ガザの子供４５００人死亡、２０年以降に世界の紛争で殺害された子供の総数上回る…国連報告書

　【ニューヨーク＝金子靖志】国連開発計画（ＵＮＤＰ）は９日、イスラエルとイスラム主義組織ハマスの戦闘が続くパレスチナ自治区ガザについて、全人口の９６％が栄養面や衛生面など「多次元の貧困」に陥ったと発表した。交戦が年末まで続けば、１６～１９年間かけてガザで開発・整備したインフラ（社会基盤）や教育機能が失われ、パレスチナ全体の経済損失は２５億ドル（約３８００億円）に上ると試算した。

　ＵＮＤＰが同日公表したガザの被害状況などに関する報告書によると、イスラエルの攻撃で約５割のガザの家屋が倒壊・損壊し、避難民は全人口の約７割に当たる約１５０万人に上った。

　ガザの死者約１万１０００人のうち、子供は約４５００人を占めた。報告書は、２０２０年以降に世界の紛争によって殺害された子供の総数を上回ったと指摘した。６０００人以上のガザの子供が、父母のいずれかを亡くしたという。

　また、保健医療施設への攻撃は３日までに１０１件に上った。病院は３分の１以上、診療所や保健所などは３分の２が閉鎖に追い込まれたという。

　妊娠中の女性は推定約５万人で、最近１か月で約５５００人が出産した。次の１か月でも約５５００人が出産する見通しで、新生児医療が不足しているという。妊婦や乳幼児に対する医療・栄養不足のリスクが高まっており、報告書は「疾病の発症などによってガザ内のパンデミック（大流行）につながる可能性がある」と警鐘を鳴らした。

　最近１か月間の経済損失は、パレスチナ全体で推計８億５７００万ドル（約１３００億円）に上った。

　ＵＮＤＰのアヒム・シュタイナー総裁は９日、「ガザの前例のない人命の損失や破壊は容認できない。既に 脆弱（ぜいじゃく） だった人々の貧困を急加速させている」と述べ、即時停戦を訴えた。