ある日、世界は激変してしまった。
それはあっという間だった。突然発生した性転換現象、1か月もしないうちに世界中の男がどんどん女になっていった。
原因不明、ウイルスだったのか、化学兵器だったのか、はたまた魔術だったのか、因果だったのか、まったくわからない。
わかっているのは防ぐこともできず、世界の99%以上が女性になったという事実。
ただし、その現象が発生したのは一定年齢以上の男性。10代後半以下の若い男性には発生しなかった。
それにより人々は一時の安心感があった。若い人が無事なら、自分の子供が無事なら、って。
だが甘かった。判明したのは一定年齢以上になったら同様の現象が発生するということ。通称適正年齢。
一斉性転換現象が突如発生した日に女にならなかった若い男子も、適正年齢を超えるか、または体の成長によって女になる現象が発生するということ。
人によって差があるものの、おおよそ10代後半から20代半ばまでには確実に発現することが分かった。
もっとも必ずそれが発生するというわけではなく、発生しない人もいる。
つまり、その適正年齢を通り越せば男のままでいられるという保証がある意味得られることになる。
いずれにせよ世界は急速に男性が少なくなった。
若い、まだ現象が発現していない人を除けば男性はおよそ2、300人に1人になってしまった。
社会は混乱し、男女別という基本的なルールが崩壊した。今まで普通だと思っていたことが普通ではなくなった。
このままでは確実に世界は破滅だ。少子化が心配どころではない。だから男を守るために法律の改定が急がれた。
通称、男種保護法。
例えば傷害事件の被害者が男だった場合、犯人の刑罰は激増する、とか。
男の急所を攻撃して使用不能にしようものなら無期懲役だとか。
一方、男も自身の男という性を守ることが義務付けられている。
女装まではギリOKだが、女になりたいとかいって手術して自ら切り落とそうもの同じく無期懲役、手術した医者も逮捕とか。
だからと言って保護されまくってるわけではない。モノには限度がある。
女性を強姦したら当然のように逮捕される。そうなったら刑務所にいる間、女性に接触することは許されずひたすら機械で搾り取られる、なんて話がある。
本当にそうなるのかどうかは知らん。あくまで噂の話だけど。
守るのは男そのものだけではない。女になるかもしれない男子も守らなけければばならないことがある。
遺伝子情報、それを守る必要があった。
具体的に言うと女になるかもしれない前に、女性化適正開始年齢に達する前に男性は二次性徴を迎えたら精液を定期的に冷凍保存することが義務付けられたのだ。
ある意味子孫を残すための苦肉の策ともいえる。
こんな感じの、男が圧倒的に少なくなってしまう環境ゆえに、ある意味状況が状況だから、ってことで結婚そのものは女同士でもOKになってしまった。
そして子供を作るとき、その冷凍保存していた精液を使ってパートナーを……というわけ。
こうして時とともにルールが改められ、混乱は女性化現象が発言した直後に比べたら少しずつ落ち着きを取り戻してきた。
しかし、今までとは違う世界観に人々は戸惑うのだった。
1. 海水浴も○○がOKになりました
「あのさぁ、やっぱトップレスはやめてくれね?」
「いいじゃねえか、他にもやってる奴いるしダメってルールじゃないし」
「いやそーだけど……」
俺、キョウヤは全世界で発生した女性化現象が過ぎても幸運にして男のままだった。一方、親友のトモフミは女になった。
性別が変わっても親友は親友、仲もそのままだった。男同士の感覚のまま、話もするし、遊びもするし。
だが、外出は少なくなった。外に出ればそこらじゅう女ばっかだから。そこに男がいたら目立って仕方ない。
しかも女性化した男って、そろいもそろって美人または可愛い、スタイル良しの見た目いいのばかり。
だから周りの視線も気になるし、こっちの視線も気にしてしまう。
すごく浮いた感じになって、落ち着かなくて、だから外出は控えるようになっていた。
それでもトモフミが誘うなら、という気持ちで遊びに行こうと久々に来た海水浴。だがここではなくて他の場所を希望すればよかったと後悔している。
最初の難関は更衣室。
更衣室は男女別なんて機能していない。割合が女の方が多いのだから当然といえば当然。
