「絶対に自分の非は認めない」リニア妨害の川勝知事「史上最悪の記者会見」一部始終…マスコミも疑問”吐き気を催すレベル”

小倉健一
公開)

 リニア中央新幹線の静岡県内の公示を巡り、JR東海の批判をし続けている静岡県の川勝知事。国交省の有識者会議は、リニア中央新幹線静岡工区の環境保全に関する報告書を大筋で了承するという”国のお墨付き”が出ても、なおも反発を続ける。そんな中で、11月9日に開かれた川勝知事の会見。その内容にマスコミ関係者からは疑問の声があがる。「自分の非を一切認められないような姿勢はもはや小さな子供と話しているようだ」(大手紙記者)。一体何が起こったのか。経済誌プレジデント元編集長の小倉健一氏が解説するーー。

目次

筆者は吐き気すら催した

 リニア着工の建設に、ひたすら難癖をつけ続ける静岡県の川勝平太知事。国交省からリニア中央新幹線が大阪まで全線開業すると、観光消費の拡大によって10年間で1679億円の経済効果が静岡県に生じるとの試算を発表されたのだが、「この試算を出すことに10か月かけた」ことだけを根拠に、「お粗末」と切り捨てたのが、前回10月23日の記者会見だった。

 今回(11月9日)の記者会見は、そんな川勝知事による「狂気の祭典」とも呼べる、おぞましい内容のものだった。正直、記者会見の内容は、全編にわたって虚偽とすり替えで塗り固められていて、口では「リニア建設に賛成」といったことがあったが、川勝知事はどうやってもリニア着工を邪魔する気だ。その頑なな態度に、筆者は吐き気すら催した。今回は、その記者会見を振り返ってみよう。どれほどひどいものだったかを少しでも伝えたい。

 まず、記者会見の全体(リニア関連部分)から。これまでデタラメな難くせをつけてきた「大井川流量」の問題が、田代ダム案で解決しそうになったことを受けて、「水質」の問題へとすり替えを行おうとしたことだ。

川勝知事「量だけでなく水質の問題もある」新たな難癖

川勝知事 量だけでなく水質の問題もある。水脈が変わり、トンネルを掘ると濁水が出る。そうしたものの処理も含めて水質が変わるということがある

 そもそも工事の際にトンネルから出る水を大井川に戻すことにより、大井川の流量に影響は及ばない(中間報告では、トンネルを掘ると解析上はむしろ流量は増えるとされている)。また工事の一定期間中に静岡県から山梨県側に流出するトンネル湧水(大井川の年間流量のゼロコンマ数%程度の量)についても、解析上は大井川の流量に影響を与えないとされているものの、流域での安心感の醸成への配慮から国の有識者会議の中間報告で「返すべく協議を行うべき」とされたことに対応し、田代ダム案で解決することになった。しかしそれにも関わらず、今回の記者会見で川勝知事は、田代ダムの水は、トンネルからの湧水とは別の水であり、「水質」が違うと言いだしたのだ。トンネル工事で出た湧水より田代ダムの水の方が質は良いのは議論の余地はないはずだが、トンネル湧水と大井川の水の水質が違うからダメとはいったいどういう考えなのだろう。川勝知事は中間報告に記載された「全量戻しの定義(トンネルに湧き出た水そのものの全量戻し)」に拘っているようだが、中間報告ではそれを求められているわけではなく、静岡県も「トンネル湧水そのものを戻せ」とは言っていない。つまり、それを求めているのは川勝知事だけという点にも留意した方がいい。さらに、川勝知事は、国交省が問題ないとしている水利権、生態系の問題に、議論を拡大させようとしている。お得意の「ゴールポスト動かし」である。

ここまで遅らせたのはまさに(JR東海の)準備不足…絶対に自分の非を認めない

川勝知事 水の戦いは水を獲得するための戦いであるから、それが戻ってくるということによって皆さんに歓迎されている。その意味では、私も彼らの気持ちを良く分かっている。

 川勝知事は、ことあるごとに、本来静岡県から失われている水が獲得できるから周辺自治体の首長が田代ダム案を歓迎しているという前提に立った発言を繰り返す。しかし、周辺自治体の首長が田代ダム案を歓迎するのは、ダムに取られている水が戻ってくるといった小さな話ではなく、中央新幹線計画という大事業に協力するにあたり、懸案であった大井川の流量の問題に糸口が見えてきたからだ。年間ゼロコンマ数%の流量を心配し、さらには水質にまで懸念を表明している政治家は、日本でただ一人、川勝知事だけだ。

川勝知事 (田代ダム案の決着が)ここまで遅らせたのはまさに(JR東海の)準備不足で、東京電力の管理されている水利権を持っている田代ダムの水を戻すと言われたわけで、ようやくこれが交渉に入ったわけである。いかに準備不足であったかと、そのためにどれほど振り回されたかということもある。

