2023年10月1日掲載
ワンポイント:日本時間の明日18:30、ノーベル生理学・医学賞の受賞者が発表される。昨年の2022年は、マックス・プランク進化人類学研究所・部門長(教授相当)、日本の沖縄科学技術大学院大学・非常勤殊勲教授のペーボ(67歳)が受賞した。ところが、ノーベル受賞者と発表されたその夜、ピーボが長年、学生や同僚にアカハラしていたと、米国の科学ジャーナリスト・マイケル・バルター(Michael Balter)が、社交メディアの「ツイッター」で指摘した。しかし、その後、アカハラを裏付ける報道がない。ペーボはアカハラしたのでしょうか? 国民の損害額(推定)は1千万円(大雑把)。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
5.不正発覚の経緯と内容
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
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●1.【概略】
スバンテ・ペーボ(Svante Pääbo、写真出典)は、スウェーデンで生まれ育ち、ドイツのマックス・プランク進化人類学研究所(Max Planck Institute for Evolutionary Anthropology)・部門長(教授相当)になった。2020年以降、日本の沖縄科学技術大学院大学(Okinawa Institute of Science and Technology)・非常勤殊勲教授(Adjunct Distinguished Professor)でもある。専門は進化遺伝学で、古遺伝学の創始者である。
2022年に「絶滅したヒト科動物のゲノムと人類の進化に関する発見(discoveries concerning the genomes of extinct hominins and human evolution)」で、ノーベル生理学・医学賞を受賞した。
父親は1982年にノーベル生理学・医学賞を受賞したスネ・ベリストローム(Sune Bergström)である。ペーボは、ベリストロームの婚外子である。
ノーベル受賞者と発表された日の夜、ピーボが長年、学生や同僚にアカハラしていたと、米国の科学ジャーナリスト・マイケル・バルター(Michael Balter)が、社交メディアの「ツイッター」で指摘した。
しかし、その後、アカハラを裏付ける報道がない。
ペーボはアカハラしたのでしょうか?
マックス・プランク進化人類学研究所(Max Planck Institute for Evolutionary Anthropology)。写真出典
沖縄科学技術大学院大学(Okinawa Institute of Science and Technology)。写真出典
- 国:ドイツ
- 成長国:スウェーデン
- 医師免許(MD)取得:スウェーデンのウプサラ大学
- 研究博士号(PhD)取得:スウェーデンのウプサラ大学
- 男女:男性
- 生年月日:1955年4月20日、スウェーデンに生まれる
- 現在の年齢:68歳
- 分野:進化遺伝学
- アカハラ行為の時期:不明
- アカハラ行為時の地位:マックス・プランク進化人類学研究所・部門長(教授相当)
- 発覚年:2022年(67歳)
- 発覚時地位:マックス・プランク進化人類学研究所・部門長(教授相当)、沖縄科学技術大学院大学・非常勤殊勲教授
- ステップ1(発覚):第一次追及者は米国の科学ジャーナリスト・マイケル・バルター(Michael Balter)がツイッターに記載
- ステップ2(メディア):「ツイッター」、「For Better Science」
- ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①マックス・プランク進化人類学研究所は調査していない
- 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし。調査していないので
- 大学・処分のウェブ上での公表:なし。調査していないので
- 大学の透明性:機関以外が詳細をウェブ公表(⦿)
- 不正:アカハラ
- 被害者数:不明
- 時期:不明
- 職:研究職(または発覚時の地位)を続けた(〇)
- 処分:なし
- 日本人の弟子・友人:多数。例えば、大隅典子(東北大学副学長(広報・ダイバーシティ)・附属図書館長・医学系研究科教授、ツイッター)
【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は1千万円(大雑把)。
●2.【経歴と経過】
主な出典:Curriculum Vitae Professor Dr Svante Pääbo
- 1955年4月20日:スウェーデンに生まれる
- 1975~1981年(20~26歳):スウェーデンのウプサラ大学(Uppsala University)で学士号取得:科学史、エジプト学、ロシア語
- 1977~1980年(22~25歳):同大学で医師免許(MD)取得
