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リングフィットRTA伝説の17分間はどうやって生まれたのか

まずはこの動画を見てほしい。


2021/8/11~8/15に行われたRTA in Japan Summer 2021で大トリを飾ったリングフィットアドベンチャーのRTAである。

これで「リングフィットRTA」と「#RTAinJapan」というワードがトレンド1位2位を獲得。関連ワードでトレンドの3分の1以上を占めた。
同時接続者数は最高18.8万を記録。同日に行われていたプロゲーマー達が出場するVALORANTの世界大会進出をかけた戦いの最終日でも約16万、人気VTuberが一同に介するにじさんじ甲子園最終日も約20万(リングフィットRTAが行われていた時間帯は16万ほど)と、企業が本気で主催している大会に肉薄している。(同時接続者数に関してはSNS上で見かけた情報を統合しているので間違っていたら申し訳ない)

RTA in Japanは純粋にゲームが好きな者たちが集まり、ただ盛り上げたい、その気持ちだけで作ってきた大会であり、企業がスーパースターを集めて主催している大会と同レベルに盛り上がったのである。

念のため補足するが、リングフィットRTAの実況を行っていたたぐちアナは公式からの仕事も持っているようなプロではあるが、本イベントは面白そうだからという理由で無償で参加している。彼も純粋にゲームが好きなだけなのだ。


RTA in Japanとは

RTA in Japan(以下RiJ)とは日本最大のRTAイベントで2016年から行われている数日間24時間ぶっ続けで行うイベントだ。ちなみにRTAとはリアルタイムアタックのことで、ゲームの攻略速度の速さを競うものだ。
初回の最高同時接続者数は4,000人だったが徐々にその知名度を増していき、2020年の年末に行われた前回は最高6万人を記録していた。
今回のイベント終了後に行われたRiJ理事のNaka氏のインタビューがあるのでこちらも参考にしていただきたい。

また記事内にもあるように忘れてはならないのはRiJはチャリティイベントということである。前回大会は500万円以上、今回は600万円以上の寄付金を集め、ゲームで世界を救っているイベントなのである。


18万という同接数を達成したリングフィットRTA

2020年末に行われたRiJの最高同接数の6万を今大会の最初のタイトル「ポケットモンスターソード・シールド」でいきなり達成するというロケットスタート。連日のように最高同接数を更新していき、大トリひとつ前の「桃太郎電鉄 〜昭和 平成 令和も定番!〜」では大台の10万まで到達。そしてリングフィットアドベンチャーが始まる頃には12万、そしてそこからわずか17分間で18万という同接をたたき出した。
前置きが長くなったが、本記事ではリングフィットアドベンチャーのRTAに着目した話を進めさせていただく。もちろんそこに至るまでの75タイトルの熱いバトンがあったからこそこの盛り上がりがあったというのは絶対に忘れてはならない。


なぜリングフィットアドベンチャーが大トリになったのか

真相はRiJ運営のみ知ることだが、私の考えを述べておく。
一番大きな理由は2020年、あるいは直近1年間で最も売れたゲームであるからだと私は考えている。そう、今回RiJに応募されたタイトルの中で最も売れているゲームがリングフィットアドベンチャーなのである。もちろん売り上げ未公表のタイトルもあるがほぼ間違いない。ちなみに次点は開幕を飾ったポケットモンスターソード・シールド。累計販売本数はポケモンの方が多いが、直近の実績だけ見るとリングフィットの方が多いのである。

つまりみなが知っているメジャーなゲームが大トリに選ばれたのである。

当選タイトル発表の1週間後にスケジュールが発表された。
スケジュール発表前からリングフィットアドベンチャーの当選は話題になっていた。任天堂の大ヒット作品、まさかの運動カテゴリ、しかも走者は28時間不眠不休で走れるガチのマッチョ。面白くないわけがない。ただ普通のRTAと毛色が違う決して王道とは言えないタイトルであったため、今回の大トリ採用は思い切った決断でもあり、結果としてそれがピタリとハマったともいえる。ちなみにこの段階で、たぐちアナの実況は決まっていなかった。


