六花の正義
結局いっきに書いてしまった…めっちゃ長い…ごめんなさい読むの大変ですよね…。
しかしわけるのもどうかと思ったので一気に投下してしまいます。
今までで一番長い…しかもこれでもまだ後日談とか入ってない…。
それはまた改めて書きます…。
展開にも、それぞれの言葉にも、賛否両論あると思います。
個人的には厳しめのつもりはないので、厳しめタグもつけていません。
(これまでの話でさんざん自衛を求めてるので大丈夫かな?と思うのですが…)
自分で書いて自分で推敲をしているので、どうしても自分の頭で勝手に補完して書いてしまっているところもあるかもしれません。
多少は次回補完させていただきますが、無茶苦茶な場所があればご指摘いただければと思います。特にコナンの心情部分は次回の予定。
ただし、申し訳ありませんが批判はお控えください。
間違いなく言えるのは、論理云々以上に、所詮は17歳の未成年である主人公よりも、
29歳で警察上層という魑魅魍魎の相手をしているオリ主君の方が間違いなく一枚も二枚も上手だということです。
説得や交渉において、相手を動揺させるのは常套手段ですね☆
…あっ少し入れたミステリ部分は何かあっても全力で見ないふりしてください!!
お願い!!!します!!!!詳細全然考えてないから!!!!
追記
2018年08月23日付の[小説] 女子に人気ランキング 22 位
2018年08月23日付の[小説] デイリーランキング 49 位
2018年08月24日付の[小説] デイリーランキング 41 位
うわああ…ありがとうございます…!
あと誤字と言葉尻少し修正しました…!
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高く飛び跳ねたサッカーボールが、俺の遙か頭上を越えていく。
上を向いた瞬間、太陽の光が目に飛び込んで、少し眩しい。
「何やってんだよ元太!」
「悪い悪い」
えへへ、と笑うそいつに背を向けて、俺はサッカーボールを追いかける。
今日は少年探偵団の奴らと一緒に、少し大きな公園にサッカーをしに来ていた。力任せにボールを蹴りがちな元太のおかげで、さっきから走り回ってばかりだ。
誰かに当たってたりしないといいけど…。
「お、あった」
少し離れた植え込みに、ボールが転がっているのを見つけた。
周囲に人影はないし、植え込みも傷ついた様子はない。良かった。
そう確認して戻ろうとしたとき、よろよろとベンチに近づき、どっかりと腰を下ろした男性の姿が目に入った。顔は見えなかったが、あの動き方からして体調が悪そうだ。しかし、周囲に連れらしき人は見えない。俺は気になって、その人に駆け寄った。
「お兄さん、大丈夫…柊木さん?」
「ん…?コナン君か…?」
そっと顔を上げると、ずっともう一度会いたいと思っていたその人だった。顔色は真っ青で、指先が少し震えているのがわかる。
「柊木さん、体調悪いの?顔真っ青だよ」
「ああ、いや、…ちょっと人に酔ってね。心配して声をかけてくれたのか、ありがとう」
柊木さんはそう弱弱しく微笑むが、人に酔ったってこのあたりそんなにひと気があるわけでもないのに。これは灰原を連れてきた方がいいかもしれない。
「あれ、知り合い?」
「萩原」
影がかかったと思ったら、柊木さんと同じくらいの年齢の男の人が声をかけてきた。ゆるく下がった垂れ目は優し気で、少し長い髪が良く似合っている。ほい、と柊木さんにペットボトルを渡したその人は、どうやら柊木さんの連れらしい。
「お兄さん、柊木さんのお友達?」
「そうだよ~。柊木のこと知ってんだ」
「うん。ねえ、柊木さんすごく体調悪そうだけど、病院に連れて行かなくて大丈夫?」
「ん~とりあえず貧血起こしただけみたいだから」
「ああ、少し休めば大丈夫だよ。ありがとう、コナン君」
コナン君?とその萩原さんはひとつ瞬きをして、まじまじと俺を見つめた。
「そっか、君が江戸川コナン君か。噂は聞いてる、あんまり事件現場うろちょろしちゃだめだぞ~」
「え、僕のこと知ってるの?」
「捜査一課の伊達や松田知ってる?おにーさんこれでも刑事でね、奴らの同期なんだ」
だから話は聞いてたよ~、とそう言って萩原さんはぐしゃぐしゃと俺の髪をかき回した。手つきは優しいがその腕は力強くて、しっかり鍛えている人なんだと感じられる。
「伊達刑事や松田刑事の同期?」
「そ。俺は萩原研二、よろしくね。あ、ちなみに柊木も同期だよ」
つまり、柊木さんが前言っていた『捜査一課にいる同期』っていうのは伊達刑事や松田刑事のことだったのか。そういえば、伊達刑事と松田刑事が同期っていうのは誰かに聞いた気がする。…正直なところ、老け顔気味の伊達刑事と童顔気味の松田刑事が同期で同年というのは結構驚いた。
「お休みの日に一緒にいるなんて、仲が良いんだね」
「腐れ縁って奴かな~。お、ちょっと顔色マシになってきたな」
「ん…悪い、いつも」
申し訳なさそうに言う柊木さんに、いーからと軽く笑って流す萩原さん。
…いつも?