- 1981~1986年(26~31歳):スウェーデン、ウプサラの細胞研究所(Institute for Cell Research)・博士研究員
- 1986年(31歳):スウェーデンのウプサラ大学(Uppsala University)で研究博士号(PhD)を取得
- 1987~1990年(32~35歳):米国のカリフォルニア大学・バークレー校(University of California (UC) Berkeley)・ポスドク
- 1990~1998 年(35~43歳):ドイツのルートヴィヒ・マクシミリアン大学 (Ludwig-Maximilians-Universität (LMU Munich))・一般生物学教授
- 1997年~現(42歳~):ドイツ、ライプツィヒのマックス・プランク進化人類学研究所(Max Planck Institute for Evolutionary Anthropology)・部門長(教授相当)
- 2020年~現(65歳~):日本の沖縄科学技術大学院大学(Okinawa Institute of Science and Technology)・非常勤殊勲教授(Adjunct Distinguished Professor)
- 2022年10月日(67歳):ノーベル生理学・医学賞・受賞者として発表された
- 2022年10月日(67歳):マイケル・バルター(Michael Balter)がアカハラと指摘
- 2022年12月10日(67歳):ノーベル賞・受賞式典に参加
- 2023年10月1日(68歳)現在:現職維持。無処分
●5.【不正発覚の経緯と内容】
★スバンテ・ペーボ(Svante Pääbo)の人生
2022年、スバンテ・ペーボ(Svante Pääbo、写真出典)は「絶滅したヒト科動物のゲノムと人類の進化に関する発見(discoveries concerning the genomes of extinct hominins and human evolution)」で、ノーベル生理学・医学賞を受賞した。
スウェーデンで生まれ育ち、ドイツのマックス・プランク進化人類学研究所(Max Planck Institute for Evolutionary Anthropology)・部門長(教授相当)になった。
2020年以降、日本の沖縄科学技術大学院大学(Okinawa Institute of Science and Technology)・非常勤殊勲教授(Adjunct Distinguished Professor)でもある。
ペーボは2008年に米国の霊長類学者・リンダ・ヴィジラント(Linda Vigilant – Wikipedia)と結婚し、2人に間に1男1女をもうけた。なお、リンダ・ヴィジラントは再婚で、前夫との間に2人の子供(男)がいる。リンダ・ヴィジラントはマックス・プランク進化人類学研究所・研究員である。 → Svante Pääbo Wiki, Height, Age, Wife, Children, Family, Biography & More – WikiBio
アカハラ事件と結婚や家族などの個人生活がどう絡むか不明であるが、関係していると考え、一応、記載している。
★ペーボのアカハラ疑惑
2022年10月3日、ノーベル生理学・医学賞の受賞者がスバンテ・ペーボ(Svante Pääbo)だと発表された。
その夜、科学記者のマイケル・バルター(Michael Balter)が、「ペーボが長年、学生や同僚に対してアカハラをしていたことは良く知られている」、とツイートした。
スヴァンテ・ペーボがその科学的業績によりノーベル賞を受賞するに値することにはほとんど疑いはありませんが、他の数人の研究者とノーベル賞を共有することもできたはずです。しかし、学生や同僚に対する彼の長年にわたる虐待は多くの人によく知られているが、別の問題である。(Googleの自動翻訳)
被害者たちは長年沈黙をしているとも、ツイートした。
バルター記者は、アカハラ事件を記載した文書はあるのかと聞かれ、「アカハラのことは、一度も公開されていないので、文書はない」、と答えている。
レオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)はマックス・プランク協会(MPG)にペーボのアカハラ疑惑についてコメントを求めた。
マックス・プランク協会(MPG)の広報官は「バルター氏は、粗暴な主張をやめるべきです。ペーボからアカハラを受けたという苦情をマックス・プランク協会(MPG)は受けていません」と回答してきた。
レオニッド・シュナイダーは、ペーボのアカハラ疑惑について、それ以上のことを書いていない。
ただ、ペーボが米国のカリフォルニア大学・バークレー校(University of California (UC) Berkeley)・ポスドクだった時、後輩のアラン・クーパー(Alan Cooper)と一緒に研究をしていた。そのアラン・クーパーがアカハラ事件を起こしていると書いている。
→ 「アカハラ」:アラン・クーパー(Alan Cooper)(豪) | 白楽の研究者倫理
★マイケル・バルター(Michael Balter)は信頼できるか?
