架空の連帯保証人を立て、賃貸借契約を締結した借主が逮捕されました
報道によると、実在しないきょうだいを連帯保証人とし、実際には無職であるのに仕事をしていると偽り、賃貸借契約を締結して部屋を借りた借主が逮捕されたとのことです。信越放送の記事(gooニュース)の記事を引用します。※掲載社の都合によりリンク先の元記事が削除され、リンクが切れることがあります。あらかじめ御了承願います。
※8月28日追記:リンク先の元記事が削除されましたので、リンクを外しました。
連帯保証人に実在しない「双子の姉」賃貸マンションを不正契約 詐欺容疑で女を逮捕 長野
2021/08/19 20:26存在しない双子の姉を連帯保証人にするなどして不動産会社と不正に賃貸契約を結んだ疑いで43歳の女が逮捕されました。詐欺の疑いで逮捕されたのは佐久市中込の無職・長澤佑希栄容疑者43歳です。
警察によりますと長澤容疑者は市内のマンションの一室を契約する際、無職でありながら仕事をしていると偽った上、きょうだいがいないにも関わらず実在しない「双子の姉」を連帯保証人にするなどして不正に部屋の賃借権を得た疑いが持たれています。
また、敷金や礼金などの初期費用およそ30万円を10分の1以下しか払わず、入居した今年3月からの5か月分の家賃およそ30万円は全額未納だということです。
長澤容疑者は容疑を認めているということです。
信越放送(gooニュース)
この借主は、実在しない人物を連帯保証人とした上に、実際には無職であるのに「仕事をしている」と偽り、賃貸借契約を締結しました。この行為は明らかに詐欺罪(刑法246条第1項)の構成要件に該当する犯罪行為です。詐欺罪には罰金刑の規定はありません。裁判で有罪になった場合は10年以下の懲役刑に処せられます。
おそらく、家賃の滞納が続いたことから賃貸物件のオーナーが不動産会社に相談し、連帯保証人引き受け承諾書に記載されている連帯保証人に連絡がつかないことから架空の人物を連帯保証人に仕立てたことが発覚したのだと思います。
連帯保証人を立てる際には「連帯保証人引き受け承諾書」を提出する必要があります。連帯保証人引き受け承諾書には実印が捺印され、印鑑証明が添付されていることが通常です。さらに、提出された不動産会社では念のために連帯保証人に電話をかけ、連帯保証人引き受けの意思を再確認します。
この借主が賃貸物件に入居しているということは、連帯保証人引き受け承諾書および印鑑証明が提出されていることになります。連帯保証人が実在しないということは、提出された印鑑証明は捏造されたものであると言えます。
架空の印鑑証明が作成され、提出されたことから、この借主はいわゆるアリバイ会社(在籍会社)を利用した可能性が極めて高いです。アリバイ会社(在籍会社)とは連帯保証人を引き受ける方がいない場合に、主に架空の人物を連帯保証人として紹介することを生業とする会社のことです。
従来は、金銭的に窮している方が自ら志願して連帯保証人を引き受け、引き受けることによる手数料を収入にする方がいました。しかし、連帯保証人の責任は重く、安易に引き受けると自己破産に追い込まれる恐れがあることが周知されたことから、連帯保証人の引き受けを自ら志願する方は減っています。
このため、アリバイ会社は主に架空の人物を連帯保証人に仕立てます。連帯保証人の在籍確認(通常は電話)が行われる際は、アリバイ会社の者が代返します。さらに、アリバイ会社は連帯保証人の印鑑証明を平然と捏造します。
架空の人物を連帯保証人にする際に、本人とは全く無関係な者を連帯保証人にすると怪しまれるので、きょうだいなどの親族を架空の連帯保証人に仕立てるのはアリバイ会社の常套手段です。
賃貸物件のオーナーが入居者募集を直接依頼した不動産会社がアリバイ会社を利用することは、まず考えられません。それにアリバイ会社は、いわゆる反社会的勢力のシノギとして行われていることがよくあります。アリバイ会社の利用はオーナーの信頼を裏切る行為であり、発覚した場合にはオーナーから出入り禁止を申し渡されることになります。
あくまでも推測の域を出ませんが、この借主はオーナーが入居者募集を依頼した不動産会社(以下A社)とは異なる別の不動産会社(以下B社)を経由して入居申し込みを行い、この借主と直接接触したB社がアリバイ会社の利用を勧めたことが考えられます。
令和2年4月に施行された改正民法により、ほとんどの賃貸物件において賃貸保証会社(家賃保証会社)の利用が必須になりました。連帯保証人になられる方には連帯保証債務を履行する際の極度額を通知し、契約書および連帯保証人引き受け承諾書に記載することが義務化されたからです。
この借主は、何らかの事情により賃貸保証会社の利用が出来ない(または保証契約を拒否された)ため、B社からアリバイ会社の利用を提案された可能性があります。
借主が自ら「アリバイ会社を利用したい」と申し出ることは、まずありません。報道では借主のことしか取り上げられていませんが、B社がアリバイ会社の利用を勧めたのであれば、B社は詐欺の共犯または幇助犯と言えるのでB社の責任も追及されてしかるべきです。
オーナー様、およびオーナー様から入居者募集を直接依頼されたA社にとって、B社は許せない存在です。B社はオーナー様およびA社の業務を妨害したと言えますので、損害賠償を請求されることになります。
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