「柊木さん、貧血気味なの?」
「貧血気味というか…」
「んー、コナン君って、柊木の女苦手知ってる?」
…そういえば柊木さんは、『人に酔った』と言った。『人ごみに酔った』ではなく。
まさか、と思いつつ、安室さんからちょっとだけ聞いたよ、と答えると、柊木さんがあの野郎…と力なくつぶやいた。
「いやぁ、柊木の結構重症だから、女の子に近づきすぎると貧血起こしちゃうんだよね~」
「そんなにひどいの!?」
「や、貧血で済んだからむしろ良かったんだけど。よく堪えたね旭ちゃ~ん、リハビリの甲斐あってマシになってんじゃない?」
「そもそもお前が待ち合わせに遅刻しなきゃ逆ナンなんて来なかったんだよ…!!」
「ごめんて」
歯噛みするように言う柊木さんに、けろっと萩原さんは謝った。
貧血でマシな方って…これは本当に園子に遭わせられない…!
「そういうわけだから病院は大丈夫。コナン君も柊木が女の子に声かけられてたら助けてやってくれな~?」
「う、うん…?」
困ったように頷くと、だいぶ顔色の戻った柊木さんが、萩原の言うことは気にしなくていいから、とため息をついた。
そのとき、後ろから俺を呼ぶ声を足音が聞こえてきた。
「あ、いたいた!どうしたのコナン君」
「こんなところにいたのかよ~おせぇぞコナン!」
「なかなか戻ってこないから探しに来たんですよ」
「ああ悪い悪い、体調悪そうな人を見つけたから、ついな」
そう言うと、そいつらの視線がすっと俺の後ろに移る。
ぱっと歩美の顔が輝いた。
「わあ、お兄さんすっごくかっこいいね!芸能人みたい!!」
…あれ、柊木さんの女性苦手ってどの年代からだ?
歩美や灰原は大丈夫なのかと、そっと後ろを窺う。
「えーと、ありがとう」
少し困ったように柊木さんは笑った。
これは大丈夫なのか…?と続けて萩原さんを見ると、俺の視線に気づいた萩原さんはぱちりとウインクをしてくれた。どうやら女は女でも子どもは大丈夫らしい。
「体調悪いっていうのは、お兄さんですか?」
「うん、少し貧血を起こしてね。もうだいぶよくなったから大丈夫だよ。コナン君を引き留めてしまってごめんね」
「まだ少し手が震えてるわ。動かない方がいいわよ」
灰原がそう言うと柊木さんは自分の手に目をやり、ぐっと握り込む。
そしてちょっと恥ずかしそうに言った。
「うん、もう少し休んでるよ。ボール持ってるし、公園に遊びに来たんだろ?俺のことは気にしなくていいから、遊んでおいで。連れもいるし、大丈夫だから」
せっかくの偶然だ、この機会を逃したくはないが…柊木さんは体調不良、萩原さんもいるし、こっちには少年探偵団もいる。探りを入れるのはまた日を改めるしかないか…と思ったその時、空気を割くような悲鳴が公園に響いた。
*
悲鳴を聞いた萩原とコナン君は反射的に走り出し、俺も子供たちに絶対にここを動かないように、と声をかけて地面を蹴った。というか待て、コナン君、君はダメだろ。
悲鳴の元はどうやら公園に併設されていたカフェの中。今日は天気がいいから窓を開けていたのだろう、そこから悲鳴が届いたらしい。何があったのかと驚いた顔をした客たちを尻目に、バックヤードへ飛び込んだ。
「警察です、何かありましたか!?」
ばっと一番乗りの萩原が警察手帳を出して声をかけた。
追い付いてみるとそこには真っ青な顔で座り込む女性。彼女が震えながら指さした先には、苦しんだ表情のまま動かない男性が倒れていた。
「っ…!」
俺はすぐに駆け寄って脈拍と瞳孔を確認する。これは…。
「柊木、どう?」
「…亡くなってる。この状況から蘇生は不可能だろう」
そう言うと女性がひっと悲鳴をあげて、さらに震えが大きくなる。
おそらくこの女性が悲鳴の主で、第一発見者だ。
「萩原、その人連れて行って落ち着かせてやって。俺は本庁に連絡する。…コナン君、この部屋に一歩でも入ったら怒るぞ」
「う、」
「了解。さ、いったん離れましょうか。コナン君もおいで、そこのイケメン怒るとマジで怖いから」
悔しそうに詰まるコナン君と女性を連れて、萩原は離れていった。
俺もものに触れないようにそっと部屋の入り口に戻る。事件か事故か、それとも病気かは現状わからないが、とにかく人を呼ぶしかない。
出来れば殺人でない事を祈りながら、俺はスマホを取り出した。
*
「で、何でお前らがいるんだよ…」
