CEDECに登壇した経緯と振り返り

CEDECという日本最大のゲーム業界の知見共有の場に、「RTAを活用したプロモーション」というテーマで登壇して参りました。
登壇にあたって本当にたくさんの人に協力頂きました。私一人の力ではこういったことは出来ませんでしたので誠に感謝しております。

こちらの記事では登壇のきっかけから、登壇後の反響に対する振り返りまで書かせていただきます。

登壇のきっかけ

一番のきっかけはRTA走者のゆとりんさんがスーパーモンキーボールの公式生放送に呼ばれたこと

RTAはバグ技を使ったり等公式から認めにくいようなことをたくさんやっているため、公式でこのように大々的に取り上げることはかつてなかったため非常に注目を集めました。

このスーパーモンキーボールのRTA公式生放送を見て、「RTAを活用したプロモーション」というのはありなのではないかと考えたため登壇を検討し始めました。
ちなみに私自身もゲーム会社でゲームを売っていたことはあるので、ゲームの営業の自分だったら活用したいと思ったのも大事なポイントです。

応募準備

CEDECは「こういうこと話しますよ」という簡単な登壇内容を応募書類として提出します。
今回自分は他の会社様の事例を複数扱うこともありとにかく許諾確認に回りました。もちろん引用という手で取り上げることも可能ですが、RTAという賛否あるテーマで勝手に取り扱われても困るという会社様もいるだろうと思い、確認を行いました。
ここに関しては取り扱いたいけど間違いなく許諾が出ないだろうと思ってそもそも許諾を取りに行かなかったところから、確認をして連絡が取れなかったもの、確認したが断られてしまったものなど非常に様々でした。
ただ会社的には認められないのですが、えぬわたさんのRTA見ましたとかメールで返してくださる方とかもいて、色々と活動していて良かったと思ったところです。

そして応募準備の段階で最も取り扱いたいセガ様のスーパーモンキーボールチームにももちろん確認を入れました。公式生放送に出演したゆとりんさんに繋いでいただき実際にZoomで話して公式RTAの意図なども伺い「このテーマで応募出来るぞ」というレベル感まで材料を揃えることが出来ました。お時間頂きありがとうございました。

正直言うとこのスーパーモンキーボールチームの方に登壇してほしかったというのはあったのですが、色んな事例を扱うという内容ということもあり自分が登壇することに。
結果的にRTA in Japanの解説などで有名でピアキャスト黎明期からRTA界を見守っていたアジーンさんに「バランスの取れた」と言って頂けたのはとても嬉しかったですし、RTAにもどっぷりつからず、ゲーム業界での経験も踏まえつつもそこも主ではないというバランス感の自分が話せたのは良かったのかもしれないと思いました。


当選から準備

応募から1か月程度で当選の連絡が。実は応募から当選までの間にRTAを活用した施策などが世に出たりもして、追加で許諾を取りに行ったりもしてさらに大変に。
そしてここから本格的に資料の準備や発表の練習に。

スライドのデザインは友人のデザイナーにお願いしました。しっかりとした場に出るからにはここも仕上げないとと。周りは会社のテンプレがある中、フリーの自分はそういったものからしっかり準備せねばという責任感はありました。

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スライドのテンプレ。右下には新しいえぬわたロゴが

また資料や発表の練習もCEDEC登壇経験のある方や、過去のCEDEC登壇者の面倒を見てきたような方々に見てもらい、恥ずかしくないものに仕上げていきました。
数字周りに関しても、ゲーム業界で分析経験の長いベテランの方にチェックしていただき客観的に問題ないかも確認していただきました。
RTA側に関しても違和感がないか、事実とのずれがないかなど、ピアキャスと時代からRTAシーンをずっと見てきたRTA走者複数名に確認頂きました。(上記のアジーンさんではないです)

また許諾周りでも特にスーパーモンキーボールチームの方には素材やYouTubeのアナリティクスデータ、そしてその成果に対する考えなどまで丁寧にご連絡頂きました。

本当に多くの人の協力があって出来上がった資料となりました。ありがとうございました。


当日

いつものパシフィコ横浜、そこに人はほとんどおらず、配信担当の方がいるのみ。緊張しなかったのは良かったのですが、実際に人がいる中でやってみたかったという風にも思いました。