マイケル・バルター(Michael Balter、写真出典)は米国の科学ジャーナリストで、英語版ウィキペディアによると以下のようだ。
マイケル・バルターはアメリカの科学ジャーナリストです。彼の著作は主に人類学、考古学、メンタルヘルス、科学におけるセクハラをカバーしています。[1] [2]
バルター氏は、2016 年に物議を醸して解雇されるまで[3] 、 25 年以上サイエンス誌の特派員を務めました。(自動翻訳:Michael Balter – Wikipedia)
2016 年に「物議を醸して解雇」の中身は性不正の告発記事だった。 → 2016年4月30日記事:Science Mag axes Michael Balter after 25 years, Denies it was over Sexual Misconduct story – iMediaEthics
●【アカハラの具体例】
アカハラの具体例は、全く報道されていない。
●6.【論文数と撤回論文とパブピア】
省略
●7.【白楽の感想】
《1》ガセネタ?
「スバンテ・ペーボ(Svante Pääbo)が長年、学生や同僚に対してアカハラをしていた」というマイケル・バルター(Michael Balter)の主張は、普通は、信用しがたい。
ただ、一般論を言えば、有力者の性不正・アカハラ加害は、被害者が明白に被害を訴えていなくても、実際には「ある」ことが、過去の例で多数あった。
被害者が告発すると、加害者から報復され、大衆から侮辱され、キャリアを含め、いろいろ失う可能性が高いからである。それで、かつてはよほどのことがないかぎり告発しなかった。イヤイヤ、よほどのことがあっても、現在でも告発しないことが多い(推測)。
ましてや、被害が深刻だと、長い間、精神的に大変悩まされ、精神が病み、肉体的健康も損なわれ、人生が狂ってしまう。社会にでてきて強大な加害者と向き合う精神・肉体・気力がないので、告発しなかった・できなかった。
だから、報道されていないからという理由で、性不正・アカハラ被害がなかったとは言い切れない。
ただ、スバンテ・ペーボ(Svante Pääbo)のアカハラ疑惑は、科学ジャーナリストのマイケル・バルター(Michael Balter)がツイッターで述べただけである。
バルターは、被害者が誰で、被害の状況はコレコレだと明確に示していない。また、被害者が別のメディア(含・社交メディア)にも登場していない。
そうなると、バルターの主張が信用できるかどうか、はなはだ怪しい。
その上、バルターは物議を醸してサイエンス誌から解雇されている。
ペーボがアカハラ加害者だとの指摘は、・・・ウ~ン、判断は読者にお任せする。
https://www.youtube.com/watch?v=gAxhRTpSgVM
《2》ノーベル賞受賞者は特定分野の業績があるだけ
[この文章は過去の記事を修正・再利用している]
日本社会はノーベル賞受賞者を人格高潔で万能な超人扱いする。極めて異常である。
科学的業績と人格は別次元の話である。
特定なことに優れている人が万能かどうかは別の話である。ノーベル賞受賞者は受賞した専門以外の能力は凡人レベルである。物理学での受賞者は生命科学に関しては凡人レベルである。
100メートル短距離走で金メダルを得た選手が、フィギャスケートや鉄棒では金メダル級の演技ができないのと同じだ。
「ノーベル賞受賞者は人格高潔で万能な超人」という大きく間違ったメッセージを日本のメディアが日本国民に与え続けているのは非常に問題である。
ノーベル賞受賞者が 厚顔無恥で傍若無人な言動 をしても、日本社会は、好意的、あるいは大目に見ている。
例えば、単に有機化学の専門家だけなのに、国の教育再生会議の座長をした野依良治というノーベル賞受賞者がいた。有機化学の専門家であっても教育は素人である(大学で学生に対して有機化学の教育をするという意味では専門家ではあるが)。その人に、国の教育方針を任せる官僚のセンスを疑うし、引き受ける野依のセンスも疑う。
いちいち挙げないが、しかし、超人扱いの例はたくさんある。
では、ノーベル賞受賞者は研究成果だけでなく研究公正も優れているのだろうか?