先遣隊である機動捜査隊が到着し捜査を始めて間もなく、捜査一課からも刑事が到着した。やはりというか、臨場したのは目暮警部を始めとする目暮班。昇任後目暮班から外れたという松田も、今日は人手が足りないとかで目暮班のフォローに来たらしい。俺たちを見て苦い顔をする松田に、苦笑を返した。
「やだ陣平ちゃん顔こわーい」
「残念なことにというか、偶然ですよ」
お前も職務中なら切り替えろ、という思いを込めて敬語で返すと、松田はさらに苦い顔になった。俺はともかくお前は職務中なんだから敬語を使え。
店のフロアに従業員や店にいた客たちが集められ、それぞれ事情聴取に入る。被害者はこの店の店長。従業員は第一発見者の女性を含めて四名、それに常連と言える客が二名に、今日初めて来たという客が数名。何気なくそれぞれの話を聞きつつ、犯行現場を思い返した。
…事件でなければいいとは思ったが、遺体の様子を見る限り多分あれは薬物による中毒死。毒殺の可能性が高い。それなら、毒あるいは毒をいれてきた容器をもっているのが犯人だ。外部犯の可能性も否めないが、ここにいる人の中に犯人がいるのなら、身体検査をすればはっきりするだろう。
「では、誰か現場に入った人は?」
「私が。悲鳴を聞いて駆けつけ、脈拍と瞳孔の確認をするために入りました。すでに手遅れでしたので、そのまままた部屋を出ましたが」
「では、状況を詳しくお聞かせ願えますかな?」
「もちろんです。しかしその前に」
ん?という顔をする目暮警部を前に、背後でうずうずしている子供たちの方を振り返った。そしてまた、にこりと笑って見せる。
「どこか空いている部屋はありませんか?この子たちをこのままここにいさせるのはさすがに気が引けます。現時点で殺人の可能性も否めない以上家まで送ってあげたいですし、どこかで別室で待っていてもらいたいのですが」
結局コナン君の友人たちも我慢が利かなかったらしく、気づいたときには店の中に入り込んでいた。俺たちで犯人を見つけるぞ!なんて息巻いていて、その横でコナン君がため息をついている。いや、君も同じ穴の狢だと気づいてほしい。
「あ、そ、それなら、そちらに、従業員用の休憩室が…」
第一発見者の女性が、今だ震える手をおさえながら手を上げてくれた。ありがたい。
「では、そちらをお借りします。ありがとうございます」
「ああ、じゃあ俺がこの子らについてますよ。俺は現場に入ってないし、ずっと彼と一緒にいたので証言できる内容も同じになるでしょうから」
じゃあ皆行こうな~と萩原が朗らかに声をかけると、えー!と子供たちのブーイング。
ああ、そういえば少年探偵団なんて名乗っている子たちがいるって話も聞いたな。そうか、この子たちのことか…。
「歩美達も手伝う!」
「俺たちも犯人捕まえるぞ!」
「捜査に参加します!」
なるほど、これはめんどくさい。
人当たりはいいが子供好きではない萩原も、うーん、と困ったように笑った。
「ダメよ」
そこに、ぴしゃりとした声が響く。
ずっと彼らの後ろの方で黙っていた茶髪の女の子が、無表情のまま切り捨てた。
「貴方たち、刑事さんの言うことを聞きなさい」
「えー…」
「だってぇ…」
「行くぞ、おめーら」
コナン君がダメ押しをして、ようやくしぶしぶといった感じで子供たちは歩き出した。萩原はあきらかにほっとした顔で、やれやれと歩き出した。
「萩原」
何?と振り返った萩原に、にこりと笑いかける。
その瞬間、萩原の笑顔が引きつった。
「よろしく」
「…えー…」
「よろしく」
「…はーい」
俺の意図を正しく理解してくれたらしい萩原は、俺そういうの苦手なんだけどなぁ…とぶちぶち文句を言いつつ、子どもたちを連れて休憩室に向かっていった。
「…柊木監察官、今のは…?」
「子どもたちの面倒をよろしく、という意味ですが?」
不思議そうに聞いてきた高木刑事にそう答えると、ああ、そういうことですか、と頷いた。うーん、君はもう少し人を疑うことを覚えた方がいいかもしれない。
「では、悲鳴を聞いたときからの説明を」
「わかりました」
簡単に説明をすると、フム、と目暮警部は頷いた。
俺や萩原が悲鳴を聞いて駆けつけたことは防犯カメラの映像からはっきりしている。警察官だということを差し引いても、俺たちに疑いがかかることはないだろう。