そもそも問題解決の糸口「田代ダム案」すら一蹴していた川勝知事

 何がなんでも、自分に責任があると言われたくないのだろう。誰からも問われているわけでもないのに、田代ダム案の決着に時間がかかった責任論を言い出した。しかしながら、田代ダム案を止めていたのは川勝知事だ。当初、JR東海から田代ダム案が示された時に川勝知事は「乱暴な議論」と一蹴した。2022年6月の県議会においても「流域の健全な水循環を維持すべきとする水循環基本法の基本理念に反している」と意味不明なロジックで田代ダム案に反対している。その他にも「田代ダム案は全量戻しになり得ない」と繰り返し主張したのは川勝知事である。また、今年3月に開かれた流域首長も含めた利水関係協議会において、流域首長から田代ダム案について概ね賛意が得られてからも、県は持ち帰り検討と言い張り6月にJRが東京電力と本格協議に入るまでの期間、無駄に3か月を消費した。誰がリニア着工を遅らせているかは明白である。

 次に、川勝知事が言い出したのが「新幹線新駅」である。巨額赤字を垂れ流し続ける静岡空港に、空港駅ができると黒字になると考えているようだ。そんなことはもちろんない。観光資源に乏しい静岡空港を利用する客は、(現在と同様に)そのまま東京へ出発するだけだ。県民にメリットはない。発着料の増収で経済効果を期待する方がおかしい。

何の根拠もない風説の流布をする川勝知事

川勝知事 私がこの提案(新幹線が停車する空港新駅)を出したというよりも、2011年にまとめられた交通政策審議会小委員会、ここで、新駅の可能性が謳われている。それをまとめられたのは家田先生であった。家田先生から、「そこに具体的な名前は書いていないけれども、あれは空港新駅の事であります」ということで、これはリニアができれば可能であると、それがもう謳われている。

 この家田先生とは、家田仁氏のことである。東洋経済オンライン(2019年9月24日)において<空港の下に駅ができるかどうかについて家田氏は「そんな発言をした覚えはない」と知事の発言を否定している>とあり、完全なる川勝知事の事実誤認だ。

川勝知事 今は、あそこ(空港周辺)の水は牧之原の台地の上にあるから、大井川の水を使っているわけである。大井川の水が、流量も、あるいは水質等々も含めて問題が出てくると、空港そのものが干上がる可能性も全然ないとは言えないということである。

 リニア工事で、静岡空港周辺の水が干し上がるかもしれないなどと言い出しているのだが、何の根拠もない風説の流布である。行政の長の公式会見の発言とは到底思えない。さっさと退陣してもらいたいものだ。静岡県議会は何をやっているのだろうか。

日経新聞記者の鋭い質問に謎の抗弁をする川勝知事

川勝知事 (日経新聞記者から、リニアの工事よりエコパークへの観光客の流入の方が環境に影響あるのではと問われ)交通の便が悪いため、いきなりそんなに観光客が突然来るということはちょっと想定しにくい。

 日経記者の質問には、非常にするどいものがある。どう考えても、水一滴残らず返せという理不尽な要求と比較して、エコパークへ行く観光客のほうが環境に悪影響がでそうだ。人が来れば、生態系が変わると言うこともよく起きる。しかし、観光客はこないという謎の抗弁をする川勝知事。静岡市HPの<南アルプスユネスコエコパークについて>というページには、<みんなでハイキング><学校のお友だちが自然体験教室にやって来たよ>などと、人間がくる前提の表現が目立つ。

中日新聞から当たり前のツッコミ入ってもはぐらかす

 続いて、中日新聞の記者から「知事は度々、ユネスコエコパークの保全を国際的な責任だとか国際公約だというふうにおっしゃっていると思うが、ユネスコエコパークの理念を確認してみると、自然を厳格に保護することが主目的の世界自然遺産とは別で、人間の干渉を含む生態系の保全と社会経済活動の両立を目指す地域だというふうに理念が掲げられていると思う。知事が保全だけを強調するのは違うのではないかと思うがどうか」とツッコミが入る。すると、「ともあれ」といって全く質問に答えない。

川勝知事 ともあれ、南アルプスが、本州のなかで3,000m級の、生物が最も多様に分布しているところであるという自然条件がなければ、エコパーク、これはbiosphere reserveというのが正式な名前であるが、認定されなかったと思う。

 恐ろしいはぐらかし力の「ともあれ」である。ともあれ、つまり「それはそうとして」「とにかく」「それはさておき」といった意味だ。主に、議論や話題の焦点を変える際、あるいは一つの話題を終えて別の話題に移る前に使われる言葉ということだ。

 この会見を聞いて、怒りを覚えない人がいるのか。川勝知事はいつまで知事の座に留まるのだろか。

この記事の著者
小倉健一

1979年生まれ。京都大学経済学部卒業。国会議員秘書を経てプレジデント社へ入社、プレジデント編集部配属。経済誌としては当時最年少でプレジデント編集長就任(2020年1月)。2021年7月に独立。現在に至る。 Twitter :@ogurapunk、CONTACT : https://k-ogura.jp/contact/

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