しいていうなら元男か本来の女か。本物の女性が「女でも元男はイヤ」という理由で分かれているが、正真正銘本物の男の俺はたまったものではない。
男子更衣室で女性……女性化した男が着替えるのは普通に居心地悪かった。
男子更衣室のはずなのにそこら中に女ばかり、遠慮することなく堂々と服を脱ぎ、裸になって、見放題状態。
もう更衣室いらないんじゃない? そんな気がした。
事実、外で着替えている奴も何人かいたみたいだし。
加えて、大きく変わってしまったのが、海や海水浴場、プールでのトップレスが解禁になったこと。ほぼ女だけだからって、それは大胆すぎるだろ。
そんなわけでこの海水浴場にもトップレスになっている人が結構いる。元男がほとんどなのだろうか、と思っていたがどうやら本物女子も対抗してトップレスになっている様子。
皆惜しげもなく胸をあらわにしている。それに合わせて下も個性的。紐同然のTバックは当然、わざわざパレオをつけてトップレスもあり、さらに着ている意味があるかもわからないIバックなるものも。
逆にあえて男物の海パン着用でトップレスになっている女性もいたり、と。ファッションは奥深いなぁ。
そして親友のトモフミもまた当然のように、トップレス。
巨乳だ、いいサイズだ、美乳だ、美しい……目のやり場に困る。
頼むからトップレスはやめてくれと思ったが、それ以前に周りがトップレスだらけだからこいつ一人やめたところで無駄じゃないかと今思った。
「触りたかったら触ってもいいんだぜ?」
「遠慮する」
挙句誘惑し始めた。自身のたわわに実った胸をぽよんぽよんと下からバウンドさせてアピールしやがって。
こいつというやつは……
「別に前にも触らせてやったじゃん
「だから遠慮するって!」
ああそうさ、こいつが女になったばかりの頃触らせてもらったさ。ちょっと興味があるだろ?
だけど今はダメだろ。周りにこんな人がいる中で、これは……
俺は男のままでよかった、女にならなくてよかった、なんて思っていたけどこの居心地の悪さはたまったものではない。
男が生きづらい世の中になってしまった、実に。だからいっそ女になってしまった方がよかったのでは? と思ってしまうこともあったし。
「うおぉぉっっっ! トップレスだらけっ!!」
「マジサイコーじゃん!」
そんな声が聞こえてきたと思ったら、若い男3人集。女性化適正年齢前の奴らか。
これが目当てで海に来るアホの男が増えたらしい。おかげで海の家は今日も繁盛繁盛。
「へえ、お前ら元気よさそーじゃん」
「隠すことなくエロいねぇ」
そんな男たちに来たのはトップレス女3人集。
明らかに男共よりは年上であろう。
「か、カワイイっすね君」
「ど、どっから来たの?」
うわずってる、緊張してる、ナンパ慣れしてないなあいつら。女の子に声かけるの緊張しているのバレバレ。
それとも単におっぱいがすごく近い距離にやってきたからドキドキしているだけか?
「そうカタくなるなよ。下もカタくなってるか?」
「俺らも男だったからなぁ。キンチョーするぐらいわかってるって」
やっぱし男だったか、接近した女3人は。。
「どうよ? 俺らといっちょイイコトしない?」
「こうなったら男も女もカンケーねーだろぉ?」
「それとも、やっぱ元男の美女はイヤかな?」
元男3人集は若き男たちに惜しげもなくその肉体をアピールする。そしてすり寄り、次第に距離を詰め密着させる。
あれ当たってんな、当ててんだな。
そうしてそろそろと男3人と元男3人はどこかへと消えて行ってしまった。逆ナンパ成功ってことか。
きっとそのままシャワー室か、岩陰でイチャイチャするんだろう。
まあせいぜい楽しみな。自分たちもそのうち女になっちゃう可能性か高いんだろうし。
ああいう展開、他のところにもありそうだ。何せ女たちは数少ない男を巡って熾烈なバトルしてるって噂だし。
……あれ? 俺ここにいちゃすごく危険じゃね?
なんか周囲の視線がすごく気になってきた。そういえばいろんなところからこっち見られているような気が。
「トモフミ、俺やっぱ帰るわ」
「あーやっぱ視線が気になる? 大丈夫だって」
「どわっ!?」
トモフミが俺の腕をとった。いや、腕に抱きついてくる。
うおっ!? 直に柔らかい感触がっ……
「あんな飢えた女たちなんて、俺が守ってやるからよ」
実に心強い親友だった。