「では、貴方もしばらく子供たちと一緒に待機していただきたいのですが、よろしいですかな?」
「もちろんです。では、失礼しますね」
横目に、松田が警部を始め捜査員を現場に呼んでいるのを見る。何か現場で気になることがあったらしい。
休憩室に向かって歩きながら、俺の耳が捜査員たちの会話から漏れ出る情報を拾っていく。毒殺で確定、やはり殺人。そして店内からは毒物を持ち込んだ容器が見つからない、と。
これは捜査が難航するかもしれない、と思ったとき、この店の常連客だという女性の姿を視界の端にかすめて、一瞬違和感を覚えた。
…あー…確証はないけど、もしかして。まあ、松田なら気づくだろう。
そう思いつつ休憩室に向かう角を曲がると、何故かそこにいるのは、休憩室にいるはずの彼だった。あきらかにやばい、なんて顔はしないでほしい。やれやれと思いながら、にこりと笑顔を作った。
「どこに行くんだ?コナン君」
「ぼ、僕、ちょっとトイレ!」
「そのわりに君の足が向いていたのは現場の方だな。トイレは反対方向だよ」
「そ、そうだっけ?」
間違うところだった~と冷や汗を流す小さな探偵君。
確かにトイレと言われれば引き止めるわけにもいかないけど、何やってんだ萩原の奴。
…おそらくこうやって普段から事件現場に飛び込んでたんだなぁ、そりゃ松田や伊達も嘆くか…。頭の回転は確かに普通ではないだけに、子どもが捜査に関わるなとか、危険だからやめなさいとか言っても聞かないんだろう。実際、本人的にも遊んでるわけではないんだろうし。
___いいだろう、ならもう少し上の子どもに対する扱いで、君に接することにしよう。
「じゃあ、行こうか」
「…え?」
「事件現場。行きたいんだろ?」
*
コナン君の手を引いて、事件現場となった部屋の入口前に来る。
ドア横にいた捜査員にえっという顔をされたが、笑顔で黙らせた。いや本当にすいません、お仕事ご苦労様です。
現場にはすでにご遺体はなく、目暮警部や松田をはじめとする刑事がそろって現場検証を行っていた。いち早くこちらを見咎めた松田が、眉を吊り上げる。
「…何やってんですかね、柊木監察官」
その声で皆俺たちの存在に気付いたのか、ぎょっとした顔でこちらを見る。
俺はいつもの笑顔を崩さずに答えた。
「社会科見学の付き添いですかね。ああ、こちらのことはお気遣いなく、ここから動きませんから」
「しゃ、社会科見学って…」
「…柊木監察官」
「お気遣いなく」
重ねて言うと、ものすごく嫌そうな顔の松田は、ちゃんと手ェ捕まえといてくださいよ、と言って目線を現場に戻した。俺が引かないことを察してくれたらしい。
他の刑事たちも、それにならって意識を現場検証に戻した。
「っ…!」
繋いだ彼の右手から、焦る思いが伝わってくる。
そっと目線だけでその顔を盗み見ると、その瞳はまるで燃えているようだった。捜査をしたい、調べたい、話を聞きたい…事件に対する好奇心と、使命感に似たものが窺える。『俺が、しなければならないのに』と、そんな声が聞こえてくるようで、俺は苦笑した。彼の行動原理が、何となくだがわかった気がする。
俺はコナン君の手を一旦離し、目線を合わせるようにしゃがみこむ。現場の方を見つめていたコナン君が、驚いた顔で俺を見た。
「前から話は聞いてたよ。毛利探偵の後ろにくっついて、事件現場に入り込んでくる小さな探偵君」
「え、」
「とても頭のいい子で目の付け所も良く、大人顔負けの推理力を発揮して事件を解決に導いているってね。正直、その話を聞いたときは、どんな問題児なのかと思ったんだ。頭がいいからって、事件をゲームのように思っている子なんじゃないかってね」
「そ、んなこと思ってない!!」
反射的に叫んだコナン君に、頷いた。
そう、君はちゃんとわかっている。犯罪事件や、人の命の重みも、わかっている。むしろ『だからこそ』、君は事件を捜査するんだよな。しなくちゃいけないと思うんだよな。
でもな、俺はそれを止めなきゃいけないんだ。法的な理由、職務上の理由、もちろん俺個人の主義としての理由で、俺はそれを見過ごしてやれない。
だから俺は、こういう言い方をしよう。
「…何を言うよりまず、君に謝らなくちゃいけないな。俺を含め、全警察官が」
「…え?」
「君、自分より頭のいい警察官に会ったことないんだろ」
場の空気が、凍った。