徐々に仕込みが始まっていった

仕込みはイベント開始前から始まっていた。
走者のえぬわたは7月末にはプロフィールアイコンを「マッチョなリングフィッター」と一目で分かるものに変更、そしてRiJ開幕の10日前の8/1よりYouTubeでの本格的な活動を開始。1本目の動画は過去に28時間ぶっ通しで走ったRTAの解説。これがRiJ開幕前日のタイミングでバズり、RiJが始まる前からリングフィットRTAがトレンドする事態になった。


一度バズれば、バズりたいユーザーがリングフィットRTAをダシにバズろうとするツイートをする。走者がマッチョだったり、ゲームの解説をしているのに栄養補給の話をしていたり、あまりにも突っ込みどころが多いから。バズがバズを生む超好循環になっていたのである。
まとめサイトはもちろん、ゲームメディアでも取り上げられ、さらに4つのメディアがえぬわたへインタビューを行った(うち2つのゲームメディアはトレンド入りする前からリングフィットRTAに目を付けインタビューを敢行していた。さすがである)
これらのメディアは本番前日から当日にかけて記事を公開。走り終えた瞬間に記事を公開した電ファミニコゲーマーの記事は2万RT以上され、SNS上での拡散はインタビュー記事では史上最高、歴代の記事の中でもトップ10には入るくらいには拡散された。

えぬわたの記録の仕込みも完璧だった。
えぬわたがRiJ応募したときは17:52秒で世界一だったものの、当選時は17:30と抜かれていた。さらにこのカテゴリでRiJ本番でえぬわたに世界記録を出させない記録更新争いが行われそこからさらに3人が記録を更新した。ただそこは流石というかその記録更新争いで頂点に立ったのがえぬわたであり、自身の記録を1分ほど縮め16:53秒という世界一の肩書を持って本番に挑むことになった。このときえぬわたは持っているRTA記録全て世界一という完全無欠の状態であった。

さらに解説のひととせはる氏も別のカテゴリで世界記録をこのRiJに合わせて更新し、世界記録保持者として解説に臨むことになる。

そして最重要と言える仕込みがこちらだ


当日たぐちアナがRTA中にかける掛け声を募集したのだ。たまたま当日思いついたとかではなく、前々から予定しており、直前で視聴者の熱量が上がっているタイミングで募集した。掛け声の選定を直前に行うのはかなりバタつくが、とにかくいいものが集まった。
結果的にではあるが、大トリに至るまでにRiJ内で生まれたミーム(新たに生まれた造語だったり文化)を取り入れた掛け声も多く集まり、大トリの競技がRiJで走ってきたタイトルを回収するという熱い展開にもなった。
ここで放たれたワードの多くがトレンド入りを果たした。


本番は圧倒的視聴者参加型だった

Twitchにはエモート(スタンプ)といったものがあり、コメントでスタンプが流れたり、元々視聴者参加型のコンテンツではあった。他のタイトルでもクイズを用意していたりと視聴者参加型というものもあった。
ただリングフィットRTAはそこに徹底していた。
みんなで「ビクトリーとコメントに書き込もう!」と促すたぐちアナ。「会場から声援が届いています」という演出でTwitter上で事前に募集した掛け声を会場のスタッフが叫んで届ける。「スイクン筋肉チャート」といったRiJイベントで生まれ、視聴者のみんなが使ってきたネタを代弁する。「生まれた瞬間無敵時間」といったスポンサーを叫ぶというRiJの文化も取り入れる(※無敵時間というブランドがRiJを協賛している)。
実況も、さらには世界記録を持つ解説のひととせはる氏でさえも素でえぬわたの人間離れした体の動きに驚きの声を上げ、視聴者と同じ立場になる。

