【論説】大野市と岐阜県境を結ぶ中部縦貫自動車道大野油坂道路の勝原インターチェンジ(IC)-九頭竜IC間(9・5キロ)の供用が始まった。これで同自動車道の県内区間のうち7割超がつながり、2026年春を予定する県内全線開通にまた一歩近づいた。市がうたう「生命(いのち)の道」「生活の道」「希望の道」の実現へ、観光客の増加、企業誘致活動の促進に向けた振興策を全国に売り込みたい。
中部縦貫自動車道は福井市と長野県松本市を結ぶ全長約160キロの自動車専用道路。大野油坂道路(35キロ)としては3月の大野IC-勝原IC(10キロ)に次ぐ開通で、今回は大野市和泉地区まで高速交通網がつながった。延伸区間にある県内道路トンネル最長の荒島第2トンネル(4988メートル)の工事が軟弱地盤で難航し、供用が予定より半年ほど遅れた。それだけに、開通を待ち望んだ関係者の喜びは計り知れない。
これまで、大野油坂道路と並行する国道158号は22年度までの10年間で、大雨や大雪、土砂災害などによる通行止めが35回発生するなど、生活への影響が大きかった。今回の延伸区間の8割はトンネルで、地区住民らは冬場の峠道を通らず市街地などに向かうことができる。来年度に市中心部などの中学校と統合する地元中学生の通学時間も短くなり、「生活の道」が確保されたといえる。
高度医療を提供する福井市内の病院への搬送時間も早くなり、傷病者の負担軽減につながるなど「生命の道」としての効果も大いに期待できる。自然豊かな和泉地区にはスキー場やキャンプ場など観光、レジャー施設が点在し、ウインタースポーツ、行楽シーズンには来場者の増加も見込まれよう。
全線開通を見据え大野市は、和泉地区の観光客増に向け化石を生かした振興策を本格化させている。昨年度はJR九頭竜湖駅に恐竜をモチーフにしたオブジェなどを設置し本年度は市和泉郷土資料館の展示を化石に特化。地区内のホテルには恐竜客室を整備し、JR越美北線には恐竜などのラッピング列車を走らせた。
今回の延伸は、企業誘致の面でも全国の注目を集めよう。県内全線開通が着実に進んでいることを企業に伝えやすくなることで、市富田産業団地など市内への企業進出を促すPR材料となるだろう。
県内全線開通まで3年を切った。開通すれば中京方面とつながり、福井県の東の玄関口として物流や観光、企業立地の両面で飛躍が大いに期待される。それだけに、この道路が大野市や福井県の「希望の道」となるよう、官民が足並みそろえ活力を呼び込む施策を一層充実させてほしい。