いざ本番。特に大きなトラブルもなく終えたかと思います。ペラペラ綺麗に上手に話せたとまでは言いませんが、聞いてくださった方々も聞き取りやすかったとのことだったので、普段配信活動で喋りなれていて良かったと思った次第です。
質問も半分以上は想定外の質問でしたがしっかり答えられたと思っています。感想でも「質問に対する返しが速かった」というようなものも頂き嬉しかったです。

事後アンケート

見ていただいた方のアンケート回答をCEDEC公式から頂くのですが5段階評価でざっとこんな感じ。

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相場が全く分からないのですが、個人的には上出来だと感じています。
特に誰でも分かりやすくというのを意識したので理解できたかの項目で95%近くがポジティブ回答ネガティブ回答が0なのは嬉しかったです。
満足度は、「言いたいことは分かるが納得は行かない」という人はいると思っていましたし、「役に立ちましたか?」もメインのターゲットが宣伝ということもあり、直接役立てにくい方が多いと思っていたので十分だと思います。
頂いているコメントも「分かりやすかった」などポジティブなコメントも多く、「また来年も登壇してほしい」といったお声も頂けて嬉しい限りです。
アンケートフォーム上ネガのコメントは1件だけで「開発者としては、見てもらえない部分が増えるのでRTAは適さないと思う」というようなご意見を頂いて、それはもっともだと思っております。私もRTAが全てとかは思っておらず、公式生放送もレッドブルのFF7Rの公式生放送みたいなやり方が良いと思っていて、公式生放送の一部コーナーとしてRTAを取り上げるみたいなバランスですね。


メディア

また多くのメディアに取り上げていただきました。ありがとうございました。
CEDECの参加料自体は非常に高いので、多くの人が私の講演を直接見ずにメディアを通して見ることになります。
昔からRTAを走られている方々からも「同じことを考えていた」みたいに概ね同意という感想を頂けて良かったです。
一方いわゆる資料の一人歩き状態が起きてしまい残念と思うのと同時に「口頭補足すればいい」みたいな自分の考えの甘さを反省しております。

直接頂いたご意見や特に目立った話に関して特に伝えられなかったと思っていた2点を補足させていただきます。
ちなみに「RTAが宣伝に役立つわけない!だったらもっと○○は売れている!」みたいなご意見もいくつか見かけましたが、今回私は「RTAの公式生放送をすればゲームが売れる」とは言っておらず、「それで成功した事例があるからどの辺がポイントなのか探ってみました」みたいなものです。そもそもどんな施策もポイントを抑えないと成功しません。また人によって考え方が異なる点でもあると思いますので、こういった意見の相違に関しては仕方ないと思いますが、「言いたいことは分かるが、俺は売れないと思う」みたいな意見の方を見かけられたのはまだ良かったと思っています。納得はさせられなかったにしろ、意見が違う人でもこちらの主張というものは届いていたようなので。

まるで自分の数字のように語っていておかしい

Twitter上で名指しタグ付けで指摘いただいていたので補足しようと思いました。そのように感じさせてしまったこと自体は申し訳ないです。

まずRTA in Japanの同時接続者数の話に関して言うと、
事実としてRTA in Japanで私がリングフィットアドベンチャーのRTAを披露した時間帯に同時接続者数が18万人でした。

ちなみに講演ではリングフィットアドベンチャーというワードは一切出しておりません。
またえぬわたが18万の同時視聴者数を稼ぎだしたみたいな言い方は全くしておらず、日本最大のRTAイベントの同時視聴者数が日本で歴代5位です。といった言い方です。

またメディアで「トップRTA走者のえぬわたが」みたいに書かれていることもありますが、もちろん自分でそんなことは名乗っていません。むしろRTA歴は短いですし、別にRTA界の代表とかそういうわけでもなんでもないですと明言しています。