こちらの振り返り動画でたぐちアナが「アナウンサーは視聴者の代表である」というような話をしており、そういった視聴者に寄り添い、視聴者を参加させたのがこのリングフィットRTAを最も盛り上げた要因だったと思っている。


グッジョブえぬわた

えぬわたの走りも実況と相まって非常に盛り上がった。
えぬわたの目標は16:57秒。ツイートの通り「えぬわた以外この記録を出せない」という記録だ。もちろんかなりハードルは高く、たぐちアナとの事前の相談で視聴者でもわかりやすく、なおかつ決して簡単ではないハードルとして17分を目安に置くことにした。

そしてえぬわたは自己ベストの16:53を狙わず、視聴者が楽しめるものを目指した。
記録狙いで攻めれば少し早く出来るところも、一歩間違えばタイムロスで序盤で17分切りが見えなくなるつまらない展開になる。特に序盤は大きなタイムロスになる攻めの走りは避けた。とにかく最後の最後まで17分切れるか分からないという走りを行った
もちろん最後の階段ジャンプは成功させるつもりで挑んで失敗したのだが、実はその後安定の走りをする予定だったが全て攻めの走りに変更。その結果何とか17分ジャストに間に合わせた。世界三位という記録を一発勝負の本番で何とかやり遂げた(世界一位は本人だが)

また記録もそこそこのものを狙いつつ、今回視聴者が期待している人間離れした体の動きは徹底した。スクワットも膝だけうまく曲げるテクニックもあるがそれを行わず全身上下動、空気砲も最低限の力で押し込んだ方が速いが、視聴者はものすごい音と勢いで連射される通称えぬわた砲を求めているため全力で押し込む。魅せることと記録どちらも捨てなかった

最後の挨拶も好評だった。
全ての人に感謝を述べ、そしてリングフィットアドベンチャーの宣伝をした。最後の涙を誘う挨拶もRTAイベントの締めとして相応しいものになったのではないだろうか。

私はこのツイートがとても好きである。

マッチョがリングフィットをやるという絵面を楽しみにして見に来た視聴者がたぐちアナと一緒に盛り上がり、ボディビルの掛け声で笑いながら応援し、そして最後は予想もしていなかった涙。予想もしていなかった展開と全てが詰め込まれた伝説の17分間だったのではないだろうか。


あとがき

この記事は走者えぬわた本人が書いております。
自分で言うのもあれですが、このイベントってめちゃくちゃすごかったんじゃないかって思ったんですよね。有志が集まって開かれたイベントが、企業がお金を使って本気で盛り上げようとしているイベントと同等の位置にいる。これってすごいですよね。じゃあどうしてこんなことになったんだろうと、何か今後のイベント運営とかに役立てばいいなと思って書いてみました。
例えばeスポーツの大会企画している人とか。他のエンタメのイベント企画している人とか。

こういう風に分析(?)した記事が上がらないかなと勝手に期待し、「自分で書けばいいじゃん!でも客観的に見てもすごかったって言われたいな」と変な考えが浮かび、客観的な語り口で書いてみるということをしてみました。自分のやったことを褒めるのってめちゃくちゃ変な感じですねw

リングフィットRTAに着目したのはもちろん自分が走って事情が分かっているから。
もうちょっと俯瞰的な目線でなぜ今回のRiJが最終的にこんなに盛り上がったのかは全体を見られる他の誰かに書いてほしいです。

改めて応援してくださったすべての皆様、このイベントの関係者の皆様、リングフィットの関係者の皆様にお礼申し上げます。誠にありがとうございました。
色々と伝えたらないので、こっちの参加レポ的なやつも読んでいただけると幸いです!


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リングフィットRTA走者のえぬわたです。100%カテゴリやany%カテゴリの負荷30の世界記録保持者。RTA in Japan Summer 2021で大トリを務めました
リングフィットRTA伝説の17分間はどうやって生まれたのか|えぬわた