優れている理由は全くありません。
科学的業績と規範的言動は全く別である。
否定的な面をあえて強調すれば、ノーベル賞受賞者は自己主張とズルさが人一倍強く、ネカト・クログレイはギリギリという研究者が多い、と思う。
ノーベル賞は研究者の倫理や人間性を評価しているわけではない。激しい研究競争を勝ち抜くには謙遜や温厚では無理だ。だから、当然と言えば当然だ。
もちろん、ノーベル賞受賞者には規範に優れた人もいるが、研究界全体の平均値と比較すれば平均値以下だろう(当社比です)。
《3》2023年版まとめ:ノーベル賞受賞者・候補者の不正(含・疑惑や関連):他記事でも同じ内容
「●白楽の卓見・浅見3【ノーベル賞受賞者の不祥事は多いと思うべし】」に一部をまとめたが、2023年版リストでデータを加えた。
白楽ブログで解説したノーベル賞受賞者(最後の方に候補者)の不正(含・疑惑や関連)を受賞年順にリストした。2023年版リスト。
- 1964年、盗博:宗教学:キング牧師(Martin Luther King Jr.)(米)
- 1976年、「性的暴行」:カールトン・ガジュセック(Carleton Gajdusek)(米)
- 1992年、「性不正」:文学:デレック・ウォルコット(Derek Walcott)(米)
- 1998年、ルイ・イグナロ(Louis Ignarro)(米)
- 2004年、リンダ・バック(Linda Buck)(米)
- 2007年、マーティン・エヴァンズ(Martin Evans)(英)
- 2009年、「間違い」:ジャック・ショスタク(Jack W. Szostak)(米)
- 2011年、ブルース・ボイトラー(Bruce Beutler)(米)
- 2012年、化学:ロバート・レフコウィッツ(Robert Lefkowitz)(米)
- 2016年、化学:フレイザー・ストッダート(Fraser Stoddart)(米)
- 2017年、マイケル・ロスバッシュ(Michael Rosbash)(米)
- 2018年、化学:フランシス・アーノルド(Frances Arnold)(米)
- 2019年、グレッグ・セメンザ(Gregg Semenza)(米)
- 2022年、「アカハラ?」:スバンテ・ペーボ(Svante Pääbo)(ドイツ、日本)
- 2022年、「性不正」:経済学:フィリップ・ディビッグ(Philip Dybvig)(米)
他にも問題者(含・研究公正以外)はいる。古いので白楽ブログでは取り上げない(多分)。
- 1912年、アレクシス・カレル – Wikipedia
- 1923年、物理学:ロバート・ミリカン – Wikipedia
- 1956年、物理学:ウィリアム・ショックレー – Wikipedia
- 1962年、ジェームズ・ワトソン – Wikipedia
以下は問題ないと思う。
- 2001年、ポール・ナース – Wikipedia:Paul Nurse
2018年7月26日の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Nobel Prize winners correct the literature, too – Retraction Watch - 2002年、ダニエル・カーネマン – Wikipedia:Daniel Kahnemann
2017年2月20日の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:“I placed too much faith in underpowered studies:” Nobel Prize winner admits mistakes – Retraction Watch
ノーベル賞候補者の不正(含・疑惑や関連)を発覚年順にリストした。
- 1974年、ロバート・グッド(Robert A. Good)(米)
- 1981年、エフレイム・ラッカー(Efraim Racker)(米)
- 1988年、「錯誤」:ジャック・ベンヴィニスト(Jacques Benveniste)(仏)
- 1993年、無罪:バーナード・フィッシャー(Bernard Fisher)(米)
- 2004年、「児童性的虐待」:フレンチ・アンダーソン(French Anderson)(米)
- 2014年、デイビット・バウルクーム(David Baulcombe)(英)
- 2015年、エイドリアン・バード(Adrian Bird – Wikipedia)(英)
- 2016年、「間違い」:チュンユー・ハン、韩春雨(Chunyu Han)(中国)
- 2020年、物理学:ランガ・ディアス(Ranga Dias)(米)
- 2021年、「レイプ」:デイヴィッド・サバティーニ(David Sabatini)(米)
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日本の人口は、移民を受け入れなければ、試算では、2100年に現在の7~8割減の3000万人になるとの話だ。国・社会を動かす人間も7~8割減る。現状の日本は、科学技術が衰退し、かつ人間の質が劣化している。スポーツ、観光、娯楽を過度に追及する日本の現状は衰退を早め、ギリシャ化を促進する。今、科学技術と教育を基幹にし、人口減少に見合う堅実・健全で成熟した良質の人間社会を再構築するよう転換すべきだ。公正・誠実(integrity)・透明・説明責任も徹底する。そういう人物を昇進させ、社会のリーダーに据える。また、人口減を補う以上の移民を受け入れる。
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●8.【主要情報源】
① ウィキペディア日本語版:スバンテ・ペーボ – Wikipedia
② ウィキペディア英語版:Svante Pääbo – Wikipedia
③ 2022年10月4日のレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)のブログ「For Better Science」記事:Svante Pääbo: Nobel Disease before Nobel Prize – For Better Science
④ マイケル・バルター(Michael Balter)のブログ:Balter’s Blog
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