一応スライドの最初の実績で「自信のRTA配信でTwitter世界トレンド1位獲得」とありますが、これはえぬわた個人のチャンネルで叩き出したものです。RTA in Japan Summer2021の話ではありません。
また「2021年Twitterトレンド大賞ゲーム部門ノミネート」はRTA in Japan出場時のトレンド入りの影響もありますが、それより先に自身の解説動画がバズってトレンド入りしています。
何より実績で「同時接続者数18万人記録」みたいに書いていないのは、それは私の実績ではなくRTA in Japanのものですという意図があり諸々配慮したつもりでした。
どちらかというとRTAでこういったムーブメントが起きていますよと伝えたい意図の物でした。

私自身も多くの人が紡ぎあげてきたものでこのRTAという世界が成り立っていると思っていますし、実際にRTA in Japan本番でもしっかりとこの場を作り上げてくださった方々に対する感謝も述べています。それを踏まえた伝え方をしたつもりでしたが、どうしても文字媒体だとそういったニュアンスが伝わらなかったのは残念ですし、スライドに明言すべきだったと反省しています。


RTAの歴史でbiim氏の貢献を省いている

まずこの指摘に関してどういうことかの説明をさせてください。
複数メディアで取り上げていただいた中、最後に取り上げてくださったメディアのGame Spark様が「RTAの歴史およびRTA配信の歴史」と書かれた1枚のスライド(左上のスライド)をツイートしたことでそこにbiim氏の貢献が省かれていると多くの方から指摘を受けました。分かりやすく言うとTwitter上での炎上です。こちらの引用RTを覗けば何となく分かるかと。

biim氏とはニコニコ動画でRTA動画投稿のハードルを下げ、RTAを流行らせた方でRTAの歴史を語るのに欠かせない人物です。詳しくはご自身で調べていただきたいと思いますが、丁寧な解説をしてそのRTAをやったことがない人でも見て楽しく、たまにプレイをミスしているのもネタにしてちょっとくらいのミスをしてもRTAを走ってもいいということをアピールし、RTAに挑戦するハードルを下げ、またRTA動画なのに早送りを入れるという当時としては画期的なことを行い解説動画アップの敷居も下げました。様々な側面からRTAの敷居を下げ、そのレイアウトやスタイルの動画が「biim式」と呼ばれるほど流行りました。こちらの記事が分かりやすいと思いますのでぜひ目を通していただければと思います。(個人の記事なのでこれが全て正しいと断言出来るのもではありませんが)

このGame Spark様の記事からは残念ながら私の発言が拾われていないのですが、私は明確に「RTA」という言葉と「RTA配信」という言葉を使い分けますと言いました。なぜなら今回は「RTAでゲームが売れる可能性がある」ではなく「RTA配信でゲームが売れる可能性がある」と伝えたかったから。RTAというコンテンツがあるからゲームが売れるのではなく、RTA in JapanのようにRTA配信をイベントのように盛り上げることが非常に大事ですと言いました
スライドでも「RTAとは何か」というスライドと「RTA配信とは何か」とわざわざ別で紹介して別物ということを強調しておりました。

なのでGame Sparkさんの記事で
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ここでRTAの歴史を紹介。RTA自体は、90年代にもゲームメーカー主導で行う遊びがあり、ゲーム雑誌や攻略本でも最短・最速プレイという形で特集されていました。ゼロ年代ではpeercastやニコニコ生放送など映像配信サービスの登場で少しずつ浸透。2016年ごろから開催された「RTA in Japan」は、2019年頃には大きな注目を浴びるようになり、RedBullや日清食品がイベント協賛を行っていました。
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と書かれていますが、私はRTAの歴史を紹介したのではなく、RTAの配信イベントがいかにこのように大きくなっていったのかを話したのです。
事実として他のメディア様は「RTA配信の歴史」「「RTA」と「RTA配信」両者の位置づけと歴史について、」といった書き方をされていたりします。意図が伝わっていたメディア様もあってよかったです。
ただ他の一部のメディア様も「RTAの歴史」と記載していたりもするので、私自身の見出しの付け方や伝え方にも問題があったと反省しております。見出しを「RTA配信の歴史」として、「ここではRTAの歴史は割愛させていただきます」みたいな明言をすれば良かったと思っています。誤解を招き申し訳ございません。

