉、答え合わせみたいで
すこし涙が出た。
わたしの両親は、驚いて
何度もなんども、まあまあ、と繰り返した。
わたしは結婚しないと思っていた、という。
父は恥ずかしそうだった。
友達に報告したのは、先週で
付き合いの長い友達ほど
もったいない言葉で祝福してくれた。
突然家にきてわたしを抱きしめてくれたり
もうお祝いを送ってくれたり
気が早いよ、と笑っている。
これからどうなるのか、正直なところ、全然わからない。
一緒に住んでもいないし、
大きな約束が一つあるだけで、
まだなにも変わっていない。
でも、わたしは、
いちばん望んでいたものを抱きしめている。
何度もなんどもあきらめるって決めて
そのたびにどうしようもなくなって
悩んで勝手に傷ついて
それでも手放せなかった想いをやっとかなえられた。
強くなるって、こういうことかも、しれない。
がんばれそうです。
ここで、たくさんのことを吐き出して
聞いてもらって
声をかけてもらって
今日までやってきました。
これを最後に、って
なかなか最後にできなかった
わたしの想いが帰るところ。
わたしだけの場所。
彼に、見せてみたい気もするけど
きっと嫌われちゃうと思う。
だから、
この言葉で鍵をかけます。
おやすみなさい。
10年分の、わたしの想い。
おやすみなさい。
本当に、ありがとうございました。
ちょうど一年。
今日で、最後にします。
ご報告です。
長い間ずっと好きだった
忘れられなかった彼、と
この11月に結婚することになりました。
最後のブログを書いてから一年。
あの日、10年にピリオドを打ったつもりだった。
二人で撮った写真。
たのしかったよ、って
写真といっしょにメールした。
LINEでやりとりを始めたのは、その頃。
「メールと全然違うね」
「既読が気になってずっと見てしまう」と戸惑う彼が
なんだかおかしくて
「わたしたち付き合ってた頃、LINEなかったね」なんて
妙に歳をとった会話してるうち
いつのまにか、毎日、
「おはよう」と「おやすみ」を重ねるようになった。
ときどき、会うようになって
彼が通っているお店、に連れて行ってもらった。
夏の帰り道、懐かしいぬくもりの手に触れた。
晩夏のわたしの誕生日に、キスをした。
クリスマスの朝を、いっしょに過ごした。
お互いの仕事が忙しくて、なかなか会えなかった冬をこえて
わたしが一つ大きな仕事を終えて
おつかれさま、のごほうびの食事をした雨の夜。
雨の中を走る帰りのタクシー。
ワインがまわって、眠ってしまって
優しく起こされたら、マンションの前。
「今日はありがとう。おやすみなさい」
と言うわたしに、彼は答えない。
おやすみを言ったら、いつもそこでお別れなのに
わたしが降りるのを追いかけて
彼、は支払いを済ませ
タクシーを降りて傘を差し
わたしを入れた。
泊まってくかな?
今朝悩んで出した服、そのままかも。
冷蔵庫からっぽなのに、明日朝なに食べる?
明日の朝早いんだけど起きられるかな。
なんて、酔ってるわりに
現実的な考えがつぎつぎ浮かんで
何て言おうか、考えあぐねていたら
彼が囁くように、言った。
「サチコ、結婚しよう。」
突然で、びっくりして、
えっ。と
声が出たかも、出てないかも、覚えてない。
「結婚、しよう。」
もう一度、言って
わたしの目をじっと見た。
わたし、酔ってるのかな、まだ寝てるのかも?
でも夢なら夢で
夢の中でくらい、幸せでいたい
だからYESを口にしようとするのに
うまく言えなくて
涙が出てしまう。
「泣くほどいやなの?」
からかうように言う彼に
「泣くほどうれしいの」
と答えたら、
眉をハの字にして、困り顔で笑いながら
「返事。」
催促されて、
わたしは
「はい。」
を言うだけで精一杯だった。
すごく大きなものを受け取った気がして
からだがすごく重かった。
彼、がわたしを腕に入れてくれた。
重いからだを預けるように、背中に手を回すと
わたしに差し出した傘からはみ出た
彼のジャケットの背が濡れていた。
優しいな。好きだな。って
しばらくじっと浸って
彼を部屋に入れた。
やっぱり、洋服は散らかっていた。
冷蔵庫は空っぽだった。
でもそれが、
彼の選んでくれたわたしの、そのままだった。
彼はなにも言わなかった。
それから、
ぱたぱたと窓のサッシを叩く雨音 を聞きながら、
窓の外が白むまで、たくさんの話をした。
わたしが彼を知ったときのこと。
わたしたちが、初めて会った日のこと。
わたしたちが、最初に恋人同士だったときのこと。
彼が、結婚したときのこと。
わたしが、あらいさんと付き合っていたときのこと。
彼が、別れたときのこと。
それからこれまでの、5年間のこと。
もうサチコのそばにいてあげられないし、
抱きしめることも、
キスすることもできないけど、
僕はサチコに音楽を贈ることができる。
彼がそう言ったのは、いつだっけ。
それだけでいいって思ってた。
大切にしてもらえてる、ってわかるから。
でも、またこうして
抱きしめて、キスしてくれるの、夢みたいで
夢みたい、酔ってるのかな、って繰り返すわたしに
夢じゃないよ、と彼は繰り返す。
そうしていつのまにか、おやすみも言わずに眠った。
その日、初めて、仮病で仕事を休んだ。
ずっと、こうしたかった。
と、眠る彼の腕のなかで思っていた。
目がさめるたびに、彼がいることをたしかめて
そのたびに泣いてた。
わたし生きてきてよかった。って
わたし生まれてきてよかった。って
こんなに陳腐なこと
真剣に、でも自然に思えるんだって
びっくりした。
桜が咲いて、春になって
指輪をもらった。
いろいろの日どりを決めて
お互いの休みを合わせて、お互いの家に、挨拶をした。
娘というより孫のようだわ、と言う
彼のお母さんの手。
爪のかたちが、いっしょだった。
お父さんのハの字になる眉、答え合わせみたいで
すこし涙が出た。
わたしの両親は、驚いて
何度もなんども、まあまあ、と繰り返した。
わたしは結婚しないと思っていた、という。
父は恥ずかしそうだった。
友達に報告したのは、先週で
付き合いの長い友達ほど
もったいない言葉で祝福してくれた。
突然家にきてわたしを抱きしめてくれたり
もうお祝いを送ってくれたり
気が早いよ、と笑っている。
これからどうなるのか、正直なところ、全然わからない。
一緒に住んでもいないし、
大きな約束が一つあるだけで、
まだなにも変わっていない。
でも、わたしは、
いちばん望んでいたものを抱きしめている。
何度もなんどもあきらめるって決めて
そのたびにどうしようもなくなって
悩んで勝手に傷ついて
それでも手放せなかった想いをやっとかなえられた。
強くなるって、こういうことかも、しれない。
がんばれそうです。
ここで、たくさんのことを吐き出して
聞いてもらって
声をかけてもらって
今日までやってきました。
これを最後に、って
なかなか最後にできなかった
わたしの想いが帰るところ。
わたしだけの場所。
彼に、見せてみたい気もするけど
きっと嫌われちゃうと思う。
だから、
この言葉で鍵をかけます。
おやすみなさい。
10年分の、わたしの想い。
おやすみなさい。
本当に、ありがとうございました。
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