明治大学「大学入門講座『国語』」へようこそ!
春から始まる明治大学での生活に期待を抱きながら、日々の練習に励んでいることと思います。
この講座では、大学入学後、すぐに必要となってくる「自分自身の考えを適切なことばを使って伝える」という「ことばのスキル」を身につけていきます。これは、大学生活や大学での学習・研究を進める上ではもちろん、将来、社会で活躍する際にも重要です。
これまで、母語としてあまり意識せずに使ってきた日本語ということばを一度客観的に見つめ直しながら、大学生活をスムーズにスタートさせられるように、この講座で一緒に勉強していきましょう!
第一回は「ことばにかえる」です。耳で聞いたことばを文字に残したり、意味あることばに直したりする練習をしましょう。
明治大学 専任准教授 黒﨑典子
紙とペンは用意できましたか?
ツヅイテ ムコウイッシュウカンノ テンキヲ オツタエシマス シュウノゼンハンハ ヒザシガアタタカク ニッチュウ10ドヲコエルヒガツヅクデショウ
注意深かく書かないと、雑つな字になってしまう。字が汚ないと頭が悪るいのかと疑れるから気を付て書かないといけない
部活動でコーチから連絡事項を聞いたり、授業で先生の話を聞いたり、重要なことを「音」で聞くことは日常的によくあることでしょう。 しかし、「音」は聞いたそばからすぐに消えていってしまう性質を持っています。それを捉えておくために「音」のことばを「かえて」残していくことが必要です。
ここでの「かえる」には二つの段階があります。第一の「かえる」は「音」から「文字」に変化させることです。音声言語を文字言語にかえることです。 第二の「かえる」は、どのように文字に置きかえるかということです。日本語を表記するには、ひらがな、カタカナ、漢字という3種類の文字があるので、その場にふさわしい文字を使用する必要があります。
ひらがな、カタカナに直すのはほとんど問題なくできると思いますが、漢字に直すとなると書く時に時間もかかり、また、正しい漢字で書けているかどうか不安になることもあるかもしれません。 そのような時は、まず、ひらがなかカタカナでキーワードだけを書いておき、後で漢字などを正確に使って文を再現できるようにしてみましょう。
では、さっそく「音」を文字にかえる練習をしてみましょう。
紙とペンを用意してください。
これから聞こえてくる天気予報をすべて書き写してください。1回で難しい場合は、3回までくり返し聞いてもいいです。
用意はいいですか?
音声を書き写す時、最初からすべて正しい表記で書いていこうと思っても、そのスピードについていくことはとても難しいです。
がんばって書いていっても、もしかしたら途中でついていけなくなり、あきらめてしまうかもしれません。
そこで、次のようなポイントに注目して書いていってみましょう。
まずは最初の三つです。
練習問題の最初の文、「つづいて むこういっしゅうかんの てんきです」ですが、もしかしたら、 最初は「つづいて むこう1 天気」しかかけなかったかもしれません。 でも大丈夫です。まずは、意味のまとまりで話についていけたので合格です。
次に「やまぞいをちゅうしんに おおゆきとなり」とありますが、もしかしたら「ぞい」ってどんな漢字だったっけ…と悩んでしまったかもしれません。 でも、そんな時でも悩まず、ひらがなで書いてその先に進みましょう。
「へいやぶでも つもるところがあります」は、最初「へいやぶ」の意味がよくわかないかもしれませんが、そのまま書いておきましょう。 悩まないでスピードについていくと、その前後のことばから意味を推測することができます。 ここでは、「山沿い」とあるので、山と対比させた「平野」だとわかりますね。
「おでかけのさいは じかんによゆうをもってこうどうし」は、「おでかけ 時間によゆう こうどう」と書いたかもしれません。 そのような時はぜひ、略語と記号を使ってみましょう。
「時間」は使い慣れた言葉なので、漢字で書こうとするかもしれませんね。その時、「門構え」は「」という略字があるのでそれを使っても良いでしょう。
また、どのような流れなのかがわかるように「」を使うことも良いでしょう。
最後まで話の流れに沿って書き取ることができたら、次は正しい言葉に直しましょう。その時必要になるのが「辞書」です。
四つ目のポイントはこちらです。
漢字に書き換えるときには、同音異義語と間違えないように、そして送り仮名にも気をつけましょう。不明なときには辞書を使って修正しましょう。
そして最後に、読みやすくなるように句読点を適切な場所に打ちましょう。
では、もう一度、四つのポイントに注意をしながら、練習問題1をやってみましょう。
紙とペンを用意してください。
これから聞こえてくる天気予報をすべて書き写してください。用意はいいですか?
一回目よりスピードについていき、正確に書き取ることができましたか。
次のことばを漢字とひらがなで書き直しましょう。
こちらの漢字テストは「やってみよう」で送り仮名の問題として取り組んだものでしたね。漢字も一緒に正しく書けますか。
送り仮名については、形容詞で漢字部分の読みが3拍以上のもの(汚(きたな)い、潔(いさぎよ)い、甚(はなは)だしい、等)が特に間違えやすいので、注意して覚えておきましょう。
正しい漢字を使って、聞いた文章を正しく意味のある文に直すことはとても大切です。実際に手で漢字を書くことは少なくなったかもしれませんが、スマートフォンやパソコンで変換するときに正確に選択できるようにしたいですね。 漢字が苦手だと感じている人は、今のうちに、手元の教科書や辞書などを使って復習しておきましょう。
① 続いて向こう一週間の天気をお伝えします。週の前半は日差しが暖かく、日中10度を超える日が続くでしょう。
② 注意深く書かないと、雑な字になってしまう。字が汚いと頭が悪いのかと疑われるから気を付けて書かないといけない。
聞いた文章を素早く書くポイントをまとめましょう。
音声で聞いたことばを書き取る時に、これから自分で注意しようと思う点を一つ書きましょう。
いかがでしたか?
素早く書き写すことは、せっかく聞いた大切な話の全体像を忘れないようにするためにとても重要です。 そして、後から漢字に直すことは、読んですぐに正しい意味がわかるようにするために、そして書いたものを後から有効利用するために重要です。
まとまった話を聞いてことばに直し、自分の知識にしていきましょう。