なのでここのスライドのメインはRTA配信の歴史の話であり、そのためにRTAがいつ始まったのかということが分かるようにスタート地点の話だけ書いた2段落分を記載しました。2000年ごろにRTAという言葉が生まれたということさえあればというところですが、講演のメインターゲットはゲーム業界の方なので、ゲームメーカー主導で速くゲームをクリアするという遊びがあったということは書く必要があると感じて入れました。ここの2つがRTAの歴史にあたると思って見出しに「RTAの歴史」という言葉を入れてしまいましたがそれは良くなかったと思っています。
また、もちろんbiim氏がRTAを流行らせた功績というものは理解していましたが、その話をするとRTA配信の話からそれてしまうと思い抜いてしまいました。これに関しては例えば終了後Twitterなどで補足入れるべきだったと反省しています。
実際にはGame Sparkさんの記事公開後、多くの指摘を受けているのに気が付いて補足のツイートをさせていただきました。
改めてbiim氏のRTA界への貢献に感謝の意を述べ、そして講演で取り上げられなかったことをお詫び申し上げます。
またRTA配信の歴史としては世界最大のRTAイベントGames Done Quickを参考にRTA in Japanが開催されたことや、2019年にはじめしゃちょー氏がピカチュウげんきでちゅうに言及してTwitter上でトレンド入りしたことが一般層への認知につながったということで非常に大事だと思っていました。こちらも取り上げられず申し訳ございません。

最後に

良くも悪くも大きな手ごたえを感じることができ、良い経験をさせてもらったと思っております。
ただ、これがゴールでなく、ここから公式RTA配信みたいなものを作っていき、ゲームを売っていくということが次のアクションになりますので、そこに向けて動いていければと思っています。自分もゲームを売る側ですので。

補足

CEDECが8/25、メディアの記事が出そろったのが9/5
(ちなみにですが例の記事が上がったタイミングでは講演の動画公開は終わっており、自分としては「?」となっています。)

なぜこの記事がこの時期に上がったのか?
というとお金を払ってみてくださった方々のフィードバックが10/19に届き、それを踏まえた内容にしたかったためです。
今回書かせていただいたように、文章だけ読んだ方が自分が口頭で話したニュアンスが伝わらなかったと思っていたものの、本当にそうだったかは実際に私のプレゼンを聞いてくださった方々のフィードバックを受けないと判断できなかったからです。
CEDEC直後には記事を上げませんと事前にお知らせさせていただきました。

そこから1か月近くかかってしまったのは私に原因があるのですが、
元々10月下旬にフィードバックをもらえるとうかがっていたので10月末くらいに着手予定だったこと。そして実際に10/31に一度書き終えているのですが、今回自分の資料がテキストとなり一人歩きしたことで補足を入れないといけない状況になったため、同じことをこの記事で繰り返したくないと考え神経質になり、何度も書き直しや見直しを行い遅くなってしまいました。書いては翌日見直してまた書き直す…を何度も繰り返しました。
また私の意見に対して異論を唱えたりとかは仕方ないのですが、中には人格否定をする方もいて精神的にすり減っていたというのもあります。
今この記事を書いているときも心臓がバクバクしております。
こういった場に出るからにはある程度の覚悟は必要とは分かっているものの、やはり人間なのでそこまで来るとかなり動けなくなるものです。配信活動とかTwitter上では平気な振りはしてますがそれ以外ではメンタルは死んでました。
動揺した状態で書いた記事で釈明しても仕方ないと思いますので少し気持ちを落ち着かせて書きたかったというのもあります。

裁判所の友人に人格否定に関して相談して自分の優位を確認したり、またGame Sparkの中の方から「その節はすみませんでした」とついでに連絡頂いたり、友人に弱音を吐いたり、何とか気持ちに余裕が出来てきたりもしてようやくこの記事ができました。
お待たせして失礼しました。

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リングフィットRTA走者のえぬわたです。100%カテゴリやany%カテゴリの負荷30の世界記録保持者。RTA in Japan Summer 2021で大トリを務めました
CEDECに登壇した経緯と振り返り|えぬわた