乳がん再発させる細胞特定、心不全薬の成分が予防効果も 金沢大など

波絵理子
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 【石川】乳がんを再発させやすくするがん細胞の特定に成功したと、金沢大学などの研究グループが発表した。日本人女性の9人に1人がかかる乳がんは、治療後の転移や再発が課題となっており、それを防ぐために役立つ知見になるとしている。

 金沢大がん進展制御研究所の後藤典子教授らは、抗がん剤や分子標的薬を用いた術前全身治療で乳腺からがん細胞がなくならない患者は、摘出手術を行っても再発・転移が起きやすいことに注目。抗がん剤などが効きにくいがん幹細胞の集団を見つけ、取り出すことに成功した。これを「祖先がん幹細胞」と名付けた。後藤教授は「基礎研究としては、この細胞を発見したことが重要だ」と話す。

 さらに、術前全身治療の際、心不全の治療に使用される「強心配糖体」を抗がん剤と組み合わせることで、祖先がん幹細胞が死滅することも分かった。細胞膜でナトリウムとカリウムを出し入れするポンプの機能を強心配糖体によって止めると、抗がん剤が効きやすくなったという。

 数年後の臨床試験を目指すといい、研究グループで臨床を担当する東京大大学院の田辺真彦准教授は「乳房に残るがんは手術で取り除けるが、強い抗がん剤でも生き残るがん細胞をどうやっつけるかが長年の課題だった。その糸口が明らかになった」と話した。

 研究成果は15日付の米臨床医学専門誌「ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション」電子版で発表された。(波絵理子)

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